日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PD(01-64)

ポスター発表 PD(01-64)

2016年10月9日(日) 10:00 〜 12:00 展示場 (1階展示場)

[PD45] 随伴経験の想起が学習動機づけに及ぼす影響

山本晃輔 (大阪産業大学)

キーワード:随伴経験, 自伝的記憶, 動機づけ

目   的
 これまでの人生において自分が経験した出来事に関する記憶は自伝的記憶と呼ばれる。自伝的記憶には様々な機能があり,想起を通してアイデンティティ (山本, 2015a) や動機づけに影響することが報告されてきた (山本, 2015b)。自伝的記憶といってもその内容は様々であり,想起された内容によっては期待した効果が得られない可能性が考えられる。本研究では自伝的記憶の中でも近年検討が行われている成功,失敗経験の想起 (e.g., 佐藤, 2016) に焦点をあてる。特に,努力に伴った満足する結果が得られた経験である随伴経験と,努力したにもかかわらずそれに見合った結果が得られなかった経験である非随伴経験に注目し,それらの想起が学習場面の動機づけに及ぼす影響について実験的な検討を行う。
方   法
 参加者 大学生216名を随伴群109名(男性24名,女性85名,平均年齢19.01歳)と非随伴群107名(男性56名,女性51名,平均年齢18.90歳)とに振り分けた。
 調査用紙 調査用紙はA4サイズで計4ページであった。1枚目の表紙には年齢と性別の記入欄を設けた。2枚目と4枚目には,畑野 (2013) による学習動機づけ尺度18項目 (1: あてはまらない〜4: あてはまる) が印刷された。3枚目は,随伴経験群では“一生懸命勉強した結果,満足する結果が得られた出来事を1つ思い出してください”という教示文が印刷され,非随伴経験群では“一生懸命勉強した結果,満足する結果が得られなかった出来事を思い出して下さい”という教示文が印刷された。想起後,その出来事を自由記述してもらう欄が設けられ,さらに記憶の特徴について感情喚起度(1=感情が呼び起されない〜7=強い感情が呼び起される),快不快度 (1=不快〜7=快),生起頻度 (1=めったに起こらない出来事〜7=よく起こる出来事),想起頻度 (1=ほとんど思い出さない〜7=1ヶ月に1回程度思い出す),鮮明度 (1=ぼんやりとしている〜7=はっきりとしている),重要度 (1=全く重要ではない〜7=とても重要) の評定値が設定された。
 手続き 授業時間の一部を用いて,集団実験が行われた。基本的な手続きは山本 (2015) に倣った。最初に学習動機づけ尺度を実施した。次いで,群ごとに自伝的記憶の想起を求め,その内容について簡単に記述させた後,記憶特性に関する評定を求めた。その後,再度学習動機づけ尺度を記入させた。実験に要した時間は約15分であった。
結果と考察
 随伴群と非随伴群ごとに想起前後における学習動機づけ尺度合計平均点および因子ごとの平均点を算出した (表1)。記憶の想起前後における群ごとの学習動機づけ尺度の変化を検討するために,2要因分散分析を行った。その結果,記憶の想起前後要因に有意な結果が示され,想起前より想起後の方が動機づけ尺度合計値,向上志向因子得点が高くなった。随伴群,非随伴群ともにこの結果がみられたことから,努力した経験が動機づけに影響を及ぼすと考えられる。