日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PD

2015年8月27日(木) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PD067] 特別支援教育の地域リーダー像を考える

リーダーシップの要素の収集・分類

谷芳恵1, 八乙女利恵#2 (1.兵庫教育大学, 2.兵庫教育大学)

キーワード:地域リーダー, 特別支援教育コーディネーター, リーダーシップ

問題と目的
兵庫教育大学特別支援教育モデル研究開発室では,特別支援教育における地域リーダー育成のためのプログラム開発をミッションとしている。その一環として,自治体研修機関と共同で,特別支援教育コーディネーター(以下,コーディネーター)を対象とした研修会を年4回,継続的に行っている。「リーダーシップ」はそのキーコンセプトの一つである。2014年度に実施された研修会では,リーダーシップについて提案し,考える機会をつくることで,コーディネーターは地域リーダーとしてどうあるべきかという視点を提供することを試みた。その中で,コーディネーターが果たす「リーダー」としての役割とはどのようなものかについて繰り返し検討してきた。本研究では,研修を通して得られた知見をもとに,コーディネーターが果たすべきリーダーシップについて,一つのモデルを提案したい。
研 究 1
目的 コーディネーターが果たすリーダーシップの要素を収集・分類する。
対象者 第2回研修会への参加者34名。実施時期は2014年8月である。
リーダーシップについての記述の収集 1)自由記述からの抽出 研修プログラムの一つとして,「あなたの学校・地域にとって最適なリーダーシップとは?」というテーマでワークショップを行った。参加者は4~5名からなる8グループに分かれ,ワークショップに参加した。最後に記述された個人の振り返りワークシートから,リーダーシップに関する記述を抽出した。2)リーダーシップに関する項目 谷(2014)で用いられたチーム支援におけるチームおよびメンバーとの関わりに関する項目。⑴HC評価尺度改訂版(森口・日潟・小山田・齊藤・城,2009)26項目を,表現に若干の修正を加えた上で使用した。「リーダーシップ」「マネジメント」「プランニング」「ネゴシエーション」「コミュニケーション」からなる。⑵メンバーとの関係構築,協働,若手育成,対話に関する12項目。
分析方法・結果 1)自由記述から得られた記述と 2)リーダーシップに関する項目をあわせて,KJ法を参考に分類を行った。分類は,発表者2名が協議して行った。その結果,7つのリーダーシップの要素が抽出された(Table 1)。
研 究 2
目的 リーダーに求められる力に関する記述を分類し,コーディネーターが発揮するべきリーダーシップについての意識を検討する。
対象者 第4回研修会への参加者38名。実施時期は2015年1月である。
調査内容 「地域の特別支援教育を推進するリーダーとなるために,今後どのような力が必要になると思いますか」という問いを提示し,自由記述により回答を求めた。
分析方法・結果 得られた記述を,第2発表者がリーダーシップの要素に分類した。その結果,マネジメントに関しては16の記述があり,積極的に動く(行動・実践)が5,自らの専門性を高める(点検・検証)が4,と多かった。コミュニケーションに関しては21の記述があり,「つなぐ」力(関係構築)が10で最も多く,関係構築に関する記述が13と過半数を占めた。記述はリーダーが主体となって動く・高まることが中心であり,メンバーを活かす・動かすといったフォロアーへの働きかけという点では課題が残る。しかし,「つなぐ」という言葉が多く挙げられたことは,コーディネーターが一人で問題に対処するのではなく,チームで対処するという意識が根付き始めたことを示唆していると言えるかもしれない。