The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(65-88)

ポスター発表 PH(65-88)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PH84] 学級集団の状態ごとの児童の認知する教員のユーモア行動との関係

河村昭博1, 河村茂雄2 (1.早稲田大学大学院, 2.早稲田大学)

Keywords:教員の指導行動, 教員のユーモア行動, 児童

問題と目的
 現在の教育現場では,いじめや学級崩壊など様々な現状に対処するため,文部科学省(2008)は教員のコミュニケーション能力のさらなる向上の必要性を指摘している。それは,学級集団づくりを含めた学級経営,授業の展開,児童への対応などの教員の指導行動の問題が中心であり,何を行ったのかという内容だけではなく,どのようになされたのかという質の問題をも含んでいると考えられる。瀧野(1995)は「好きな教員・嫌いな教員」について,小学生ではやさしくてユーモアがあり一緒に遊んでくれる親和的な教員が好まれると指摘している。またCornett(1986)はユーモアを教員のもっとも強力な教育資源であるとし,難読を矯正したり,行動的な問題を抑制したり,語彙力を高めたり,孤立している児童をまとめたりと,様々な目的に使用することができるとしている。つまり,どのようになされたのかという教員が指導行動を行う際の雰囲気や姿勢などの質の面も,児童の学校生活の中での学習や適応など多様な面と関連があるといえ,それらの知見を教員は指導行動の行使の際に能動的に取り入れていくことも求められるのである。つまり,教員の指導行動の中にユーモアを適切に取り入れることは,教育実践の向上につながる可能性が考えられる。本研究は,教員の指導行動を行使する中での児童が認知する教員のユーモア表出の3つタイプと児童の学級集団の状態との関連を検討することを目的とする。
方   法
調査時期 2013年6月に調査を実施した。
調査対象 首都圏の公立小学校3校1095名(男子551,女子554名)を調査の対象とした。
使用尺度 2種類の質問紙による調査を行った。
1)河村・武蔵・河村(2015)の教員のユーモア
行動測定尺度24項目。評定は「5:よくある」から「1:まったくない」の5件法である。
2)河村(1999)の学校生活満足度尺度37項目。
評定は「4:とてもあてはまる」から「1:全くあてはまらない」の4件法である。
結果と考察
 学級生活満足度尺度をもとに調査した児童が所属する学級集団の状態を,河村(1999)の指摘にしたがって5群に分類した。そして,各群の学級集団の児童の認知する教員のユーモア行動を3因子ごとに集計し,群間で分散分析を行い,有意差が認められた場合はTukey 法による多重比較を行った。結果,小学校では「親和的でまとまりのある学級集団(満足型)」では他の学級集団と比較して,有意に教員の「楽しさ喚起ユーモア」と「元気づけユーモア」が高く認知されていることが明らかになった。結果から,学級に所属する児童の学習意欲,友人関係を形成しようという意欲,集団活動への参加意欲が有意に高い「親和的なまとまりのある学級集団(満足型)」では,児童は教員の「楽しさ喚起ユーモア」を高く認知していることが明らかになった。同様に,「元気づけユーモア」は小学校では「親和的なまとまりのある学級集団(満足型)」で所属する児童から有意に高く認知されていた。以上から,教員が指導行動を行使する中で「楽しさ喚起ユーモア」や「元気づけユーモア」を適切に活用することは,児童の人間関係で構築される学級集団の状態との関連でプラスの関連が認められることが考えられた。