[PF67] 大学生の本来感に影響を及ぼす要因の検討(1)
自閉症スペクトラム傾向の高さによる比較
キーワード:エゴ・レジリエンス, 肯定的自動思考, ソーシャルサポート
問題と目的
自閉症スペクトラム症を背景に持つ子供たちは,学校生活において集団活動への困難さから,学校不適応となり不登校に陥りやすい(高田ら,2015)。また定型発達の子供たちとの相違を外見から判断することの難しさから,不適切な対応を取られやすい。その二次障害として自己肯定感が低くなる,あるいはトラウマとなるような感情体験により,うつや不安障害,気分障害などを発症することがある(内山,2004)。だが同じような状況の中においても適応度を高め,学校生活を送れる子供たちは,どのような力によって乗り越えることが出来ているのだろうか。そこで適応度を高め困難さを乗り越えてきたと考えられる大学生を対象とし,自己要因である認知とスキル,環境要因であるソーシャルサポートを独立変数とし,well-beingとしての本来感を従属変数として,その関係を明らかにすることで,臨床的介入の一助とすることを目的とする。
研究方法
(1)調査協力者:首都圏の大学に在学する1~4年生147名,中国圏の大学生1~4年生174名で合計321名(男子176名,女子131名),年齢は18歳~25歳,実施時期は平成27年6月上旬~7月中旬であった。
(2)調査内容:①本来感尺度(伊藤・小玉,2005)(5件法7項目)②AQ-J-10:栗田ら(2005)のAQ-Jの10項目短縮版(4件法10項目)③Ego-Resiliency 尺度(ER89)(畑・小野寺,2013)(4件法14項目)④大学生用ストレス自己評価尺度におけるコーピング尺度(尾関,1993)(4件法14項目)⑤ソーシャルサポート尺度(菊島,1999)(5件法6項目)⑥ATQ・RP(肯定的自動思考:Kendall et al., 1989; 児玉他,1994)(4件法10項目)
(3)倫理的配慮:質問紙配布の際,研究参加は自由意思による同意に基づき,質問紙への回答をもって調査参加への同意意思があると判断する,個人の特定が出来る形で内容を公表しない旨を伝え,同内容をフェースシートにも明記した。
結果と考察
① AQ得点の性差:t検定
t(305)=8.32(p<.01)で,男女間に有意な差が見られ,男性の得点が有意に高かった。
② AQのカットオフポイント7以上の割合
有効回答者数307名中36名が該当し,割合は11.73%であった。
③ 本来感得点の二要因分散分析結果(Table)
本来感得点を従属変数とし,AQ得点を0~3点を低群,4~6点を中群,7点(カットオフポイント)以上を高群とし,AQ(低群・中群・高群)×上記尺度③④⑤⑥各要因(低群・中群・高群)の二要因分散分析を行った。その結果,各要因の主効果が有意であった。
大学生のwell-beingとしての本来感に認知的要因であるエゴ・レジリエンスと肯定的自動思考,スキルであるコーピング,環境要因であるソーシャルサポート(家族,友人,先生)が影響を及ぼしていることが示された。
自閉症スペクトラム症を背景に持つ子供たちは,学校生活において集団活動への困難さから,学校不適応となり不登校に陥りやすい(高田ら,2015)。また定型発達の子供たちとの相違を外見から判断することの難しさから,不適切な対応を取られやすい。その二次障害として自己肯定感が低くなる,あるいはトラウマとなるような感情体験により,うつや不安障害,気分障害などを発症することがある(内山,2004)。だが同じような状況の中においても適応度を高め,学校生活を送れる子供たちは,どのような力によって乗り越えることが出来ているのだろうか。そこで適応度を高め困難さを乗り越えてきたと考えられる大学生を対象とし,自己要因である認知とスキル,環境要因であるソーシャルサポートを独立変数とし,well-beingとしての本来感を従属変数として,その関係を明らかにすることで,臨床的介入の一助とすることを目的とする。
研究方法
(1)調査協力者:首都圏の大学に在学する1~4年生147名,中国圏の大学生1~4年生174名で合計321名(男子176名,女子131名),年齢は18歳~25歳,実施時期は平成27年6月上旬~7月中旬であった。
(2)調査内容:①本来感尺度(伊藤・小玉,2005)(5件法7項目)②AQ-J-10:栗田ら(2005)のAQ-Jの10項目短縮版(4件法10項目)③Ego-Resiliency 尺度(ER89)(畑・小野寺,2013)(4件法14項目)④大学生用ストレス自己評価尺度におけるコーピング尺度(尾関,1993)(4件法14項目)⑤ソーシャルサポート尺度(菊島,1999)(5件法6項目)⑥ATQ・RP(肯定的自動思考:Kendall et al., 1989; 児玉他,1994)(4件法10項目)
(3)倫理的配慮:質問紙配布の際,研究参加は自由意思による同意に基づき,質問紙への回答をもって調査参加への同意意思があると判断する,個人の特定が出来る形で内容を公表しない旨を伝え,同内容をフェースシートにも明記した。
結果と考察
① AQ得点の性差:t検定
t(305)=8.32(p<.01)で,男女間に有意な差が見られ,男性の得点が有意に高かった。
② AQのカットオフポイント7以上の割合
有効回答者数307名中36名が該当し,割合は11.73%であった。
③ 本来感得点の二要因分散分析結果(Table)
本来感得点を従属変数とし,AQ得点を0~3点を低群,4~6点を中群,7点(カットオフポイント)以上を高群とし,AQ(低群・中群・高群)×上記尺度③④⑤⑥各要因(低群・中群・高群)の二要因分散分析を行った。その結果,各要因の主効果が有意であった。
大学生のwell-beingとしての本来感に認知的要因であるエゴ・レジリエンスと肯定的自動思考,スキルであるコーピング,環境要因であるソーシャルサポート(家族,友人,先生)が影響を及ぼしていることが示された。