[PF058] 次世代育成に関する心理教育の実践と評価
NCAST教材を用いた予備的試み
キーワード:次世代育成意識, 心理教育, NCAST
問題と目的
本研究では,子育て支援における親になる以前からの支援(蘆田, 2010)に注目し,大学生の次世代育成に関する意識を促進するための心理教育プログラムの実施と評価を試みた。子どもや子どもの養育に対する理解や準備性の活性化のために,親子の関係性に焦点化したNCAST(Nursing Child Assessment Satellite Training)プログラムの教材を活用した。本プログラムは,乳幼児のサイン(Cues)や親子の関係性についてのNCAST教材を用いた講義・演習(実習事前指導)の後,親子参加型の子育て支援施設での心理実習に参加するという内容であった。事前テスト,講義・演習後の事後テスト1,実習後の事後テスト2のアセスメント結果に基づき,本プログラムの評価を試みた。
方 法
対象:関東にある私立大学の心理学専攻の3~4年生12名(男子3名,女子9名)を対象とした(平均年齢=20.50歳,SD=0.52)。これらの学生は,平成24~26年に実施された心理実習(心理学の専門科目・選択科目)を履修し,子育て支援施設での実習(10日間,1名のみ5日間)に参加した者である。教材:親子の関係性の理論的背景となるBarnardモデル,教える場面での親子相互作用プロセスを示したTeaching Loop,子どものサインの分類と写真カード(BabyCues),親子の関係性の理解と構築を促す絵カード(Promoting First Relationships)を使用した(いずれも米国ワシントン大学NCAST-AVENUWが提供)。アセスメント尺度:養護性尺度(楜澤, 2012)を用いた。25項目,4下位尺度(「幼い子どもに対する共感性」,「幼い子どもに対する技能の認知」,「親への準備性」,「子どもの非受容性」)で構成された。各項目得点の合計値を尺度得点とした。手続き:心理実習科目の授業の一部を活用して,本プログラムを試みた。子育て支援施設での実習の事前指導として2コマ(3時間分,但し平成24年度は3コマ)の講義・演習を実施した(担当者はNCASTインストラクター資格を有していた)。その内容は,子育て支援の概要,親子の関係性の理解と構築(Barnardモデル,Teaching Loop,Promoting First Relationships教材を使用),子どものサインの理解と対応(BabyCues教材を使用)であった。その後,子育て支援施設での実習に参加した。倫理的配慮:対象者に本プログラムの内容の評価(事前・事後テスト),および,評価データの使用に関して文書で説明をおこない,研究協力の承諾を文書で得た。本研究の実施に関しては,第一著者の所属機関の研究倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
事前・事後テスト得点について,Friedman検定と多重比較(Wilcoxonの符号付き順位検定,Holmの方法による補正)を行った(Figure 1)。「技能」と「準備性」で,事前テストと事後テスト2の間に有意な上昇傾向が,「非受容性」で有意な下降傾向が認められた。NCAST教材を活用した講義・演習と実習を通じて,養護性の一部の領域が促進されたことが示され,本プログラムの有効性が示唆された。本研究では対象者が限定されており,予備的な試みであったため,今後更なる検討が必要と考えられた。
本研究では,子育て支援における親になる以前からの支援(蘆田, 2010)に注目し,大学生の次世代育成に関する意識を促進するための心理教育プログラムの実施と評価を試みた。子どもや子どもの養育に対する理解や準備性の活性化のために,親子の関係性に焦点化したNCAST(Nursing Child Assessment Satellite Training)プログラムの教材を活用した。本プログラムは,乳幼児のサイン(Cues)や親子の関係性についてのNCAST教材を用いた講義・演習(実習事前指導)の後,親子参加型の子育て支援施設での心理実習に参加するという内容であった。事前テスト,講義・演習後の事後テスト1,実習後の事後テスト2のアセスメント結果に基づき,本プログラムの評価を試みた。
方 法
対象:関東にある私立大学の心理学専攻の3~4年生12名(男子3名,女子9名)を対象とした(平均年齢=20.50歳,SD=0.52)。これらの学生は,平成24~26年に実施された心理実習(心理学の専門科目・選択科目)を履修し,子育て支援施設での実習(10日間,1名のみ5日間)に参加した者である。教材:親子の関係性の理論的背景となるBarnardモデル,教える場面での親子相互作用プロセスを示したTeaching Loop,子どものサインの分類と写真カード(BabyCues),親子の関係性の理解と構築を促す絵カード(Promoting First Relationships)を使用した(いずれも米国ワシントン大学NCAST-AVENUWが提供)。アセスメント尺度:養護性尺度(楜澤, 2012)を用いた。25項目,4下位尺度(「幼い子どもに対する共感性」,「幼い子どもに対する技能の認知」,「親への準備性」,「子どもの非受容性」)で構成された。各項目得点の合計値を尺度得点とした。手続き:心理実習科目の授業の一部を活用して,本プログラムを試みた。子育て支援施設での実習の事前指導として2コマ(3時間分,但し平成24年度は3コマ)の講義・演習を実施した(担当者はNCASTインストラクター資格を有していた)。その内容は,子育て支援の概要,親子の関係性の理解と構築(Barnardモデル,Teaching Loop,Promoting First Relationships教材を使用),子どものサインの理解と対応(BabyCues教材を使用)であった。その後,子育て支援施設での実習に参加した。倫理的配慮:対象者に本プログラムの内容の評価(事前・事後テスト),および,評価データの使用に関して文書で説明をおこない,研究協力の承諾を文書で得た。本研究の実施に関しては,第一著者の所属機関の研究倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
事前・事後テスト得点について,Friedman検定と多重比較(Wilcoxonの符号付き順位検定,Holmの方法による補正)を行った(Figure 1)。「技能」と「準備性」で,事前テストと事後テスト2の間に有意な上昇傾向が,「非受容性」で有意な下降傾向が認められた。NCAST教材を活用した講義・演習と実習を通じて,養護性の一部の領域が促進されたことが示され,本プログラムの有効性が示唆された。本研究では対象者が限定されており,予備的な試みであったため,今後更なる検討が必要と考えられた。