[PA019] 違和感の喚起が数量関係の誤判断の修正に及ぼす影響(2)
違和感の水準に着目して
キーワード:違和感の喚起, 割合, 誤概念
問題と目的
蛯名(日教心,2014)は,誤概念を有する学習者に対して,正しい情報を読み取る前に,学習者が自身の誤概念に違和感を抱くことで,その後の課題解決が促進されるどうかを検討した。具体的には,「割合は足し算をしてもよい」という誤概念を修正する際に,あらかじめ「果汁80%のジュースを2つ足したら濃さは160%になるの?」という質問場面を提示した。部分-全体関係にある割合は,100%を超えることはないため,濃さが160%になることも通常はありえない。すなわち,加法操作の結果が100%以下(e.g. 40%)になる事態よりも100%を超える事態では違和感が喚起されやすく,その結果,解説文の受け入れが促進されるかどうかを検討した。前研究では,違和感の喚起場面でジュースの濃さを題材として用いたが,「割合は100%以上にならない」と言及した対象者はほとんどおらず,十分に違和感が喚起されたとは言えなかった。また,解答形式が自由記述であったため,対象者がどの程度の違和感を抱いたのかも判断できなかった。そこで,本研究では,濃さの他に出席率の題材を新たに設け,さらに,違和感の程度を評定させ,違和感の喚起が誤った割合の加法操作の修正に有効か検討する。
方法
(1)対象者 公立中学校2年生74名,3年生81名。
(2)調査課題 事前課題は割合基本課題4問,割合加法課題5問であった。事後課題は,事前と同様の割合加法課題5問であった。
(3)教示文 題材(出席率・濃度)及び数値(40%・160%)の2要因を組み合わせ,4群を設定した。教示文の内容は,①違和感の喚起文・違和感の評定(7件法),②加法問題の解説文,③解説文の理解度・納得度の評定で構成された。
(4)手続き 一斉配布・回収によって,各自のペースで進められた。解答時間は30分程度であった。
結果と考察
分析対象者は事前テストの加法課題で1問以上加法操作を行った110名であった。
(1)違和感の評定 各群の違和感の評定値平均をFigure1に示す。2要因分散分析の結果,数値要因にのみ主効果が見られた(F (1,106)=7.48, p<.01)。題材の違いは違和感の喚起に影響を及ぼさなかったことから,以下の分析は題材を統合して行う。
(2)事前事後の得点差の比較 加法問題5問の合計点平均を算出し,事前から事後の伸びを群間で比較した。その際,違和感の評定値が5~7(おかしいと思う)を違和感水準高,1~3(おかしいと思わない)を違和感水準低とし,違和感水準と数値要因の2要因で分散分析を行ったところ(Figure1),得点の伸びに交互作用が見られた(F (1,86)=6.54, p<.05)。単純主効果を見たところ,①違和感水準低では,160%条件より40%条件のほうが得点の伸びが大きく,②160%条件では,違和感水準低より,違和感水準高の方が得点の伸びが大きかった。①の要因として,事後課題は加法結果がすべて100%以下であり,40%条件で用いられた数値との類似性が高いことが転移を容易にしたと考えられる。②については,160%条件で違和感を抱いた者ほど解説文の読み取りが促進され,課題解決が促進したと考えられる。
蛯名(日教心,2014)は,誤概念を有する学習者に対して,正しい情報を読み取る前に,学習者が自身の誤概念に違和感を抱くことで,その後の課題解決が促進されるどうかを検討した。具体的には,「割合は足し算をしてもよい」という誤概念を修正する際に,あらかじめ「果汁80%のジュースを2つ足したら濃さは160%になるの?」という質問場面を提示した。部分-全体関係にある割合は,100%を超えることはないため,濃さが160%になることも通常はありえない。すなわち,加法操作の結果が100%以下(e.g. 40%)になる事態よりも100%を超える事態では違和感が喚起されやすく,その結果,解説文の受け入れが促進されるかどうかを検討した。前研究では,違和感の喚起場面でジュースの濃さを題材として用いたが,「割合は100%以上にならない」と言及した対象者はほとんどおらず,十分に違和感が喚起されたとは言えなかった。また,解答形式が自由記述であったため,対象者がどの程度の違和感を抱いたのかも判断できなかった。そこで,本研究では,濃さの他に出席率の題材を新たに設け,さらに,違和感の程度を評定させ,違和感の喚起が誤った割合の加法操作の修正に有効か検討する。
方法
(1)対象者 公立中学校2年生74名,3年生81名。
(2)調査課題 事前課題は割合基本課題4問,割合加法課題5問であった。事後課題は,事前と同様の割合加法課題5問であった。
(3)教示文 題材(出席率・濃度)及び数値(40%・160%)の2要因を組み合わせ,4群を設定した。教示文の内容は,①違和感の喚起文・違和感の評定(7件法),②加法問題の解説文,③解説文の理解度・納得度の評定で構成された。
(4)手続き 一斉配布・回収によって,各自のペースで進められた。解答時間は30分程度であった。
結果と考察
分析対象者は事前テストの加法課題で1問以上加法操作を行った110名であった。
(1)違和感の評定 各群の違和感の評定値平均をFigure1に示す。2要因分散分析の結果,数値要因にのみ主効果が見られた(F (1,106)=7.48, p<.01)。題材の違いは違和感の喚起に影響を及ぼさなかったことから,以下の分析は題材を統合して行う。
(2)事前事後の得点差の比較 加法問題5問の合計点平均を算出し,事前から事後の伸びを群間で比較した。その際,違和感の評定値が5~7(おかしいと思う)を違和感水準高,1~3(おかしいと思わない)を違和感水準低とし,違和感水準と数値要因の2要因で分散分析を行ったところ(Figure1),得点の伸びに交互作用が見られた(F (1,86)=6.54, p<.05)。単純主効果を見たところ,①違和感水準低では,160%条件より40%条件のほうが得点の伸びが大きく,②160%条件では,違和感水準低より,違和感水準高の方が得点の伸びが大きかった。①の要因として,事後課題は加法結果がすべて100%以下であり,40%条件で用いられた数値との類似性が高いことが転移を容易にしたと考えられる。②については,160%条件で違和感を抱いた者ほど解説文の読み取りが促進され,課題解決が促進したと考えられる。