日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PH

2015年8月28日(金) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PH053] 幼児期の唾液中α-アミラーゼ活性に関する基礎研究Ⅳ

3歳・4歳・5歳の縦断データによる検討

西元直美1, 山本正顕2 (1.関西福祉科学大学, 2.武庫川女子大学子ども発達科学研究センター)

キーワード:唾液中α-アミラーゼ活性, 幼児, 縦断研究

【目 的】
本研究は幼児の唾液中のα-アミラーゼ(唾液アミラーゼ)活性に関する基礎データの発達的検討を目的とする一連の研究の一部である。唾液アミラーゼ活性の測定は,簡便な唾液採取により可能であり,幼児にも負担が少ない。そこで,幼稚園などの集団場面において幼児のストレス評価の指標としての利用が期待できる。これまでの報告(西元・山本, 2013;山本・西元, 2013;西元・山本2014)では,幼稚園登園直後の唾液アミラーゼ活性と性別および気質との関連,きょうだい順位との関連,経年パターン(2回の唾液アミラーゼ測定の結果)と気質との関連について検討してきた。今回の報告では,3歳児,4歳児,5歳児の3年分の縦断データ(うち5歳児については2日間連続のデータ)を用いて発達的変化について検討する。
【方 法】
対象:大阪府内の幼稚園の2014年度5歳児クラス園児(男児68名,女児42名;うち2012年度入園児(男児64名,女児35名),2013年度入園児(男児4名,女児7名))。
手続き:園児の登園後(9~10時頃)と降園前(13~14時頃)に酵素分析装置(唾液アミラーゼモニター:ニプロ(株))を用いて,唾液中のα-アミラーゼを測定した(第1回(3歳児クラス):2013年3月上旬実施,第2回(4歳児クラス):2014年2月下旬実施,第3回(5歳児クラス):2015年3月上旬に2回実施)。また,園児の養育者に対して気質質問紙(CBQ Short Form)(沼田, 2006)への回答を依頼した(2013年2月実施)。
【結 果】
唾液アミラーゼ活性の基礎統計量をTable 1に示す。
唾液アミラーゼ活性の高群低群 唾液アミラーゼ活性について,30kIU/L未満を低群,61kIU/L以上を高群とした。基礎統計量をTable 2に示す。3~5歳時の唾液アミラーゼ活性値における高群低群の分布についてχ2検定を行ったところ,3歳時,5歳時では有意差がみられた(χ2(1)=4.57, P< .05;χ2(1)=5.07, P< .05;χ2(1)=9.60, P< .01)が,4歳時では有意な差はみられなかった。
唾液アミラーゼ活性の測定年次間相関 測定年次間の相関係数を算出したところ,3歳時と4歳時,5歳時の1日目と2日目との間に有意な正の相関(r=.28, p< .01)がみられた。4歳時と5歳時(1日目)との間には負の相関(r= .28, p< .01)がみられた(Table 3)。
【考 察】
4歳では他の年齢に比べて高群の比率が高く,また4歳と5歳の間に負の相関が見られたことから,幼児期において4歳頃がストレス喚起において特徴的な年齢であることを示している。このデータは幼児期の環境認知機能における質的変化を示唆するものと考えられる。

本研究は平成24~27年度文科省科研費(課題番号24730552)の助成を受けて行われた。