日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PH

(5階ラウンジ)

2014年11月9日(日) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PH049] 僻地における保健・医療・福祉の連携教育の検討

新山真奈美 (東洋大学大学院)

キーワード:僻地, 保健医療福祉, 連携教育

I.目的 高齢者が住み慣れた地域や家族に支えられ,高齢者自身の能力に応じて自尊心をもって生活できるように,社会には重要な役割がある。高齢者の健やかな生活の実現に向けて支えるためには,保健・医療・福祉がつながり一体となることが重要である。この連携がうまくいかない僻地に対し,保健・医療・福祉の連携教育プログラムを実施し,その効果を検討することを目的とした。
【用語の定義】「僻地における連携教育」とは,都心部や教育体制の整っている地区では,連携教育の効果は発揮されているが,僻地の中には地域全体での取り組みの困難さや勤務の条件,経済的問題等から多職種が集まっての教育活動は難しいとされる地域もあり,この連携教育とした。
Ⅱ.方法
1.研究方法:教育プログラムの実施前後,実施後1か月の参加者の自己評価表を基に,プログラム前後の連携教育の効果を検証していく。また自由記載の「連携教育の重要性への理解について」はテキストマインドで心理面を評価していく。
2.教育プログラム 1) 講義日:5月 2回2)講義時間:1回目90分,2回目120分,3)講義内容:[1回目]〈講義〉脳卒中とは,障害をもつということ,ライフスタイルとは,保健医療福祉がつながるとは,脳梗塞の事例紹介,[2回目〈講義〉]保健医療福祉の連携の重要性,〈演習1〉自分の仕事の特殊性について他者に伝える,〈演習2〉喪失体験学習,〈演習3〉脳梗塞の事例からみた保健・医療・福祉の連携の糸口〈講義〉保健・医療・福祉がつながるには,の順とした。演習は1 グループ6~7名で様々な職種のメンバーとした。
3.調査対象 高齢者の絶対数が多く,今後,介護を必要とする高齢者は増加すると考えられるが,連携教育が整っていないA県B町の保健・医療・福祉に携わる専門職者とした。
Ⅲ.倫理的配慮 評価表の記載は自由意思であること,評価表による調査の主旨及び厳重にデータを保管すること,研究目的以外に使用しないこと等を口頭で説明した。評価表は匿名で記入し,得られたデータは統計的に処理し,個人が特定されないようにIDとした。本研究の終了時に評価表は速やかにシュレッター処理を行った。本研究は,東洋大学大学院倫理審査委員会で承認された。
Ⅳ.結果・考察 参加者は78名であり,評価表に賛同した参加者は100%であった。地域の活性化のためにも保健・医療・福祉の連携は重要であり,本研究では町の中核となる役場に対してアプローチし,そこを拠点に地区全体に教育の必要性を発信してもらうことで,より多くの参加者が得られた。参加者はその道のプロで思い入れが強く,また成人であるため,参加者それぞれの尊厳を守りながら,理解度が深まる教育プログラムとした。参加者に応じた教育プログラムは,参加者が講義を真剣に受けるだけでなく,二回目の講習への参加にもつながり,更なる講義及び演習に対して真摯に取り組んでいた。限られた時間や経済面等での参加者に応じた連携教育の実施は,参加者の思考に変化をもたらせ,保健・医療・福祉の連携の重要性の意識付けになった。連携教育の効果が評価表の前後の比較からもみられ,効果的な教育プログラムであり,僻地で教育体制が整っていない地区には有効であることが示唆された。