The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表

ポスター発表 PF

Thu. Aug 27, 2015 4:00 PM - 6:00 PM メインホールA (2階)

[PF073] 見通し力尺度作成の試み(3)

―AQ下位尺度が見通し力に及ぼす影響―

鈴木美樹江1, 肥田幸子2, 堀篤実3 (1.金城学院大学, 2.愛知東邦大学, 3.愛知東邦大学)

Keywords:見通し力尺度, 自閉性指標(AQ), 影響

目 的
自閉症スペクトラム傾向(以下 ASD)を持つ学生は見通しを持つ力が不足していることにより,大学生活やその後の就労においても不適応問題が生じる可能性の高さが指摘されている(米田,2013)。しかしながら,見通し力に特化した尺度は開発されていない現状にある。一連研究(1)(2)において,自閉症スペクトラム傾向の大学生の見通し力の弱さに着目して作成を試み,信頼性について検証を行ってきた。本研究では,自閉症スペクトラム指標(以下AQ)の「コミュニケーション」「想像力」「注意の切り替え」が,見通し力尺度によって測定される「時間的予測力」,「場の理解力」,「感情推察力」に及ぼす影響について調査することで,構成概念妥当性について検証を行う。
方 法
調査時期と対象:2014年10月に私立大学172名(男子92名,女子73名,性別未記入7名)を調査対象とした。
調査内容:一連研究(1)の因子分析結果をもとに抽出された見通し力尺度の下位尺度である時間的予測力8項目,場の理解力6項目,感情推察力7項目,計21項目を用いた。回答は「そうである」~「そうではない」(4点-1点)の4件法とした。妥当性を検証するために,AQ(Baron-Cohen et al.2001,若林ら2004)のなかでもとくに見通し力と関連があると考えられる下位尺度(コミュニケーション10項目,想像力10項目,注意の切り替え10項目)を用いた。「そうである」~「そうではない」(1点-4点)の4件法で求めた。
結 果
見通し力尺度とAQ尺度のコミュニケーション,想像力,注意の切り替えとの相関について算出した(Table1)。その結果,見通し力尺度とAQ尺度(コミュニケーション・想像力・注意の切り替え)において,概ね有意な負の相関が見られた。
続いて,見通し力に及ぼすAQの影響について検証を行うために,見通し力尺度を基準変数,AQ下位尺度を説明変数とする重回帰分析を実施した(Table2)。その結果,時間的予測力と場の理解力においては,コミュニケーションと注意の切り替えが有意な負の影響力を示していた。感情推察力においては,コミュニケーションと想像力が有意な負の影響力を示していた。見通し力においては,コミュニケーション,想像力,注意の切り替えの全尺度が負の影響力を示している結果となった。
考 察
本結果より,AQ(コミュニケーション・想像力・注意の切り替え)は見通し力に影響を与えていることが明らかとなった。すなわちASD傾向を持つ学生ほど見通し力が弱いことが示唆され,見通し力尺度の構成概念妥当性が概ね支持されたと考えられる。今後は,見通し力尺度とASD傾向学生の不適応状態,及び就業との関連をもとに,予測関連妥当性についても検証していく必要がある。
本研究はJSPS科学研究費(基盤研究C, 25381147)の助成を受けたものです。