[PB69] 新任教員が気になる子どもについて抱く悩み
新任以外の教員との比較から
キーワード:特別支援教育, 発達障害児, 気になる子ども
問題と目的
文部科学省 (2012) の調査によれば,小・中学校の通常の学級に在籍する発達障害児や似たような特徴を示す「気になる子ども」の割合は6.5%である。したがって,通常の学級の担任であっても,特別支援教育に関する知識や教育技術は不可欠である。
しかし,現行の教員免許法では特別支援教育に関する授業科目は必修ではなく,「幼児,児童及び生徒の心身の発達と学習過程」に関する科目の中で,障害について触れるにとどまっている。したがって,通常の学級の担任になった新任教員は,特別支援教育に関する知識や技術を十分に習得していない可能性が考えられる。
そこで本研究では,初任者研修における特別支援教育の講座で,新任の教員が気になる子ども (発達障害児を含む) についてどのような悩みを抱いているのかを調査する。また,初任者以外を対象とした研修においても同じ調査を行い,その比較によって新任教員が特に抱きやすい悩みを明らかにする。
方 法
対象者 A県内の教員242名。内訳は,新任教員34名,それ以外の教員188名,勤務歴等無記入が20名であった。
手続き 質問紙調査を実施した。2013年8月~12月にかけて,A県内で行われた教員向けの特別支援教育に関する様々な研修会にて調査用紙を配布し,その場で記入を求めた。
調査内容 ①フェイス項目 (回答者の属性) 12項目,②気になる子ども (発達障害児を含む) を担任したときの悩み 23項目 (ア.行動問題7項目,イ.子どもとの関係性6項目,ウ.クラスの他児との関係に関する7項目,エ.忙しさ・時間のなさ3項目),③気になる子どもを担任したときに求める支援 13項目を尋ねた。
①については選択肢式,②および③については5件法 (よくあてはまる:5点~全くあてはまらない:1点) で得点の記入を求めた。
倫理的配慮 この調査への協力は任意であること,協力しないことによる不利益は生じないこと,途中で回答をやめることも自由であること,の3点を調査の依頼文に明示し,口頭でも説明した。
結 果
本研究では,気になる子どもを担任したときの悩みについて検討する。悩みの調査のア~エのカテゴリーごとに,各項目を従属変数とし,新任かどうかを独立変数とする多変量分散分析を実施した。
アについては,Λ=912, F(7,205)=2.84(p<.01) で有意な多変量主効果が得られた。個別変量については,項目1 (子どもがパニックを起こしたときの対応),項目2 (子どもが怒り出したときの対応),項目3 (子どもが分けもなく怒ったり泣いたりするときの対応) で主効果が有意となり,新任者の方が得点が低いという結果が得られた。
イについては,Λ=.909, F(6,206)=2.22(p<.05) で多変量主効果が有意となり,個別変量では項目1 (子どもが何を考えているのかよく分からない),項目4 (自分の言っていることが伝わらない) の2項目で新任者の方が悩みが高かった。ウについては,0.1%水準で多変量主効果が有意となり, 全ての項目で新任者とそれ以外で得点の差が有意となった。エについては,1%水準で多変量主効果が有意となり,1項目で新任者の方が悩みの得点が高かった。
考 察
新任教員は,パニックなどの行動問題に関する悩みは低く,子どもとの関係づくりや他児との関係性で悩んでいることが明らかとなった。今後は,初任者研修において気になる子ども (発達障害児を含む) との関係づくりに関する内容を多く取り入れていく必要があるだろう。
文部科学省 (2012) の調査によれば,小・中学校の通常の学級に在籍する発達障害児や似たような特徴を示す「気になる子ども」の割合は6.5%である。したがって,通常の学級の担任であっても,特別支援教育に関する知識や教育技術は不可欠である。
しかし,現行の教員免許法では特別支援教育に関する授業科目は必修ではなく,「幼児,児童及び生徒の心身の発達と学習過程」に関する科目の中で,障害について触れるにとどまっている。したがって,通常の学級の担任になった新任教員は,特別支援教育に関する知識や技術を十分に習得していない可能性が考えられる。
そこで本研究では,初任者研修における特別支援教育の講座で,新任の教員が気になる子ども (発達障害児を含む) についてどのような悩みを抱いているのかを調査する。また,初任者以外を対象とした研修においても同じ調査を行い,その比較によって新任教員が特に抱きやすい悩みを明らかにする。
方 法
対象者 A県内の教員242名。内訳は,新任教員34名,それ以外の教員188名,勤務歴等無記入が20名であった。
手続き 質問紙調査を実施した。2013年8月~12月にかけて,A県内で行われた教員向けの特別支援教育に関する様々な研修会にて調査用紙を配布し,その場で記入を求めた。
調査内容 ①フェイス項目 (回答者の属性) 12項目,②気になる子ども (発達障害児を含む) を担任したときの悩み 23項目 (ア.行動問題7項目,イ.子どもとの関係性6項目,ウ.クラスの他児との関係に関する7項目,エ.忙しさ・時間のなさ3項目),③気になる子どもを担任したときに求める支援 13項目を尋ねた。
①については選択肢式,②および③については5件法 (よくあてはまる:5点~全くあてはまらない:1点) で得点の記入を求めた。
倫理的配慮 この調査への協力は任意であること,協力しないことによる不利益は生じないこと,途中で回答をやめることも自由であること,の3点を調査の依頼文に明示し,口頭でも説明した。
結 果
本研究では,気になる子どもを担任したときの悩みについて検討する。悩みの調査のア~エのカテゴリーごとに,各項目を従属変数とし,新任かどうかを独立変数とする多変量分散分析を実施した。
アについては,Λ=912, F(7,205)=2.84(p<.01) で有意な多変量主効果が得られた。個別変量については,項目1 (子どもがパニックを起こしたときの対応),項目2 (子どもが怒り出したときの対応),項目3 (子どもが分けもなく怒ったり泣いたりするときの対応) で主効果が有意となり,新任者の方が得点が低いという結果が得られた。
イについては,Λ=.909, F(6,206)=2.22(p<.05) で多変量主効果が有意となり,個別変量では項目1 (子どもが何を考えているのかよく分からない),項目4 (自分の言っていることが伝わらない) の2項目で新任者の方が悩みが高かった。ウについては,0.1%水準で多変量主効果が有意となり, 全ての項目で新任者とそれ以外で得点の差が有意となった。エについては,1%水準で多変量主効果が有意となり,1項目で新任者の方が悩みの得点が高かった。
考 察
新任教員は,パニックなどの行動問題に関する悩みは低く,子どもとの関係づくりや他児との関係性で悩んでいることが明らかとなった。今後は,初任者研修において気になる子ども (発達障害児を含む) との関係づくりに関する内容を多く取り入れていく必要があるだろう。