[PF069] 看護系志望の高校生に求められる学力・適性に関する研究(4)
高等学校進路指導教員の意識
キーワード:看護, 進路, 学力
問題と目的
1992年に制定された通称「人材確保法」をきっかけに,看護専門職業人の養成が急速に四大化している。必然的に看護系志望者の進路選択は大学入試の文脈に依存する状況となっている。金澤他(2011)は看護系大学の入試科目が多様化している状況を示した。倉元他(2011),倉元他(2012)では,2,000名を超える看護系大学と専門学校の学生を対象とした調査から,設置者と学校種によって高校時代の履修履歴が多様であること,受験の理由によって入学後の適応度に違いが見られることを示した。以上の研究結果を受け,本研究では,送り出し側の高校進路指導教員に質問紙調査を行い,その意識を探ることとする。
方法
特別支援学校等を除く全国5,028の高等学校,中等教育学校の中から無作為に抽出された2,000校を調査対象とした。2014年1月に8ページから成る調査票を送付し,郵送方式で回収した。
1,319校から回答が得られた(回収率66.0%)。
結果と考察
男子校や専門高校も含め,看護系を希望する生徒が「ほとんどいない」という回答は14.2%に過ぎなかった。それらを除く1,134校からの回答を以下の分析対象とした。
1.尺度化
不適応の原因(13項目),看護系を勧める理由(23項目),生徒が抱く看護のイメージ(23項目),教員が考える看護系の適性(40項目)」について主因子法,プロマックス回転で因子分析を行い,14尺度に項目をまとめた。結果の概要をTable.1に示す。左から因子名,項目数,α信頼性係数である。因子間相関は.13~.62であった。
2.回答者の要因
回答者のプロフィール(性別,年齢)が結果に影響するか否かを調べた。回答者属性は全体で男性818名(79%),女性223名(21%),30代以下144名(13%),40代(35%),50代以上(52%)であった。14の尺度に対して行った2元配置の分散分析結果概要をTable.2に示す。研究目的に鑑みると,回答者の属性は誤差要因なので,以後,除去して分析を試みることとした。左から尺度名,性別の効果,年齢の効果(有意に値が大きかった属性)を示す。なお,交互作用は見られなかった。
3.進学実績の効果
調査対象校は該当する質問項目による回答から「国公立志向の進学校」~「非進学校」の5カテゴリーに分類された。「進路多様校」が45%,それ以外は6~18%であった。
看護志望者は「理系」「文系」のいずれで学ぶべきかという設問には,全体の50%が「理系」,42%が「どちらとも言えない」と回答した。男性回答者では進学実績によって有意な差(χ2[4]=25.3,「国公立志向」が「理系」72%,それ以外が33~59%)が見られたが,女性回答者では違いがなかった(29~55%)。14の尺度については,「不適応の原因」のうち「理解力」のみ進学実績に乏しい高校がより「心配」という結果であった。
全体に回答者個人の要因で結果が影響を受けた。
付記
本研究は,東北大学高等教育開発推進センター(当時)倫理委員会の承認を受けた。また,科学研究費補助金(課題番号 22390405)の補助を受けた。計算は京都大学学術情報メディアセンターが提供するSASを利用した。
1992年に制定された通称「人材確保法」をきっかけに,看護専門職業人の養成が急速に四大化している。必然的に看護系志望者の進路選択は大学入試の文脈に依存する状況となっている。金澤他(2011)は看護系大学の入試科目が多様化している状況を示した。倉元他(2011),倉元他(2012)では,2,000名を超える看護系大学と専門学校の学生を対象とした調査から,設置者と学校種によって高校時代の履修履歴が多様であること,受験の理由によって入学後の適応度に違いが見られることを示した。以上の研究結果を受け,本研究では,送り出し側の高校進路指導教員に質問紙調査を行い,その意識を探ることとする。
方法
特別支援学校等を除く全国5,028の高等学校,中等教育学校の中から無作為に抽出された2,000校を調査対象とした。2014年1月に8ページから成る調査票を送付し,郵送方式で回収した。
1,319校から回答が得られた(回収率66.0%)。
結果と考察
男子校や専門高校も含め,看護系を希望する生徒が「ほとんどいない」という回答は14.2%に過ぎなかった。それらを除く1,134校からの回答を以下の分析対象とした。
1.尺度化
不適応の原因(13項目),看護系を勧める理由(23項目),生徒が抱く看護のイメージ(23項目),教員が考える看護系の適性(40項目)」について主因子法,プロマックス回転で因子分析を行い,14尺度に項目をまとめた。結果の概要をTable.1に示す。左から因子名,項目数,α信頼性係数である。因子間相関は.13~.62であった。
2.回答者の要因
回答者のプロフィール(性別,年齢)が結果に影響するか否かを調べた。回答者属性は全体で男性818名(79%),女性223名(21%),30代以下144名(13%),40代(35%),50代以上(52%)であった。14の尺度に対して行った2元配置の分散分析結果概要をTable.2に示す。研究目的に鑑みると,回答者の属性は誤差要因なので,以後,除去して分析を試みることとした。左から尺度名,性別の効果,年齢の効果(有意に値が大きかった属性)を示す。なお,交互作用は見られなかった。
3.進学実績の効果
調査対象校は該当する質問項目による回答から「国公立志向の進学校」~「非進学校」の5カテゴリーに分類された。「進路多様校」が45%,それ以外は6~18%であった。
看護志望者は「理系」「文系」のいずれで学ぶべきかという設問には,全体の50%が「理系」,42%が「どちらとも言えない」と回答した。男性回答者では進学実績によって有意な差(χ2[4]=25.3,「国公立志向」が「理系」72%,それ以外が33~59%)が見られたが,女性回答者では違いがなかった(29~55%)。14の尺度については,「不適応の原因」のうち「理解力」のみ進学実績に乏しい高校がより「心配」という結果であった。
全体に回答者個人の要因で結果が影響を受けた。
付記
本研究は,東北大学高等教育開発推進センター(当時)倫理委員会の承認を受けた。また,科学研究費補助金(課題番号 22390405)の補助を受けた。計算は京都大学学術情報メディアセンターが提供するSASを利用した。