[PH016] 社会人基礎力に影響する大学生の活動経験
学業成績,内定の有無および学年差に注目して
Keywords:社会人基礎力, 大学生
【問題と目的】
近年,大学生の職業的・社会的自立に向けて必要な力を明確化し,高等教育段階から育成することが求められている(中央教育審議会,2011)。
大学生に必要な社会的資質の明確化として,経済産業省(2006)は,「社会人基礎力」を提唱している。この概念をもとに,ラーニングアウトカムの視点から研究が蓄積されつつある(筑山ら,2008;梶原,2011; 深津,2012;太幡,2012ほか)。しかし先行研究を概観すると,様々な状況下の大学生の属性を考慮しているものが少ないことが分かる。
たとえば,北島ら(2011)は社会人基礎力の尺度を作成した上で学年差の検討をしており,4年生が1年生よりも総合得点で有意差が見られたと述べている。また松本・森山(2012)は,就職活動に直面する時期において自分と向き合うことで,社会人基礎力が職業レディネスとなることを推察し,学年と時期に影響を受けることを示唆している。以上のことから,社会人基礎力には学年差が見られ,特に就職活動期の前後において影響に差が見られる可能性が考えられる。
また北島ら(2013)は,大学4年生における社会人基礎力の伸長には自己調整学習方略の「モニタリング方略」が効果的であったと述べる。個人のモニタリング方略を学校教育段階で補ってきたものとしては授業の成績が考えられ,学業に専念してきた学生ほど,その評価をもとに自己評価を形成・維持してきた可能性が考えられる。そのため本研究では,学力重視の大学において,成績評価の指標から社会人基礎力への影響を検討していくこととし,これは意義あることだと考える。
よって本研究では,大学生が特に時期的に影響を受けると考えられる,就職活動期前後の活動経験の対外的評価が,社会人基礎力にどのように影響を及ぼすのかについて,学年別に検討する事を目的とする。
【方 法】
調査対象 私立A大学(偏差値60以上),大学3,4年生219名(男子118名,女子101名)。
調査時期と手続き 2013年7月上旬~8月上旬
使用尺度 1)北島・細田・星(2011)の「社会人基礎力尺度」36項目に加えて,本研究者と心理学を専攻する大学教員および大学院生3名により検討した6項目を含めた42項目を用いた。評定は,「6. 非常にあてはまる」~「1. 全くあてはまらない」の6件法である。
2)①高校時代の成績,②大学時代の成績(GPA),③就職活動での内定の有無,④自己評価の誇大性(中山・中谷,2006)を聞く項目を用いた。
【結果と考察】
まず,社会人基礎力本研究における因子分析の結果,「情報理解発信力」「受容的態度」「主体性」「論理的思考力」「創造力」「規律性」の6因子に分かれた。この6因子の総合得点を「社会人基礎力」として用いた。
続いて,大学生の活動体験が社会人基礎力に与える影響を学年別に調べるために重回帰分析をおこなったところ,大学3年生の「高校時代の成績」,「大学時代の成績」,および「自己評価誇大性」,また大学4年生の「内定」および「自己評価誇大性」の正の標準偏回帰係数が有意であった(Table 1)。これらの結果を概観すると,大学3年生は就職活動を本格的に経験している者が少ないため,過去の学業成績から自己評価の形成・維持をし,社会人基礎力を自己評価している可能性が示唆される。一方で,大学4年生は就職活動を本格的に経験している者が時期的に多いため,過去の学業成績ではなく,就職活動の結果としての内定の有無から自己評価の形成・維持をし,社会人基礎力を自己評価している可能性が示唆される。
近年,大学生の職業的・社会的自立に向けて必要な力を明確化し,高等教育段階から育成することが求められている(中央教育審議会,2011)。
大学生に必要な社会的資質の明確化として,経済産業省(2006)は,「社会人基礎力」を提唱している。この概念をもとに,ラーニングアウトカムの視点から研究が蓄積されつつある(筑山ら,2008;梶原,2011; 深津,2012;太幡,2012ほか)。しかし先行研究を概観すると,様々な状況下の大学生の属性を考慮しているものが少ないことが分かる。
たとえば,北島ら(2011)は社会人基礎力の尺度を作成した上で学年差の検討をしており,4年生が1年生よりも総合得点で有意差が見られたと述べている。また松本・森山(2012)は,就職活動に直面する時期において自分と向き合うことで,社会人基礎力が職業レディネスとなることを推察し,学年と時期に影響を受けることを示唆している。以上のことから,社会人基礎力には学年差が見られ,特に就職活動期の前後において影響に差が見られる可能性が考えられる。
また北島ら(2013)は,大学4年生における社会人基礎力の伸長には自己調整学習方略の「モニタリング方略」が効果的であったと述べる。個人のモニタリング方略を学校教育段階で補ってきたものとしては授業の成績が考えられ,学業に専念してきた学生ほど,その評価をもとに自己評価を形成・維持してきた可能性が考えられる。そのため本研究では,学力重視の大学において,成績評価の指標から社会人基礎力への影響を検討していくこととし,これは意義あることだと考える。
よって本研究では,大学生が特に時期的に影響を受けると考えられる,就職活動期前後の活動経験の対外的評価が,社会人基礎力にどのように影響を及ぼすのかについて,学年別に検討する事を目的とする。
【方 法】
調査対象 私立A大学(偏差値60以上),大学3,4年生219名(男子118名,女子101名)。
調査時期と手続き 2013年7月上旬~8月上旬
使用尺度 1)北島・細田・星(2011)の「社会人基礎力尺度」36項目に加えて,本研究者と心理学を専攻する大学教員および大学院生3名により検討した6項目を含めた42項目を用いた。評定は,「6. 非常にあてはまる」~「1. 全くあてはまらない」の6件法である。
2)①高校時代の成績,②大学時代の成績(GPA),③就職活動での内定の有無,④自己評価の誇大性(中山・中谷,2006)を聞く項目を用いた。
【結果と考察】
まず,社会人基礎力本研究における因子分析の結果,「情報理解発信力」「受容的態度」「主体性」「論理的思考力」「創造力」「規律性」の6因子に分かれた。この6因子の総合得点を「社会人基礎力」として用いた。
続いて,大学生の活動体験が社会人基礎力に与える影響を学年別に調べるために重回帰分析をおこなったところ,大学3年生の「高校時代の成績」,「大学時代の成績」,および「自己評価誇大性」,また大学4年生の「内定」および「自己評価誇大性」の正の標準偏回帰係数が有意であった(Table 1)。これらの結果を概観すると,大学3年生は就職活動を本格的に経験している者が少ないため,過去の学業成績から自己評価の形成・維持をし,社会人基礎力を自己評価している可能性が示唆される。一方で,大学4年生は就職活動を本格的に経験している者が時期的に多いため,過去の学業成績ではなく,就職活動の結果としての内定の有無から自己評価の形成・維持をし,社会人基礎力を自己評価している可能性が示唆される。