[PD36] 潜在保育士復職支援研修会のあり方
研修会参加者に対する個別インタビューから
キーワード:潜在保育士, 復職支援, 研修会
目 的
現在,保育士の資格を持ちながら働いていない「潜在保育士」の多さが問題となっている。本研究は,潜在保育士の復職をうながす復職支援研修会のあり方を検討することを目的とし,潜在保育士復職支援研修会の参加者を対象に,望まれる研修会のあり方についてのインタビューを実施し,感想・意見を拾い上げ,ボトムアップ的に考察することにした。
方 法
平成27年8月に,瀬戸内地方A県の「潜在保育士復職支援事業」の一環として,県内の潜在保育士を対象とする研修会が開催された。前年度にB短期大学卒業生を対象に実施したアンケートに基づき,「子ども理解に基づく保育内容(講義)」「保育に役立つ『集団遊び』(実技)」「牛乳パックを使ったおもちゃ作りと遊び(講義と実技)」「自治体担当者による就職情報説明会」という内容であった。研修会終了後,参加者11名のうち,同意の得られた3名に個別に半構造化インタビューを実施した。協力者の発話内容を逐語化し,語られた内容ごとに区切り,類似した内容ごとに分類した。分類された内容を概念化し,カテゴリー名とした。
結果と考察
5つの上位カテゴリーそれぞれの下位カテゴリーが得られた(表1)。
「集う場・つながる場」の提供 「他の参加者の姿を見て復職への勇気がでた」(III-6)という,参加の感想がある。これは,「復職に二の足を踏んでいる」(I-1)という現状から一歩踏み出すために,研修内容ではなく,他の参加者の存在が有効であったことを示す。これまで協調学習や協同学習についての諸研究において,学習者相互のコミュニケーションやフィードバックが有効とされていることからも,他の参加者の存在が研修会で果たす役割は大きい。集う場,つながる場の提供が重要であり,そうしたニーズが「参加者を集めるための宣伝をしっかりしてほしい」(IV-5)という要求に繋がったのであろう。
「自学の支援・補完」 「プリントや動画など,自習できるツールを提供してほしい」(IV-1)から,自学支援としての研修会の役割が期待されているといえる。また,「自習で習得できる範囲以上の内容がほしい」(IV-4)は,自学を前提として研究会にはその補完を求めているといえる。また,研修会参加により「自分の不足している部分を再認識した」(III-3)から,自学の目標設定に研修会を利用するというニーズもあるといえる。
「最新の情報の提供」 保育士にとって,知識や技能の更新や向上は必須である。一度現場から遠ざかった潜在保育士であれば,復職にあたり「現場から離れて情報がない」(I-5)という不安,「自分が学んだ時代ではなく,今の時代の保育について知りたい」(II-2),「今流行っている手遊びなど最新の技能を提供してほしい」(IV-2)というニーズはなおさら大きいであろう。また,「具体的な施設・事業所の情報提供が欲しい」(IV-3)といった就職情報の提供も求められている。
これらのボトムアップ的に拾い上げた結果については,今後,先行研究にもとづく枠組みを設定し,実証研究を進める必要がある。
(本研究は,「山陽学園短期大学潜在保育士復職支援プロジェクト」の協力を得た。)
現在,保育士の資格を持ちながら働いていない「潜在保育士」の多さが問題となっている。本研究は,潜在保育士の復職をうながす復職支援研修会のあり方を検討することを目的とし,潜在保育士復職支援研修会の参加者を対象に,望まれる研修会のあり方についてのインタビューを実施し,感想・意見を拾い上げ,ボトムアップ的に考察することにした。
方 法
平成27年8月に,瀬戸内地方A県の「潜在保育士復職支援事業」の一環として,県内の潜在保育士を対象とする研修会が開催された。前年度にB短期大学卒業生を対象に実施したアンケートに基づき,「子ども理解に基づく保育内容(講義)」「保育に役立つ『集団遊び』(実技)」「牛乳パックを使ったおもちゃ作りと遊び(講義と実技)」「自治体担当者による就職情報説明会」という内容であった。研修会終了後,参加者11名のうち,同意の得られた3名に個別に半構造化インタビューを実施した。協力者の発話内容を逐語化し,語られた内容ごとに区切り,類似した内容ごとに分類した。分類された内容を概念化し,カテゴリー名とした。
結果と考察
5つの上位カテゴリーそれぞれの下位カテゴリーが得られた(表1)。
「集う場・つながる場」の提供 「他の参加者の姿を見て復職への勇気がでた」(III-6)という,参加の感想がある。これは,「復職に二の足を踏んでいる」(I-1)という現状から一歩踏み出すために,研修内容ではなく,他の参加者の存在が有効であったことを示す。これまで協調学習や協同学習についての諸研究において,学習者相互のコミュニケーションやフィードバックが有効とされていることからも,他の参加者の存在が研修会で果たす役割は大きい。集う場,つながる場の提供が重要であり,そうしたニーズが「参加者を集めるための宣伝をしっかりしてほしい」(IV-5)という要求に繋がったのであろう。
「自学の支援・補完」 「プリントや動画など,自習できるツールを提供してほしい」(IV-1)から,自学支援としての研修会の役割が期待されているといえる。また,「自習で習得できる範囲以上の内容がほしい」(IV-4)は,自学を前提として研究会にはその補完を求めているといえる。また,研修会参加により「自分の不足している部分を再認識した」(III-3)から,自学の目標設定に研修会を利用するというニーズもあるといえる。
「最新の情報の提供」 保育士にとって,知識や技能の更新や向上は必須である。一度現場から遠ざかった潜在保育士であれば,復職にあたり「現場から離れて情報がない」(I-5)という不安,「自分が学んだ時代ではなく,今の時代の保育について知りたい」(II-2),「今流行っている手遊びなど最新の技能を提供してほしい」(IV-2)というニーズはなおさら大きいであろう。また,「具体的な施設・事業所の情報提供が欲しい」(IV-3)といった就職情報の提供も求められている。
これらのボトムアップ的に拾い上げた結果については,今後,先行研究にもとづく枠組みを設定し,実証研究を進める必要がある。
(本研究は,「山陽学園短期大学潜在保育士復職支援プロジェクト」の協力を得た。)