日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PC

2015年8月26日(水) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PC042] 大学生のチームワークに関するスキルを向上させるトレーニングの有効性(4)

トレーニング終了後の感想に着目して

太幡直也 (愛知学院大学)

キーワード:チームワーク, スキル, トレーニング

大学生は,就職後,さまざまな者とチームワークを発揮する能力が必要となる。太幡(2013)は,大学生にチームワークに関するスキルを向上させるトレーニングを実施した。そして,トレーニング実施条件のみで,チームワークを構成する能力を測定する尺度(相川・高本・杉森・古屋,2012),社会的スキル(菊池,1988)の得点が向上したことを示した。また,トレーニング実施条件は非実施条件に比べ,トレーニング終了から約1年半後でも上記の得点が高いため,トレーニングの有効性が持続することも示されている(太幡,2014)。
本研究では,太幡(2013)と同様のトレーニングを受けた者に,すべてのトレーニング終了後に感想を記述するように求め,感想の内容を分析する。感想として,全体を通しての反省,今後の目標に記述するように求める。本研究により,トレーニングを受けた者が,トレーニング経験をどのように捉えたかを理解できると期待される。
方法
調査対象者 2014年度にチームワークに関するスキルを向上させるトレーニングを実施する全15回の授業(“集合行動論”)を受講した30名のうち,2014年7月の授業終了後の調査に回答した28名(男性5名,女性23名,平均年齢20.32±0.48歳)を分析対象とした。授業では,太幡(2013)と同様に,聴く,説得する,リーダーシップの三つのスキルに関するトレーニングを実施した。
質問項目 15回目の授業終了後に,“授業全体を通しての反省(以下,反省)”,“今後の課題(以下,課題)”を自由に記述するように求めた。
分析方法 記述の分類は,2名の大学生(ともに女性)が行った。“反省”は,後藤・大坊(2005)に基づいて分類した。すなわち,何らかの変化を意識できた“変化”は行動と意識に,何らかの発見を得ることができた“気づき”は自分自身の性格や特徴,コミュニケーション,コミュニケーションの中での自分自身に分類した。“課題”は,記述から課題にあたる記述を抜粋し,記述をKJ法(川喜田,1967)により分類した。
結果と考察
反省の分類結果 反省のそれぞれのカテゴリーを言及した者の割合をTable 1に示す。多くの者が,コミュニケーションの中での自分自身の特徴への気づきを回答した。したがって,トレーニングが再発見や再認識の機会となった者が多かったと考えられる。また,約半数の者が,行動や意識の側面で変化がみられたと回答した。したがって,トレーニングが行動や意識の変化の契機となったと実感する者も一定数はいたと考えられる。
課題の分類結果 全部で63の課題が抜粋され,21のカテゴリーに分類された。一人あたりの言及数は,M=2.25(SD=1.53)であった。最も多くの者に言及された課題は,“積極的に意見を発言する”であった(32.1%)。続いて,“チーム内の雰囲気作り”,“チームのメンバーのサポート”が多く言及された(21.4%)。概して,トレーニングに関連する事柄が課題として多く挙げられていた。したがって,トレーニングのねらいがトレーニングを受けた者に認識されていたと推察される。