[PH090] 中学生のいじめ認識に関する研究
要因を操作した場合の認識の差異に関する検討
キーワード:中学生, いじめ, 認識
目的
文部科学省のいじめの定義には“けんか等を除く”とあるが,けんかの定義はなされておらず,除かれる行為に不明な部分がある。
そこで本研究は,いじめの認知件数が多い中学生を対象に,身体的・言語的攻撃について,継続性,攻撃の均衡性,加害者の複数性を操作した項目を用い,いじめと認識される要因を検討した。
方法
調査協力者 中学校2校に通う1―3年生608名のうち,記入漏れや同一回答等を除く508名(男子241名,女子267名)。
使用した質問紙 身体的攻撃(“たたいたりけったりする”)および言語的攻撃(“文句を言う”)について,継続性(1回だけ/毎日のように),加害者の複数性(1対1/友達数人),攻撃の均衡性(やり返す/やり返せない)の組合せによる16項目。それぞれ,ふざけ/ケンカ/いじめ/犯罪/分からない,のいずれに該当するか,判断を求めた。
実施時期・手続き 2013年10月から11月に,クラス単位で一斉に実施・回収された。
結果と考察
各項目を回答傾向で分類するため,男女ごとに階層的クラスター分析(群平均法)を行った(HAD11.313(清水ら,2006)を使用)。
男子は,AICが最も低く解釈も容易であった4クラスター(以下CL)を採用した。(Table1)。
・CL1:ケンカの認識が過半数,ふざけの回答も3割程度見られたもの
・CL2:ふざけ,ケンカ,いじめに判断が分かれたと考えられるもの
・CL3:いじめの認識が最多だが,ふざけや分からないも一定数みられたもの
・CL4:7割前後がいじめと認識したもの
女子は,AICが2番目に低く解釈も容易であった4CLを採用した。(Table2)。
・CL1:ケンカの認識が6割前後だったもの
・CL2:ケンカの認識が最多だが,ふざけやいじめも一定数みられたもの
・CL3:6割以上がいじめと認識したもの
・CL4:いじめの認識が最多だが過半数を超えず,他の認識にも一定の回答が見られたもの
樹形図から男女とも,相手がやり返せないと“いじめ”と判断すると推測される。先行研究でも立場や強さの違いがいじめの要素として挙げられており,これは中学生自身のいじめ認識においても重要な要素であると思われる。
一方,先行研究でいじめの構成要件とされる,行為の継続性や加害者の複数性については,全体として中学生のいじめ認識との関連が示されなかった。これは研究と中学生の認識との乖離を示唆するともいえる。また行為の一部において,判断の男女差が得られた。したがって,いじめ予防の心理教育的支援に際しては,こういった中学生のいじめ認識に即した内容となることが望まれる。
文部科学省のいじめの定義には“けんか等を除く”とあるが,けんかの定義はなされておらず,除かれる行為に不明な部分がある。
そこで本研究は,いじめの認知件数が多い中学生を対象に,身体的・言語的攻撃について,継続性,攻撃の均衡性,加害者の複数性を操作した項目を用い,いじめと認識される要因を検討した。
方法
調査協力者 中学校2校に通う1―3年生608名のうち,記入漏れや同一回答等を除く508名(男子241名,女子267名)。
使用した質問紙 身体的攻撃(“たたいたりけったりする”)および言語的攻撃(“文句を言う”)について,継続性(1回だけ/毎日のように),加害者の複数性(1対1/友達数人),攻撃の均衡性(やり返す/やり返せない)の組合せによる16項目。それぞれ,ふざけ/ケンカ/いじめ/犯罪/分からない,のいずれに該当するか,判断を求めた。
実施時期・手続き 2013年10月から11月に,クラス単位で一斉に実施・回収された。
結果と考察
各項目を回答傾向で分類するため,男女ごとに階層的クラスター分析(群平均法)を行った(HAD11.313(清水ら,2006)を使用)。
男子は,AICが最も低く解釈も容易であった4クラスター(以下CL)を採用した。(Table1)。
・CL1:ケンカの認識が過半数,ふざけの回答も3割程度見られたもの
・CL2:ふざけ,ケンカ,いじめに判断が分かれたと考えられるもの
・CL3:いじめの認識が最多だが,ふざけや分からないも一定数みられたもの
・CL4:7割前後がいじめと認識したもの
女子は,AICが2番目に低く解釈も容易であった4CLを採用した。(Table2)。
・CL1:ケンカの認識が6割前後だったもの
・CL2:ケンカの認識が最多だが,ふざけやいじめも一定数みられたもの
・CL3:6割以上がいじめと認識したもの
・CL4:いじめの認識が最多だが過半数を超えず,他の認識にも一定の回答が見られたもの
樹形図から男女とも,相手がやり返せないと“いじめ”と判断すると推測される。先行研究でも立場や強さの違いがいじめの要素として挙げられており,これは中学生自身のいじめ認識においても重要な要素であると思われる。
一方,先行研究でいじめの構成要件とされる,行為の継続性や加害者の複数性については,全体として中学生のいじめ認識との関連が示されなかった。これは研究と中学生の認識との乖離を示唆するともいえる。また行為の一部において,判断の男女差が得られた。したがって,いじめ予防の心理教育的支援に際しては,こういった中学生のいじめ認識に即した内容となることが望まれる。