[PC019] 児童の音楽活動における創造的活動
リコーダー演奏に見られる気付きと工夫
キーワード:熟達化, 創造的活動, 協調学習
【目 的】
リコーダー演奏に関してのアンケート結果から,多くの子ども達が「こんな風に吹きたい」と自分なりの思いを持ち,工夫して演奏していることが分かった。このような子ども達の思いや工夫が練習過程や,演奏の発表の場でどのように表れているのか調べていきたいと考え本研究を行った。
大浦は,その著書3)「創造的技能領域における熟達化の認知心理学的研究」の中で,波田野と稲垣4)(1983)が提唱した事を受けて,熟達者を「手際の良い熟達者」と「適応的熟達者」に分けている。また,5)「十分な探索と工夫を重ねること(つまり発明すること)その経験を繰り返し行うことを通して熟達が進んでいく。その意味では,創造的であり続ける事が熟達を可能にしている。」としている。つまり,(1)の創造的活動で築いた「正確でスムーズな演奏」の上に(2)の創造的活動である「探索し工夫する事」を重ねることで,児童の音楽表現が深まり,熟達化を促す事が分かると述べている。
また,子ども達の音楽表現活動には,次の3つの創造的活動があると考えられてきた。(1)楽譜通り正しくスムーズに演奏できるまでの創造的活動(2)楽譜に書かれた内容を越えてその曲に対する思いや意図が込められた演奏ができるまでの創造的活動(3)友達や仲間と思いを共有して共に演奏できたり,聴き手である相手に自分の思いが伝わるような演奏ができたりするまでの創造的活動。
研究を進めるうちに「子ども達が一つの曲を習得する過程」は(1)~(3)と段階を追った「単線的な過程」ではなく,様々な道筋が考えられる「複線的な過程」であり,前段階に戻りながら進む可逆性も含んでいることがわかってきた。例えば,曲が仕上がるまで1曲通しての練習を繰り返す子どももいれば,できるようになった旋律だけを自分なりの表現を求めて繰り返し練習する子もいた。また,「正確でスムーズな演奏」を求めて練習するうちに,「美しい音色の演奏」「なめらかな演奏」といった「自分の思いが込められた」演奏を自然と追究するようになったり,「楽しい感じ」「弾んだ感じ」を出すためには,「楽譜通りに正確に演奏する」事の大切さに気付いたりした子どももいた。このように,子ども一人一人がそれぞれの課題に気付き,それを自分で工夫しながら乗り越えていく自発的な学習が展開 していく事が明らかになってきた。
本研究は,これらの工夫の実態を明らかにし,そうすることにより,一人一人の子ども達がより達成感の強い学びを達成できるよう,創造的な活動の場をどう工夫し,準備していくのか,その成果を報告するものである。
【方 法】
①学習カード
リコーダーの練習時に,子ども達が「目標」「練習のポイント」「練習の方法・工夫の方法」「反省」を順に学習カードに記入することで,より良い演奏を目指して,自ら気付き,工夫した記録を残す事にした。
②演奏場面の録画,発話記録など
授業中の発話を録音し,他の子どもの発言や,教師の問いかけにより,「演奏している児童がどのような事に気付き工夫しようとしているのか探りたい」と考えた。また,グループ練習の場面を録画することにより「子ども達がどのように関わり合いを持ちながら練習し,上達していくのか」研究したいと考えた。
【結果と考察】
子ども達が書いた「学習カード」の記録,練習場面や演奏の発表会の録画録音等の記録から,つぎのような事が分かった。
(1)の創造的活動である「正確でスムーズな演奏」のために,個々の子ども達が工夫しながら練習を重ねるうちに,自然と美しい音色が出たり,曲を覚えてその曲に合った演奏ができたり,と(2)の創造的活動である「思いや意図の込められた演奏」につながっていった。
また,(2)の創造的活動である「思いや意図の込められた演奏」を行うために,自分の演奏を正しく評価し,より良い演奏に向けて工夫や探索をする様子が見られた。優れた演奏ができる子ども達の多くは,練習の過程で自分の状態を正しくつかみ,次の練習に生かす努力をしていた。
(3)の創造的活動は,仲間との合奏の練習場面や発表場面に多く見られた。その際(2)の創造的活動で高まった個々の子ども達の「演奏への思いや意図」が共に演奏するグループ合奏の中で更に深まっていった。それが発表という場において演奏を聴いている子ども達に伝わっていった。
このように,「楽譜通りに正しくスムーズな演奏をし,自分なりの思いや意図を込めて演奏できるよう工夫して練習を重ね,仲間と合わせたりお互いに演奏を聴き合ったりする。」という3つの創造的活動は,(1)~(3)と順を追って表れるというよりも,練習当初からそれぞれ深く関わりながら,一人一人の子どもに合った演奏表現を創っていくことが分かった。
