[PE81] 大学間の「つながり格差」と 学生の主観的ウェルビーイングのマルチレベル分析2
大学2年生のソーシャル・キャピタルと大学満足感の関連
キーワード:ソーシャル・キャピタル, 大学満足感, 学生
問題と目的
「つながり格差」とは,社会的資源の利用可能性がコミュニティによって異なる現象をさす。本研究では,そのコミュニティがもつ社会的資源の利用可能性を資本にたとえたものを指してソーシャル・キャピタル(社会関係資本;Social Capital; 以下SC)と呼び,学生がどの程度社会的資源の利用可能性を認知しているかを指して主観的ソーシャル・キャピタル(主観的SC)と呼ぶ。それぞれには,仲間・クラス・教員に関するものがある(芳賀・高野・羽生・西河・坂本,2016)。芳賀他(2016)は,大学1年生のデータを用いてSCと大学満足感の関連を示唆した。本研究では,大学生活において満足感が最も低い2年生(木村,2012)に焦点を当て,SCの豊かさと大学満足感の高さの関連,そしてSCや主観的SC間の関連について検討する。
方 法
調査は大きく2つのデータによって構成されていた。1つは2013年9月から翌年1月まで行われた調査に参加した大学23校の学生1108名(男性249名,女性859名)のデータであった。調査材料は(a)人口統計データ:性別と学年(b)SC / 主観的SC: Subjective Social Capital Scale for University life(SSCS-U)33項目,5段階評定(c)大学満足感:大学満足感尺度(芳賀他,2016)7項目6件法を用いた。統計解析はMplus ver 6.11(Muthen & Muthen,2012)を用いた。
もう1つのデータは大学統計調査のデータだった。大学の実力(読売新聞教育部,2012)のデータのうち,各大学の(d)キャンパス学生数(対数値)(e)大学の属性(共学0・女子大1)(f)学生入学時の学力偏差値(Z値)を使用した。
結 果
まず,各変数の大学間分散の程度の全分散に対する割合を検討するため,級内相関係数を算出した。その結果,SC(仲間・クラス・教員),大学満足感の級内相関係数は,それぞれ.03(p<.01) ,.09(p<.01),.08(p<.01) ,.10(p<.001)であり,統計的に有意であった。次に,芳賀他(2015)のモデルを参考にマルチレベルSEMを行った。まず,SC(教員)からSC(仲間・クラス)へのパスやSCおよび主観的SC(仲間・クラス)から大学満足感へのパスを含んだモデルを作成したが適合度は不十分であったため,Fig.のモデルを採用した。適合度は,RMSEA=.00,CFI=1.00,TLI=1.00,SRMR(学生レベル/大学レベル)=.00 / .00であったことから十分であると考えられた。モデルから,大学レベルではSC(教員)と大学満足感の関連が示された(b=.49,p<.01)。また,学生レベルでは,主観的SC(教員)と主観的SC(仲間)(b=.25),主観的SC(クラス)(b=.47),大学満足感(b=.32)との関連が有意であった(p<.001)。
考 察
本研究により,2年生においてもSC(教員)の豊かな大学では大学満足感が高いことが示唆された。そして主観的SC(教員)の高い学生ほど主観的SC(仲間・クラス),大学満足感が高いことが示唆された。今後,大学間の「つながり格差」すなわちSC格差を縮小することで大学満足感を高めることや,学生が大学の成員を資源として認知するまでの過程の解明が必要である。
Fig.2年生のSCによる大学満足感の説明モデル
注1 ***p<.001
注2 IntはRandom Interceptをさす
注3 誤差共分散は表記を省略している
「つながり格差」とは,社会的資源の利用可能性がコミュニティによって異なる現象をさす。本研究では,そのコミュニティがもつ社会的資源の利用可能性を資本にたとえたものを指してソーシャル・キャピタル(社会関係資本;Social Capital; 以下SC)と呼び,学生がどの程度社会的資源の利用可能性を認知しているかを指して主観的ソーシャル・キャピタル(主観的SC)と呼ぶ。それぞれには,仲間・クラス・教員に関するものがある(芳賀・高野・羽生・西河・坂本,2016)。芳賀他(2016)は,大学1年生のデータを用いてSCと大学満足感の関連を示唆した。本研究では,大学生活において満足感が最も低い2年生(木村,2012)に焦点を当て,SCの豊かさと大学満足感の高さの関連,そしてSCや主観的SC間の関連について検討する。
方 法
調査は大きく2つのデータによって構成されていた。1つは2013年9月から翌年1月まで行われた調査に参加した大学23校の学生1108名(男性249名,女性859名)のデータであった。調査材料は(a)人口統計データ:性別と学年(b)SC / 主観的SC: Subjective Social Capital Scale for University life(SSCS-U)33項目,5段階評定(c)大学満足感:大学満足感尺度(芳賀他,2016)7項目6件法を用いた。統計解析はMplus ver 6.11(Muthen & Muthen,2012)を用いた。
もう1つのデータは大学統計調査のデータだった。大学の実力(読売新聞教育部,2012)のデータのうち,各大学の(d)キャンパス学生数(対数値)(e)大学の属性(共学0・女子大1)(f)学生入学時の学力偏差値(Z値)を使用した。
結 果
まず,各変数の大学間分散の程度の全分散に対する割合を検討するため,級内相関係数を算出した。その結果,SC(仲間・クラス・教員),大学満足感の級内相関係数は,それぞれ.03(p<.01) ,.09(p<.01),.08(p<.01) ,.10(p<.001)であり,統計的に有意であった。次に,芳賀他(2015)のモデルを参考にマルチレベルSEMを行った。まず,SC(教員)からSC(仲間・クラス)へのパスやSCおよび主観的SC(仲間・クラス)から大学満足感へのパスを含んだモデルを作成したが適合度は不十分であったため,Fig.のモデルを採用した。適合度は,RMSEA=.00,CFI=1.00,TLI=1.00,SRMR(学生レベル/大学レベル)=.00 / .00であったことから十分であると考えられた。モデルから,大学レベルではSC(教員)と大学満足感の関連が示された(b=.49,p<.01)。また,学生レベルでは,主観的SC(教員)と主観的SC(仲間)(b=.25),主観的SC(クラス)(b=.47),大学満足感(b=.32)との関連が有意であった(p<.001)。
考 察
本研究により,2年生においてもSC(教員)の豊かな大学では大学満足感が高いことが示唆された。そして主観的SC(教員)の高い学生ほど主観的SC(仲間・クラス),大学満足感が高いことが示唆された。今後,大学間の「つながり格差」すなわちSC格差を縮小することで大学満足感を高めることや,学生が大学の成員を資源として認知するまでの過程の解明が必要である。
Fig.2年生のSCによる大学満足感の説明モデル
注1 ***p<.001
注2 IntはRandom Interceptをさす
注3 誤差共分散は表記を省略している