The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

Sat. Oct 8, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PB46] 学級規模と形成的評価の実施が学力の変化に与える影響

小学校第4学年から第6学年の社会科を対象として

0010, 0011 (1.国立教育政策研究所, 2.立命館大学, 3.城西国際大学, 4.上越教育大学大学院, 5.日本大学, 6.山形大学, 7.國學院大學, 8.広島大学, 9.文教大学, 10.国立教育政策研究所, 11.大阪国際大学短期大学部)

Keywords:学級規模, 学力, マルチレベルモデル

問題と目的
 小規模学級ほど児童生徒の学力が高いと言った傾向が一貫して見られているわけではないが,学級規模と学力との関係を児童の学力層別に検討した研究では,小規模学級においては低学力層の児童の学力が高くなる傾向が示されている(Blatchford, et al., 2003)。また,学級規模は児童生徒の学力に直接影響を与えるのではなく,児童生徒の学習行動や教師の指導方法等に影響を及ぼすとともに,これらの相互作用が児童生徒の学力に違いをもたらすためと考えられている(Finn, et al., 2003)。指導方法等の中でも形成的評価は学力に与える影響は大きく(Black & Wiliam, 1998),達成目標と実現状況の両者をフィードバックすることの効果が高いことが明らかとなっている(Schunk & Swartz, 1993)。
 以上のような問題を踏まえ本研究では,長期的な学力の変化に対して,学級規模,形成的評価の実施及びこれらの交互作用が与える影響を検討する。
方   法
対象:山形県内の小学校50校の,平成25年度時点での第4学年の児童1672人。対象教科は社会。
指標:第4学年の年度始実施の標準学力検査(NRT)結果を過去の学力,第6学年の年度始実施の結果を後続の学力の指標とした。このデータは連結可能匿名化された状態で取得した[以上,児童レベル]。「単元始における達成目標の提示」と「単元末テスト返却時における達成目標に対する実現状況の個別フィードバックの実施」についての第4,5学年時の学級担任調査の結果を形成的評価実施状況の指標とした。教職経験年数も同時に取得した[以上,学級レベル]。学級規模等は山形県教育庁提供の学級編制表を用いた[以上,学校レベル]。
分析:2時点間の検査結果(学力偏差値)の関係を示す切片と傾き[児童レベル]に,第4,5学年時の平均学級規模(24で中心化),形成的評価実施状況(両学年時ともに「いつも,または,ほとんどで行った」場合に1のダミー),学級規模と形成的評価実施状況の交互作用,担任の教職経験年数ダミー[学級レベル],第4学年の年度始実施検査の学力偏差値の学校平均,両学年時の学年学級数(1で中心化)[学校レベル]が与える影響を,3レベルのマルチレベルモデルによって検討した。
結   果
 モデルの推定結果はTable 1の通りであった。この結果のうち,学級規模,形成的評価の実施状況,学級規模と形成的評価の実施状況との交互作用(いずれも学級レベル)について検討したところ,学級規模と形成的評価の実施状況との交互作用が児童レベルの傾きに対して正の影響を与えることが示された。
考   察
 上記の結果から,学級規模の大小,あるいは形成的評価の実施の有無の主効果が,過去と後続の学力の関係に影響を与えていないことが示された。しかし,学級規模と形成的評価の実施状況の交互作用が過去と後続の学力との関係の傾きに正の影響を与えていた。
 このモデルでは学級規模を山形県小学校の単式学級の平均学級規模である24で中心化していることを踏まえると,学級が小規模(負)で形成的評価が実施された場合(正),この積は負となることから,小規模学級で形成的評価が実施された場合には過去と後続の学力の関係の傾きが緩やかになると言える。したがって,小規模学級で形成的評価が実施された場合,過去の学力が低かった児童の学力の底上げが見られることが示唆された。
※本研究の一部はJSPS科研費(基盤研究B)25285189の助成を受けた。