[PB34] 学習時の誤答の視覚的フィードバックが正答の学習に及ぼす影響
漢字熟語の読み課題を用いて
Keywords:フィードバック, 誤記憶の修正, 漢字
問題と目的
手がかりとなる問題文に対し特定の単語を再生するような知識学習において,学習者が誤った記憶(誤答)をもっていたとき,それが正しい回答であるという確信が高いほど,正答のフィードバックが示されることにより,その記憶が修正されやすいことが知られている。
この現象は,誤答への高い確信がその領域への親近性の高さを反映しており,正答の符号化も容易になると説明されることがある。あるいは,確信が高かったので自らの誤りに驚き,正答に注意が向けられ符号化が容易になるとも説明される。
これに対し,本実験では,テスト効果の観点での説明を検討した。すなわち,高確信の誤答には注意が払われるので,正答呈示の際,複数の項目から正答を自己選択する状況になる。他方,低確信の誤答は,学習者にとって半ば思いつきのような回答であり,注意が払われず,正答呈示の際は,正答のみ知るような状況になる。だとすれば,誤答への注意を促す学習手続きを用いれば,低確信領域の修正が改善されるはずである。そこで,手がかりや誤答と正答とに意味的関連を想定し難い,つまり領域への親近性では修正を説明し難い,漢字の読み課題を用い,この仮説の検討を行った。
方 法
参加者 大学生28名(男2,女26)
実験計画 誤答FBの有無×確信度(low,midium,high)の2要因参加者内。
課題 一般的な読み方が2つ以上存在しない漢字二字熟語140個を無作為に二分し,それぞれを各条件に割り当てた。
手続き PCを用いた個別実験。第1テストセッションでは,漢字,回答入力欄,回答呈示欄,正答呈示欄を上から並べ,参加者には読み方のかな入力を求めた。入力確定後,回答を入力欄から消去し,-3(絶対に誤り)から3(絶対正しい)までの7段階で確信度を入力させた。確信度確定後,FBなし条件では,1.5s後に,正答欄に正答を3s呈示した。FBあり条件では,確信度入力中も回答呈示欄に参加者の回答を再呈示し,確信度確定後も,1s再呈示を続け,黙読するよう教示した。回答欄の回答消去後は,0.5s後に正答欄に正答を3s呈示した。再テストセッションでは,漢字と回答入力欄を上下に並べ,読み方のかな入力を求めた。なお,第1テスト開始前に,再テストの実施を予告し正答を覚えるよう教示した。
結果と考察
条件による確信度と誤答の修正率の関連の違いを見るため,確信度-1以下をlow,確信度0をmedium,確信度1以上をhighとし,第1テストで誤答した問題について,確信度と再テストの正答率の順序連関係数の平均を条件ごとに算出した。その結果,FBなし条件では有意であったが(γ=.23±.007,p<.01),FBあり条件では有意傾向であった(γ=.15±.007,p<.10)。しかしながら,参加者内のカテゴリーごとの正答率の条件間の差のγ係数について,両側t検定を行ったところ,有意ではなかった(MD=.09±.12, t(27)=.71, p>.10, dD=.13)。この結果は,仮説の予測に従うものであるが,統計的な有意性は傾向に留まる。今後は,参加者を追加し7水準での分析も行うことを視野に含める。
手がかりとなる問題文に対し特定の単語を再生するような知識学習において,学習者が誤った記憶(誤答)をもっていたとき,それが正しい回答であるという確信が高いほど,正答のフィードバックが示されることにより,その記憶が修正されやすいことが知られている。
この現象は,誤答への高い確信がその領域への親近性の高さを反映しており,正答の符号化も容易になると説明されることがある。あるいは,確信が高かったので自らの誤りに驚き,正答に注意が向けられ符号化が容易になるとも説明される。
これに対し,本実験では,テスト効果の観点での説明を検討した。すなわち,高確信の誤答には注意が払われるので,正答呈示の際,複数の項目から正答を自己選択する状況になる。他方,低確信の誤答は,学習者にとって半ば思いつきのような回答であり,注意が払われず,正答呈示の際は,正答のみ知るような状況になる。だとすれば,誤答への注意を促す学習手続きを用いれば,低確信領域の修正が改善されるはずである。そこで,手がかりや誤答と正答とに意味的関連を想定し難い,つまり領域への親近性では修正を説明し難い,漢字の読み課題を用い,この仮説の検討を行った。
方 法
参加者 大学生28名(男2,女26)
実験計画 誤答FBの有無×確信度(low,midium,high)の2要因参加者内。
課題 一般的な読み方が2つ以上存在しない漢字二字熟語140個を無作為に二分し,それぞれを各条件に割り当てた。
手続き PCを用いた個別実験。第1テストセッションでは,漢字,回答入力欄,回答呈示欄,正答呈示欄を上から並べ,参加者には読み方のかな入力を求めた。入力確定後,回答を入力欄から消去し,-3(絶対に誤り)から3(絶対正しい)までの7段階で確信度を入力させた。確信度確定後,FBなし条件では,1.5s後に,正答欄に正答を3s呈示した。FBあり条件では,確信度入力中も回答呈示欄に参加者の回答を再呈示し,確信度確定後も,1s再呈示を続け,黙読するよう教示した。回答欄の回答消去後は,0.5s後に正答欄に正答を3s呈示した。再テストセッションでは,漢字と回答入力欄を上下に並べ,読み方のかな入力を求めた。なお,第1テスト開始前に,再テストの実施を予告し正答を覚えるよう教示した。
結果と考察
条件による確信度と誤答の修正率の関連の違いを見るため,確信度-1以下をlow,確信度0をmedium,確信度1以上をhighとし,第1テストで誤答した問題について,確信度と再テストの正答率の順序連関係数の平均を条件ごとに算出した。その結果,FBなし条件では有意であったが(γ=.23±.007,p<.01),FBあり条件では有意傾向であった(γ=.15±.007,p<.10)。しかしながら,参加者内のカテゴリーごとの正答率の条件間の差のγ係数について,両側t検定を行ったところ,有意ではなかった(MD=.09±.12, t(27)=.71, p>.10, dD=.13)。この結果は,仮説の予測に従うものであるが,統計的な有意性は傾向に留まる。今後は,参加者を追加し7水準での分析も行うことを視野に含める。