[PA018] 気づきと他者意識との関係性について
キーワード:気づき, 他者意識, KYT法
問題と目的
医療教育における感性教育についてはコミュニケーション能力を高める教育で用いられる。しかし,その評価については検討されている。患者さんの気持ちをくみ取れることは重要であるといえる。このくみ取りを「気づき」とした。この「気づき」に影響を与えるのが「他者意識」と考えた。「他者意識」とは他者へ意識及び関心を持つことである。これから求められた因子の中で関係性を持つのがあれば,感性教育にとって重要な評価指標となると考えた。そこで,「気づき」との関係性を調べる前に被験者の「他者意識」を調べることにした。「他者意識」を測定する尺度(他者意識尺度)を用いて5段階評価実験を行う。辻による他者意識尺度では3つの下位尺度(内的,外的,空想的)で説明している。しかし,5段階表現が同時期に実施した他のアンケート項目上表現が異なるため,改めて因子分析を行う。「気づき」については,KYT法で用いられる画像を用いて危険がある箇所とその危険度合いを回答させ,その度合いを求める。それらの結果を基に関係性を求める。
方 法
「他者意識」に関する調査
「他者意識」に関する質問については,辻(1993)が他者意識尺度として示した15項目を用いた。5段階の表現は,「よくあてはまる」,「あてはまる」,「どちらともいえない」,「あてはまらない」,「まったくあてはまらない」とした。被験者数は353名(医療系大学及び専門学校に在籍する1・2年生)である。
「気づき」度合い評価実験
被験者は主観的評価実験で用いた画像に対してどの部分に危険があるのか回答した。評価を明確するため,画像を5×5のマス目に分け,該当する箇所を被験者に選択させた。さらに,選んだ危険個所に対して,「危険がない」を0点から「極めて危険が高い」を10点として10段階評価で値を回答させた。これらの結果を基に「気づき」度合いは,総合危険評価値及び発生率から算出した。「発生率」とは各個所を選んだ被験者数に全被験者数で割った割合である。被験者数は33名であり,「他者意識」に関する調査に参加している。
結果と考察
「他者意識」の調査結果を基に因子分析を行った。スクリープロットを行った結果として2因子が妥当となった。2因子を仮定して主因子法・プロマックス回転による因子分析を行った。5段階評価において「よくあてはまる」を5点から「まったくあてはまらない」を1点で点数化した。プロマックス回転後の最終的な因子パターンと因子間相関が求められた。因子間相関には正の相関関係が示された。2つの因子は「内面」と「外見」と名付けた。「内面」は辻の「内的」に「空想的」が含まれ,「外見」は辻の「外的」に「空想的」が含まれた状態であった。
他者意識尺度を用いて得られた2因子に対して「気づき」度合い値との関係性について調べた。両実験に参加し,必要な情報に欠けていない33名の被験者の結果を基に,Spearmanの順位相関係数を調べた。その結果を表3に示す。
「気づき」度合いに対して「内面」因子が有意な負の相関関係を示した。このことから,「内面」因子による他者の内面的心情とそのイメージ力がが「気づき」度合いに対して関係性があることが考えられる。また,負の相関関係から「気づき」度合いが大きいほど他者への意識が低いと考えられる。しかし,「内面」での下位尺度得点を調べたところ,「どちらともいえない」(3点)から「あてはまる」(5点)に収まるのが被験者33名中30名であった。このことから,被験者の「内面」における他者意識度合いは高いが,高すぎると「気づき」度合いが落ちると考えられる。
謝 辞
本研究は,独立行政法人日学術振興会平成26年度科学研究費助成事業(若手(B)26730145)の助成を受けて実施した成果の一部である。
医療教育における感性教育についてはコミュニケーション能力を高める教育で用いられる。しかし,その評価については検討されている。患者さんの気持ちをくみ取れることは重要であるといえる。このくみ取りを「気づき」とした。この「気づき」に影響を与えるのが「他者意識」と考えた。「他者意識」とは他者へ意識及び関心を持つことである。これから求められた因子の中で関係性を持つのがあれば,感性教育にとって重要な評価指標となると考えた。そこで,「気づき」との関係性を調べる前に被験者の「他者意識」を調べることにした。「他者意識」を測定する尺度(他者意識尺度)を用いて5段階評価実験を行う。辻による他者意識尺度では3つの下位尺度(内的,外的,空想的)で説明している。しかし,5段階表現が同時期に実施した他のアンケート項目上表現が異なるため,改めて因子分析を行う。「気づき」については,KYT法で用いられる画像を用いて危険がある箇所とその危険度合いを回答させ,その度合いを求める。それらの結果を基に関係性を求める。
方 法
「他者意識」に関する調査
「他者意識」に関する質問については,辻(1993)が他者意識尺度として示した15項目を用いた。5段階の表現は,「よくあてはまる」,「あてはまる」,「どちらともいえない」,「あてはまらない」,「まったくあてはまらない」とした。被験者数は353名(医療系大学及び専門学校に在籍する1・2年生)である。
「気づき」度合い評価実験
被験者は主観的評価実験で用いた画像に対してどの部分に危険があるのか回答した。評価を明確するため,画像を5×5のマス目に分け,該当する箇所を被験者に選択させた。さらに,選んだ危険個所に対して,「危険がない」を0点から「極めて危険が高い」を10点として10段階評価で値を回答させた。これらの結果を基に「気づき」度合いは,総合危険評価値及び発生率から算出した。「発生率」とは各個所を選んだ被験者数に全被験者数で割った割合である。被験者数は33名であり,「他者意識」に関する調査に参加している。
結果と考察
「他者意識」の調査結果を基に因子分析を行った。スクリープロットを行った結果として2因子が妥当となった。2因子を仮定して主因子法・プロマックス回転による因子分析を行った。5段階評価において「よくあてはまる」を5点から「まったくあてはまらない」を1点で点数化した。プロマックス回転後の最終的な因子パターンと因子間相関が求められた。因子間相関には正の相関関係が示された。2つの因子は「内面」と「外見」と名付けた。「内面」は辻の「内的」に「空想的」が含まれ,「外見」は辻の「外的」に「空想的」が含まれた状態であった。
他者意識尺度を用いて得られた2因子に対して「気づき」度合い値との関係性について調べた。両実験に参加し,必要な情報に欠けていない33名の被験者の結果を基に,Spearmanの順位相関係数を調べた。その結果を表3に示す。
「気づき」度合いに対して「内面」因子が有意な負の相関関係を示した。このことから,「内面」因子による他者の内面的心情とそのイメージ力がが「気づき」度合いに対して関係性があることが考えられる。また,負の相関関係から「気づき」度合いが大きいほど他者への意識が低いと考えられる。しかし,「内面」での下位尺度得点を調べたところ,「どちらともいえない」(3点)から「あてはまる」(5点)に収まるのが被験者33名中30名であった。このことから,被験者の「内面」における他者意識度合いは高いが,高すぎると「気づき」度合いが落ちると考えられる。
謝 辞
本研究は,独立行政法人日学術振興会平成26年度科学研究費助成事業(若手(B)26730145)の助成を受けて実施した成果の一部である。