[PH068] 幼児のiPad利用が親の意識と親子相互作用に与える影響
幼児の活用事例と親質問紙の分析から
キーワード:タブレット端末, 親子相互作用, 幼児の利用
問題
現在スマートフォン等のタッチスクリーンを使った端末が急速に広がり,2歳未満の子どもでさえそれらを利用している(CSM,2013)。我が国においては,タブレット端末の保有率は2割弱であり(総務省,2013),幼児の親自身もこの機器に対する知識が十分とは言えない状況である。本研究の目的は,日本でも今後急速に普及することが予想されるタブレット端末を,家庭において幼児が使うことによって,親自身の意識や親子の相互作用にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることである。
方法
対象者 年少男児1名と女児2名とその親,年中男児2名と女児1名とその親,年長男児2名と女児2名とその親,合計10組の親子。絵本やおもちゃ遊び等で,普段から子どもとの関わりの頻度が高く相互作用が多い親である。
材料 幼児向けiPad用アプリケーション6ジャンル(絵本,ひらがな/カタカナ,お絵かき,英語,歌,ゲーム)をインストール済みのiPadと,絵本アプリをカラー印刷したもの。
手続き iPadを各家庭に貸与し,1か月親子で遊んでいる様子を,遊び開始時,2週間後,1か月後の3回にわたりビデオ撮影してもらった。開始前及び1か月後に,iPad利用についての親の意識を調べる質問紙に回答してもらい,撮影済みビデオと質問紙を分析した。
結果
1. 親の意識の変化
iPadに対し開始前には,積極的に肯定していた親は2名,絶対否定していた親は1名,残りは「多少心配」という意見だった。「多少心配」の理由として依存してしまう可能性や,視力の低下などが挙げられていた。しかし1か月遊んだ後には,すべての親が肯定的に捉えていた。どの年齢でも,子どもが自ら興味をもって取り組んでいること,親がわからない使用法を子どもが親に教え,子どもの成長を感じることができたこと等が理由として挙げられていた。また,親自身が子どもと一緒に遊ぶことによって,子ども向けアプリにはどのようなものがあるのか,そのアプリで何ができるのか,操作方法の難易度はどの程度かについて,知ることができ,当初の心配や否定していた理由には固執しなくなっていた。しかし肯定的な意見に変わりつつも,加齢に伴って長時間の使用が増えていたことから,実際の導入にあたっては,ほとんどの親が家庭でのルールつくりが重要であると考えていた。
2. 子どもと親のやりとり
①絵本と絵本アプリの場合の比較
年少の子どもは,絵本ではイラストやストーリーについて親子で会話することがあったが,絵本アプリの時には読み上げを黙って聞いていることが多かった。年中や年長の子どもは,絵本よりもアプリの方が,読み上げを聞きながら親子で感想を言い合うことが多かった。
②遊び方と他の遊びへの影響
ほとんどの子どもが,通常は親または兄弟で遊んでいた。どの子どもも,外遊びの減少は見れなかった。家の中では他のおもちゃと同様の頻度で遊んでいた子どもがいる一方で,iPadでしか遊ばなくなった子どももいた。
考察
この新しいデバイスによる子どもの学びを支えるために,大人の果たす役割と状況に即した応答的な足場かけの必要性が指摘されている(Mathew & Seow, 2007;Bartlett, 2012)。本研究では,遊び慣れたことによる親の知識の深まりが親の意識の変化の一因であると推測される。今後の課題は,普段の遊びで子どもとの関わりの頻度の低い親が,幼児とiPadを利用する時の関わりとの違いを比較検討することである。
現在スマートフォン等のタッチスクリーンを使った端末が急速に広がり,2歳未満の子どもでさえそれらを利用している(CSM,2013)。我が国においては,タブレット端末の保有率は2割弱であり(総務省,2013),幼児の親自身もこの機器に対する知識が十分とは言えない状況である。本研究の目的は,日本でも今後急速に普及することが予想されるタブレット端末を,家庭において幼児が使うことによって,親自身の意識や親子の相互作用にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることである。
方法
対象者 年少男児1名と女児2名とその親,年中男児2名と女児1名とその親,年長男児2名と女児2名とその親,合計10組の親子。絵本やおもちゃ遊び等で,普段から子どもとの関わりの頻度が高く相互作用が多い親である。
材料 幼児向けiPad用アプリケーション6ジャンル(絵本,ひらがな/カタカナ,お絵かき,英語,歌,ゲーム)をインストール済みのiPadと,絵本アプリをカラー印刷したもの。
手続き iPadを各家庭に貸与し,1か月親子で遊んでいる様子を,遊び開始時,2週間後,1か月後の3回にわたりビデオ撮影してもらった。開始前及び1か月後に,iPad利用についての親の意識を調べる質問紙に回答してもらい,撮影済みビデオと質問紙を分析した。
結果
1. 親の意識の変化
iPadに対し開始前には,積極的に肯定していた親は2名,絶対否定していた親は1名,残りは「多少心配」という意見だった。「多少心配」の理由として依存してしまう可能性や,視力の低下などが挙げられていた。しかし1か月遊んだ後には,すべての親が肯定的に捉えていた。どの年齢でも,子どもが自ら興味をもって取り組んでいること,親がわからない使用法を子どもが親に教え,子どもの成長を感じることができたこと等が理由として挙げられていた。また,親自身が子どもと一緒に遊ぶことによって,子ども向けアプリにはどのようなものがあるのか,そのアプリで何ができるのか,操作方法の難易度はどの程度かについて,知ることができ,当初の心配や否定していた理由には固執しなくなっていた。しかし肯定的な意見に変わりつつも,加齢に伴って長時間の使用が増えていたことから,実際の導入にあたっては,ほとんどの親が家庭でのルールつくりが重要であると考えていた。
2. 子どもと親のやりとり
①絵本と絵本アプリの場合の比較
年少の子どもは,絵本ではイラストやストーリーについて親子で会話することがあったが,絵本アプリの時には読み上げを黙って聞いていることが多かった。年中や年長の子どもは,絵本よりもアプリの方が,読み上げを聞きながら親子で感想を言い合うことが多かった。
②遊び方と他の遊びへの影響
ほとんどの子どもが,通常は親または兄弟で遊んでいた。どの子どもも,外遊びの減少は見れなかった。家の中では他のおもちゃと同様の頻度で遊んでいた子どもがいる一方で,iPadでしか遊ばなくなった子どももいた。
考察
この新しいデバイスによる子どもの学びを支えるために,大人の果たす役割と状況に即した応答的な足場かけの必要性が指摘されている(Mathew & Seow, 2007;Bartlett, 2012)。本研究では,遊び慣れたことによる親の知識の深まりが親の意識の変化の一因であると推測される。今後の課題は,普段の遊びで子どもとの関わりの頻度の低い親が,幼児とiPadを利用する時の関わりとの違いを比較検討することである。