[PD036] 授業形式の違いが授業評価に及ぼす効果
異なる授業間での再現性の検討
キーワード:授業評価
【問題と目的】
大学の授業において,プレゼンテーションソフト等によるスライドを使用することは,一般的な手法の一つである(太田, 2004)。スライドを用いた授業の意義や効果については,既にいくつかの実践報告(澤田, 2009)や調査研究が存在する(阿部, 2004; 福島, 2002; 太田, 2004, 2005)。しかし多くの研究では,データ収集範囲や扱う指標が限られており,その知見は十分であるとは言い難い。
永井(2014)は,授業評価や授業への参加度など多面的な指標を用いて,スライドを用いた授業と従来の板書形式の授業との比較を行っているが,単一の授業における比較が行われているのみであり,一般化可能性には限界がある。そこで本研究では,永井(2014)による埋め込み型スライド授業を別の授業で実践した結果を報告し,効果の再現性について検討することを目的とする。
【方 法】
対象授業 必修専門科目「カウンセリング」における2013年度(授業履修登録者88名)および2014年度(授業履修登録者55名)のデータを使用した。2013年度の授業が通常の板書型授業であり,2014年度が埋め込み型スライド授業であった。
評価指標 ①出席カードへの記入文字数 毎回の授業で配布する出席カードへ任意に記入する質問や意見・感想の文字数を授業への参加の指標とした。②授業評価 毎回の出席カードにおいて,「授業への興味」「授業の理解」「授業のわかりやすさ」「授業内容は役立ちそうか」「情報量」について7件法で尋ねている。受講期間を通しての各項目への各学生における平均値を,授業評価の指標として使用した。なおこれらの指標は,データの信頼性を考慮し,出席回数が7割を上回る117名のデータのみを使用した。
【結果と考察】
出席状況との関連 まず,授業の形式と学生の出席状況の関連を検討するため,欠席回数が4回を上回る学生の数を算出し,χ2検定を行った結果,有意な関連は見られなかった(χ2 (1)=0.05)。
授業への取り組みおよび授業評価との関連 感想カードへの記入文字数,授業評価の各項目および「興味」「理解」「わかりやすさ」「内容の役立ち度」の項目の合計値について,授業形式による平均値の差の検定を行った。その結果,「情報量」を除く全ての変数について有意な平均値差が見られ(t=2.25~3.80, d=.42~.69),スライド型の授業の方が,板書型の授業に比べ,全ての変数の平均値が高かった(Table1)。
以上のように,授業への取り組みおよび授業評価については,スライド型の授業の方が高くなっており,永井(2014)と同様の結果であった。一方出席回数については,本研究では差が見られなかった。これは,大学での出席に対する指導,科目の履修区分等が影響する可能性がある。しかしながら埋め込み型スライド授業は,異なる授業においても概ね効果的であることが示された。今後は,異なる授業者の授業などにおいても,その有効性を検討していく必要があると考えられる。
大学の授業において,プレゼンテーションソフト等によるスライドを使用することは,一般的な手法の一つである(太田, 2004)。スライドを用いた授業の意義や効果については,既にいくつかの実践報告(澤田, 2009)や調査研究が存在する(阿部, 2004; 福島, 2002; 太田, 2004, 2005)。しかし多くの研究では,データ収集範囲や扱う指標が限られており,その知見は十分であるとは言い難い。
永井(2014)は,授業評価や授業への参加度など多面的な指標を用いて,スライドを用いた授業と従来の板書形式の授業との比較を行っているが,単一の授業における比較が行われているのみであり,一般化可能性には限界がある。そこで本研究では,永井(2014)による埋め込み型スライド授業を別の授業で実践した結果を報告し,効果の再現性について検討することを目的とする。
【方 法】
対象授業 必修専門科目「カウンセリング」における2013年度(授業履修登録者88名)および2014年度(授業履修登録者55名)のデータを使用した。2013年度の授業が通常の板書型授業であり,2014年度が埋め込み型スライド授業であった。
評価指標 ①出席カードへの記入文字数 毎回の授業で配布する出席カードへ任意に記入する質問や意見・感想の文字数を授業への参加の指標とした。②授業評価 毎回の出席カードにおいて,「授業への興味」「授業の理解」「授業のわかりやすさ」「授業内容は役立ちそうか」「情報量」について7件法で尋ねている。受講期間を通しての各項目への各学生における平均値を,授業評価の指標として使用した。なおこれらの指標は,データの信頼性を考慮し,出席回数が7割を上回る117名のデータのみを使用した。
【結果と考察】
出席状況との関連 まず,授業の形式と学生の出席状況の関連を検討するため,欠席回数が4回を上回る学生の数を算出し,χ2検定を行った結果,有意な関連は見られなかった(χ2 (1)=0.05)。
授業への取り組みおよび授業評価との関連 感想カードへの記入文字数,授業評価の各項目および「興味」「理解」「わかりやすさ」「内容の役立ち度」の項目の合計値について,授業形式による平均値の差の検定を行った。その結果,「情報量」を除く全ての変数について有意な平均値差が見られ(t=2.25~3.80, d=.42~.69),スライド型の授業の方が,板書型の授業に比べ,全ての変数の平均値が高かった(Table1)。
以上のように,授業への取り組みおよび授業評価については,スライド型の授業の方が高くなっており,永井(2014)と同様の結果であった。一方出席回数については,本研究では差が見られなかった。これは,大学での出席に対する指導,科目の履修区分等が影響する可能性がある。しかしながら埋め込み型スライド授業は,異なる授業においても概ね効果的であることが示された。今後は,異なる授業者の授業などにおいても,その有効性を検討していく必要があると考えられる。