日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PC(65-84)

ポスター発表 PC(65-84)

2016年10月8日(土) 15:30 〜 17:30 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PC76] 教育実習が与える教師効力感への影響

教育実習前後のアンケート調査を通して

相澤雅文1, 増田優子2 (1.京都教育大学, 2.大阪大学大学院)

キーワード:教育実習, 心理尺度, 教師効力感

問題と目的
 教育実習の意義は,教職志望の学生が,教育の実践現場において幼児・児童・生徒や教師などの人びととの直接的接触を通し,実践的能力を集中的に養成し,教師となるための基盤を獲得するところにある。具体的な目的として,・教師としての立場を経験し,教師の仕事や役割,心構えなどについて体系的・総合的に理解する。・教育に関わる専門的知識や技能を適用する実践的能力の基礎を形成する。・教育理論と実践を有機的に結びつけ,両者の深化と拡充を促す。・教育に対する使命感や教育者としての自覚を育み,自己の能力や適性を鑑み,自己研鑽の努力課題を自覚する。などがあげられる。教師としての資質形成には,自己効力感が大きく関係する(増田,2015)。教員養成の分野では「教師効力感(teacher's sense of efficacy or teacher efficacy)」と呼ばれる。Ashton(1985)は「こどもの学習に望ましい変化を与える能力に関する信念」と定義している。本研究では,教育実習が教師効力感に対してどのような影響を及ぼすのかについて示唆を得ることを目的とした。
方   法
対象:教員養成大学の教育実習生に対して,実習前後2回に渡りアンケートを実施した。アンケートには8桁の個人ナンバーを記入してもらい,前後で記入者の同一のみを確認できるようにした。主免実習332名(有効回答311名),副免実習260名(有効回答242名),計592名(有効回答553名,男性233名:女性320名)に実施した。
尺度:春原(2007)の教師効力感尺度を参考として作成した。
結果と考察
 教師師効力感に関する質問項目について,主因子法・Kaiserの正規化を伴うプロマックス回転による因子分析を実施した。因子負荷量が.40未満であった項目を除外し,「教授方法・学級運営」,「人間関係形成」,「職業的自己意識」の3因子が抽出され教師効力感尺度とした。主免実習,副免実習による教師効力感の変化の特徴,性別による特徴,幼稚園,小学校,中学校,高等学校,特別支援学校など校種別による特徴などについて分析を行った。主免実習では実習後に「人間関係形成因子」の平均得点が優位に高まり,副免実習では「教授方法・学級運営因子」,「人間関係形成因子」の平均得点が優位に高まることが示された。性別では,男子は実習後に「人間関係形成因子」の平均得点が優位に高まり,女子は「教授方法・学級運営因子」,「人間関係形成因子」の平均得点が優位に高まることが示された。教育実習は,その前後の比較において,全体的には教師効力感に対してプラス面の影響を与えると考えられた。一方で,教師効力感の低下の傾向を示した実習生に対しての検討を行う必要があるとも考えられた。