日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

2016年10月10日(月) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PH19] 算数文章題解決におけるメタ認知方略尺度の作成(1)

小学生版尺度作成を目指して

小澤郁美1, 福屋いずみ2, 浦上萌3, 中條和光4 (1.広島大学大学院, 2.広島大学大学院, 3.広島大学大学院・日本学術振興会特別研究員, 4.広島大学大学院)

キーワード:学習指導, 算数文章題, メタ認知

 算数科では,算数文章題に苦手を抱える小学生が多いことが課題とされている。岡本(1992)は,算数文章題を解くには,どのようなメタ認知方略を用いるかということが重要であると指摘している。このことから,文章題に対して苦手意識を持つ小学生の指導においては,メタ認知方略の使用という観点が重要であることが示唆される。しかし,小学生を対象として作成されたメタ認知方略の尺度はない。多鹿他(2004)は,大学生を対象に,算数文章題解決時に用いられるメタ認知方略の尺度を作成しているが,小学生と大学生のメタ認知方略がどのように異なるのかは明らかになっていない。したがって,両者が用いるメタ認知方略使用の差異を明らかにすることによって,小学生の指導方法に対して示唆を得ることができると考えられる。そこで,算数文章問題解決において小学生と大学生とが重視するメタ認知方略の違いを検討することとし,まず,大学生と小学生の両方に適用可能な算数文章題解決のメタ認知方略尺度の開発を目指す。本報告では,多鹿他(2004)の尺度を小学生が回答できるよう,用語と評定段階を改変し,算数文章題解決におけるメタ認知方略の因子(大学生対象)を明らかにする。
方   法
参加者 大学生・大学院生295名であった。
算数文章題解決時のメタ認知方略尺度 多鹿他(2004)の項目の文章表現,用語,評定段階を小学生向けに改変した。尺度は21項目であった。
手続き 調査はWeb上で行った。参加者に対し,小学生の時の算数文章題解決の場面を想起させ,各項目についてどれくらい気をつけているか,評定させた。評定は「4:とても気をつけている」から「1:まったく気をつけていない」までの4段階であった。質問紙の最後に,フェイス項目への回答を求めた。
結   果
 算数文章題解決尺度の各項目について,平行分析の結果と多鹿他(2004)の因子構造から,3因子構造を仮定した最尤法・プロマックス回転による因子分析を行った。各因子に対する負荷量が.35以下の項目および複数の因子に高い因子負荷量を持つ項目を除外したものを最終的な因子パターンとした。
 各因子に含まれる項目および信頼性係数,因子間の相関,削除された項目をTable 1に示した。
考   察
 因子分析の結果,算数文章題解決においては,問題解決に必要な情報の選択や既有知識の使用,問題文理解の手がかりの外化といった,メタ認知的コントロールにあたる方略が見出された。メタ認知的モニタリングにあたる項目は削除された項目に含まれており,因子を構成しなかった。このことから,大学生・大学院生が自身の小学生時代を回想した場合,算数文章題解決におけるメタ認知的モニタリングが意識されていないことが示唆された。