日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-64)

ポスター発表 PB(01-64)

2016年10月8日(土) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PB49] 現代の若者の価値観と友人関係

南学 (三重大学)

キーワード:幸福観, 友人関係

問   題
 現代の若者にとって,彼らをとりまく日本の状況は決して恵まれたものとはいえず,今後についても明るい未来を描きにくいと考えられる。にもかかわらず,現代の若者の生活満足度が高いことがとくに社会学を中心に大きな関心となっている(古市,2011)。
 古市(2011)は,若者は,将来に希望がもてないがゆえに,現状に満足しているという逆説的な幸福感の仮説を提唱している。この点に関して,南(2014)は,大学生の幸福に対する価値観と幸福度の関係について検証し,自身の成長を求め,将来に無関心な「現状満足」群が必ずしも「主観的幸福感」が高いとはいえないことを示した。この結果から,古市(2011)の仮説は支持されないことが示された。
 ところで,古市(2011)は,十分に明示的とはいえないが,若者が,周囲の友人と密接な関係を維持することを通して満足感を得ているという仮説も示している。この仮説に関しては,浅野(2015)が実証的に検討はしているものの,被調査者全体での関連を検討しているのみで,価値観の個人差に関して直接的に検討をおこなっているわけではない。そこで,本研究では,大学生の幸福に対する価値観と友人関係について検討をおこなう。
 幸福に対する価値観として,浅野・五十嵐・塚本(2014)は,自己の心地よさを追求する動機づけと自分自身を最大限に活かすことを追求する動機づけの観点から日本版HEMA尺度を作成しており,本研究では,これを用いることとする。また,友人関係に関しては,齋藤・藤井(2009)の「内面的関係と表面的関係」をとらえる友人関係尺度と,内田・遠藤・柴内(2012)の人間関係希求型質問,就職に関する地元志向を尋ねる質問(平尾・重松,2006)を用いて測定する。
方   法
調査参加者 欠損値を除いた大学生233名。
質問紙の構成 日本版HEMA尺度(浅野・五十嵐・塚本,2014),「内面的関係と表面的関係」をとらえる友人関係尺度(齋藤・藤井,2009),人間関係希求型質問(内田ら,2012),就職に関する地元志向を尋ねる質問(平尾・重松,2006)。
手続き 授業時に質問紙を配布し,回収した。
結果・考察
 各尺度間の相関を表1に示した。「主観的幸福感」は,「喜び追求」と正の相関を示し,「内面的友人関係」は「幸福追求」「喜び追求」と正の相関を示した。当日は,他の分析を含め,仮説を検討する。