日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PH

(5階ラウンジ)

2014年11月9日(日) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PH048] 集団宿泊的体験活動における児童・生徒のソーシャル・サポートと遊び仲間の選択率の変化

平成25年度「生活体験学校」を実践事例として

古屋真1, 杉森伸吉2 (1.駒沢女子短期大学, 2.東京学芸大学)

キーワード:集団宿泊的体験活動, ソーシャル・サポート, 遊び仲間

目 的
新学習指導要領(文部科学省, 2008)の改訂に伴い,繰り返し,体験活動の重要性が指摘されている(中央教育審議会, 2013)。子どもの頃の体験の量と大人になってからの意欲や規範意識との関連(独立行政法人国立青少年教育振興機構, 2011)や,「生きる力」の向上(橘・平野, 2001)など,体験活動の効果が明らかになる中,より効果的なプログラムの実施・展開を図るためには,その変容過程も検討する必要があると考えられる。
そこで,本研究では,集団宿泊的体験活動である「生活体験学校」を実践事例として,期間中の子どもたちのサポート関係や遊び仲間の変化を検討した。
廃校となった学校の校舎や校庭を利用し,小学校5年生から中学校2年生までの児童・生徒(連続参加者を除く参加者の大半が初対面)が参加する生活体験学校は,子どもたちの生活力や社会性の基礎の育成を目的としている。生活知識を学ぶ授業(農作物の知識,言葉遣い,そろばん等)と,学んだ知識を活かす実践の時間(自炊,伝承遊び,買い出し等)から一週間のプログラムが構成されており,プログラムとは別の時間に,子どもたちの交流を促す「自由な時間」も設定されている。
方 法
調査参加者 平成25年度「生活体験学校」に参加した児童・生徒43名(男子23名,女子20名)
調査期間 平成25年8月4日~8月10日
調査内容(質問紙構成)
1.ソーシャル・サポート尺度 久田・千田・箕口(1989)と嶋田(1993)を参考に,班の仲間から受けたサポート,自分が班の仲間に与えたサポートに関する質問を5項目ずつ作成し,「1:あてはまらない」から「4:とてもあてはまる」の4件法で回答を求めた。
2.遊び仲間の変化 参加者に「今日は誰と遊んだのか」を尋ね,参加者名簿の該当者に丸印を付けてもらった。回答から参加者同士のマトリックス表を作成し,片方(一人の参加者が選択)・双方(二人の参加者がお互いに選択),班内(同じ班の参加者を選択)・班外(他の班の参加者を選択),同性・異性の選択率を算出した。
手続き 1日の生活を振り返る「話し合いの時間」の冒頭15分程度を利用し,筆者が質問紙を配布・実施・回収した。ソーシャル・サポート尺度は,期間中4回(初日・3日目・5日目・最終日),遊び仲間の変化は,期間中毎日実施した。
結 果
与えたサポート・受けたサポートの変化 参加者はどの程度ソーシャル・サポートを与えた,もしくは,受けたと感じたのか。初日の回答から参加者を二群に分け(「3:あてはまる」以上を高群,「2:ややあてはまる」以下を低群とした),生活体験学校の経過に伴う相互のサポート感の変化を検討した。その結果,与えた・受けたサポートのどちらも,高・低群と時期の交互作用が見られ(与えた:F(3, 111)=4.22, p<.01,受けたサポート:F(3, 108)=5.11, p<.01),初日以降,どの経過日においても,高群の方が低群よりもソーシャル・サポートを与えた・受けたと感じていたことが明らかとなった。
遊び仲間の変化 片方・双方,班内・班外,同性・異性それぞれの選択率の変化を検討した結果,すべての場合において時期の主効果が見られ,初日の選択率よりも,2日目以降の選択率の方が高いことが分かった。特に,同性の選択においては,与えたサポートの高・低群と時期の交互作用が見られ(F(3, 222)=2.47, p<.05),4日目と6日目を除いて,与えたサポート高群の方が低群よりも選択率が高いことが明らかとなった(Figure 1)。
考 察
以上の結果から,「生活体験学校」において,相互のサポート感と遊び仲間の選択率との関連性が明らかとなった。初日に,班の仲間へサポートを与えたと感じられた参加者は,そうでない参加者に比べ,以降の同性の遊び仲間の選択率が高く,特に,初日のサポート関係の重要性をうかがい知ることができた。
今後は,集団活動の経験度や意欲など,個人属性の違いも含めた検討も必要であると思われる。