[PC19] 協同型授業における仲間との学習経験が児童の学習観に及ぼす影響
キーワード:協同型授業, 学習観, 児童
問 題
学習者の学習観の形成には,教師の授業スタイルが影響を及ぼす(鹿毛ら, 1997等)。そのため,近年,教育現場での実践が盛んな協同学習についても,教師がそうした授業形態を多く取り入れることで,学習者は自ずと仲間との協同に対するポジティブな認識を形成することが考えられる。実際に,長濱ら (2003) は,協同活動を取り入れた授業の実施前後で,協同活動に対するポジティブな認知が上昇することを明らかにしている。しかし,長濱ら (2003) の研究は大学生を対象にした介入実験であるため,実際の学校現場の実態を明らかにしたものではない。そこで本研究では,教師が協同型の授業を多く実施しているクラスの児童,つまり普段の授業で仲間との協同による学習を多く経験している児童ほど,個人学習の志向性が低く,協同学習の志向性が高い学習観を形成していることを予想し,検討する。また,この傾向は,特定の教師の授業スタイルの影響を受けやすい学級担任制の小学校で特に顕著であると考えられることから,本研究では小学校を対象に検討する。
方 法
(1)対象者:宮崎市内の2つの公立小学校における4年生から6年生までの合計24クラスに在籍している児童760名(男子357名,女子403名)。
(2)調査方法:学級担任の教師による一斉調査法。(3)調査内容:①協同型授業の経験;本研究では,「グループになって友達どうしで教え合ったり,話し合ったりする授業」を協同型授業と定義し,こうした授業を担任の教師がどのぐらい多く実施しているかについて6段階で尋ねた。②学習観:Cantwell & Andrews (2002),長濱ら (2009) を参考に,「協同志向」6項目と「個人志向」4項目の合計10項目を作成。5段階評定。
結果と考察
(1)協同型授業のクラス別実施傾向
協同型授業の実施傾向について,学年を独立変数とする1要因分散分析を行ったが有意な差はみられなかった。そのため学年を混みにした合計24クラスにおける各児童の得点の平均値を算出した。ただし,こうして算出された得点は,実際のクラスの特徴と児童の認知の個人差のどちらを反映したものかの区別がつかない。そこで,級内相関係数(ICC)を算出したところ0.109と中程度であった。そのため,クラスの得点差は実際のクラス間の違いをある程度反映した結果であると判断し,これを協同型授業の経験得点とした(表1)。
(2)協同型授業の学習経験が学習観に及ぼす影響
協同型授業の学習経験得点を基に上位30%の7クラス(j,r,t,b,q,a,k)に在籍する児童を経験高群,下位30%の7クラス(x,i,l,v,n,w,e)に在籍する児童を経験低群とした。学習観の下位尺度である「協同志向」と「個人志向」のそれぞれについて2群の平均値をt検定により比較した。その結果,個人志向でのみ有意差がみられ,経験低群が経験高群よりも有意に高かった(表2)。
以上の結果より,授業で協同型の学習を多く経験している児童ほど個人学習への志向性が低いことが明らかになり,仮説は部分的に支持された。一方,協同志向に有意差がみられなかった原因については,協同型授業の経験以外の児童の個人内要因(動機づけ,社会性等)の影響が考えられる。
学習者の学習観の形成には,教師の授業スタイルが影響を及ぼす(鹿毛ら, 1997等)。そのため,近年,教育現場での実践が盛んな協同学習についても,教師がそうした授業形態を多く取り入れることで,学習者は自ずと仲間との協同に対するポジティブな認識を形成することが考えられる。実際に,長濱ら (2003) は,協同活動を取り入れた授業の実施前後で,協同活動に対するポジティブな認知が上昇することを明らかにしている。しかし,長濱ら (2003) の研究は大学生を対象にした介入実験であるため,実際の学校現場の実態を明らかにしたものではない。そこで本研究では,教師が協同型の授業を多く実施しているクラスの児童,つまり普段の授業で仲間との協同による学習を多く経験している児童ほど,個人学習の志向性が低く,協同学習の志向性が高い学習観を形成していることを予想し,検討する。また,この傾向は,特定の教師の授業スタイルの影響を受けやすい学級担任制の小学校で特に顕著であると考えられることから,本研究では小学校を対象に検討する。
方 法
(1)対象者:宮崎市内の2つの公立小学校における4年生から6年生までの合計24クラスに在籍している児童760名(男子357名,女子403名)。
(2)調査方法:学級担任の教師による一斉調査法。(3)調査内容:①協同型授業の経験;本研究では,「グループになって友達どうしで教え合ったり,話し合ったりする授業」を協同型授業と定義し,こうした授業を担任の教師がどのぐらい多く実施しているかについて6段階で尋ねた。②学習観:Cantwell & Andrews (2002),長濱ら (2009) を参考に,「協同志向」6項目と「個人志向」4項目の合計10項目を作成。5段階評定。
結果と考察
(1)協同型授業のクラス別実施傾向
協同型授業の実施傾向について,学年を独立変数とする1要因分散分析を行ったが有意な差はみられなかった。そのため学年を混みにした合計24クラスにおける各児童の得点の平均値を算出した。ただし,こうして算出された得点は,実際のクラスの特徴と児童の認知の個人差のどちらを反映したものかの区別がつかない。そこで,級内相関係数(ICC)を算出したところ0.109と中程度であった。そのため,クラスの得点差は実際のクラス間の違いをある程度反映した結果であると判断し,これを協同型授業の経験得点とした(表1)。
(2)協同型授業の学習経験が学習観に及ぼす影響
協同型授業の学習経験得点を基に上位30%の7クラス(j,r,t,b,q,a,k)に在籍する児童を経験高群,下位30%の7クラス(x,i,l,v,n,w,e)に在籍する児童を経験低群とした。学習観の下位尺度である「協同志向」と「個人志向」のそれぞれについて2群の平均値をt検定により比較した。その結果,個人志向でのみ有意差がみられ,経験低群が経験高群よりも有意に高かった(表2)。
以上の結果より,授業で協同型の学習を多く経験している児童ほど個人学習への志向性が低いことが明らかになり,仮説は部分的に支持された。一方,協同志向に有意差がみられなかった原因については,協同型授業の経験以外の児童の個人内要因(動機づけ,社会性等)の影響が考えられる。