リコーダー演奏に関してのアンケート結果から,多くの子ども達が「こんな風に吹きたい」と自分なりの思いを持ち,工夫して演奏していることが分かった。このような子ども達の思いや工夫が練習過程や,演奏の発表の場でどのように表れているのか調べていきたいと考え本研究を行った。
大浦は,その著書3)「創造的技能領域における熟達化の認知心理学的研究」の中で,波田野と稲垣4)(1983)が提唱した事を受けて,熟達者を「手際の良い熟達者」と「適応的熟達者」に分けている。また,5)「十分な探索と工夫を重ねること(つまり発明すること)その経験を繰り返し行うことを通して熟達が進んでいく。その意味では,創造的であり続ける事が熟達を可能にしている。」としている。つまり,(1)の創造的活動で築いた「正確でスムーズな演奏」の上に(2)の創造的活動である「探索し工夫する事」を重ねることで,児童の音楽表現が深まり,熟達化を促す事が分かると述べている。
また,子ども達の音楽表現活動には,次の3つの創造的活動があると考えられてきた。(1)楽譜通り正しくスムーズに演奏できるまでの創造的活動(2)楽譜に書かれた内容を越えてその曲に対する思いや意図が込められた演奏ができるまでの創造的活動(3)友達や仲間と思いを共有して共に演奏できたり,聴き手である相手に自分の思いが伝わるような演奏ができたりするまでの創造的活動。
研究を進めるうちに「子ども達が一つの曲を習得する過程」は(1)~(3)と段階を追った「単線的な過程」ではなく,様々な道筋が考えられる「複線的な過程」であり,前段階に戻りながら進む可逆性も含んでいることがわかってきた。例えば,曲が仕上がるまで1曲通しての練習を繰り返す子どももいれば,できるようになった旋律だけを自分なりの表現を求めて繰り返し練習する子もいた。また,「正確でスムーズな演奏」を求めて練習するうちに,「美しい音色の演奏」「なめらかな演奏」といった「自分の思いが込められた」演奏を自然と追究するようになったり,「楽しい感じ」「弾んだ感じ」を出すためには,「楽譜通りに正確に演奏する」事の大切さに気付いたりした子どももいた。このように,子ども一人一人がそれぞれの課題に気付き,それを自分で工夫しながら乗り越えていく自発的な学習が展開 していく事が明らかになってきた。
本研究は,これらの工夫の実態を明らかにし,そうすることにより,一人一人の子ども達がより達成感の強い学びを達成できるよう,創造的な活動の場をどう工夫し,準備していくのか,その成果を報告するものである。
【方 法】
①学習カード
リコーダーの練習時に,子ども達が「目標」「練習のポイント」「練習の方法・工夫の方法」「反省」を順に学習カードに記入することで,より良い演奏を目指して,自ら気付き,工夫した記録を残す事にした。
②演奏場面の録画,発話記録など
授業中の発話を録音し,他の子どもの発言や,教師の問いかけにより,「演奏している児童がどのような事に気付き工夫しようとしているのか探りたい」と考えた。また,グループ練習の場面を録画することにより「子ども達がどのように関わり合いを持ちながら練習し,上達していくのか」研究したいと考えた。
【結果と考察】
子ども達が書いた「学習カード」の記録,練習場面や演奏の発表会の録画録音等の記録から,つぎのような事が分かった。
(1)の創造的活動である「正確でスムーズな演奏」のために,個々の子ども達が工夫しながら練習を重ねるうちに,自然と美しい音色が出たり,曲を覚えてその曲に合った演奏ができたり,と(2)の創造的活動である「思いや意図の込められた演奏」につながっていった。
また,(2)の創造的活動である「思いや意図の込められた演奏」を行うために,自分の演奏を正しく評価し,より良い演奏に向けて工夫や探索をする様子が見られた。優れた演奏ができる子ども達の多くは,練習の過程で自分の状態を正しくつかみ,次の練習に生かす努力をしていた。
(3)の創造的活動は,仲間との合奏の練習場面や発表場面に多く見られた。その際(2)の創造的活動で高まった個々の子ども達の「演奏への思いや意図」が共に演奏するグループ合奏の中で更に深まっていった。それが発表という場において演奏を聴いている子ども達に伝わっていった。
このように,「楽譜通りに正しくスムーズな演奏をし,自分なりの思いや意図を込めて演奏できるよう工夫して練習を重ね,仲間と合わせたりお互いに演奏を聴き合ったりする。」という3つの創造的活動は,(1)~(3)と順を追って表れるというよりも,練習当初からそれぞれ深く関わりながら,一人一人の子どもに合った演奏表現を創っていくことが分かった。