The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB39] 講義型授業開始時における「問い」の提示について

松島るみ1, 尾崎仁美2 (1.京都ノートルダム女子大学, 2.京都ノートルダム女子大学)

Keywords:大学生, 学習活動

問題と目的
 これから学習する内容に関する知識を事前に提示することの効果については,Ausubel(1960)の先行オーガナイザー研究において検討されてきた。先行オーガナイザーが予め提示されることにより,既有知識との関連づけの仕方が方向づけられ,新奇な情報の理解や獲得が促進されるという考え方である(藤田,2005)。また,Titsworth & Kiewra(2004)は大学生を対象に,本学習の内容に関する情報を事前に与えておくことで,本学習では情報同士の関連に関するメモ方略の使用が促進されることを明らかにしている。本研究では,先行研究の知見に基づき,授業開始時に授業内容に関連した「問い」を投げかけ,授業後の振り返り時に記載を求めるという方法を行った。そして,受講生に,問いが提示された場合と提示されなかった場合で,授業中の学習活動に差異がみられたかどうか,その印象や評価を尋ねた。
 なお,授業開始時に問いを提示することの効果を実証的に明らかにするため,授業期間にベースライン期,介入期を設け,それぞれ授業時の学習方略,授業への興味,理解度,振り返りの内容等を尋ねたが,この結果は別稿で発表することとし,本研究では,介入期後に行った調査結果についてのみ報告する。
方   法
調査対象:2015年度に教育心理学の講義を受講していた80名の大学生のうち,63名。
手続き:ベースライン期最終回の次の週に,「授業前に問いが提示されることで,問いが提示されなかった本日の授業と比べて何か違いはありましたか」と尋ね,違いの程度を4件法で求めるとともに,その選択肢を選んだ理由を複数記載するよう教示した。
結果と考察
 問いが提示された時と提示されなかった時の違いについて,大きな違いがあったと回答した者が12名(19.0%),やや違いがあったと回答した者が43名(68.3%),あまり違いがなかったと回答した者が6名(9.5%),全く違いがなかったと回答した者が2名(3.2%)であった。
 このうち,違いがあったと回答した55名より,肯定的な理由が103,中立または否定的な理由が24得られた。肯定的な理由を筆者2名で8カテゴリーに分類した結果(Table 1),「2.深く考える/自分の意見がまとまる」の回答が最も多く,具体的には,「独自の意見を確立することにつながる」「自分で考えることに自信が持てるようになる」等の回答が得られた。次に,「8.授業に集中/授業を積極的に聞くことが出来る」「7.ポイントがつかめる」の回答が多くみられ,具体的には,「授業の主旨や疑問点を探すことで,さらに授業を主体的に受けることが出来る」「その授業で重要な項目がわかり,ポイントを押さえやすい」等が挙げられた。
 一方,違いがあったと回答した者の否定的な理由には,「問い以外の部分に意識が向きにくい」「問いだけをクリアすれば良いという気持ちになる」等が挙げられた。
 今後,本研究と前述の実証データ結果を合わせて,更に検討・考察を進めたい。