日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PA(01-83)

ポスター発表 PA(01-83)

2017年10月7日(土) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PA25] 導入的概念地図法における概念想起について

概念地図法との比較

皆川順1, 伴浩美2 (1.浦和大学, 2.長岡技術科学大学大学院)

キーワード:概念想起, 認知構造, 導入的概念地図法

初めに:長期記憶からの記憶検索は,基本的にランダムに行われることが知られている(Indow & Togano,1970;皆川1978,1989他)。  
 他方,認知的体制化の観点からは,記憶は体制化されており,それゆえ検索の結果は体制化されたものであることが予測できる。
 皆川(2009)は「導入的概念地図」の名称で,学生が学習した内容を,上位概念から逸脱しない範囲において想起順位を付しながら自由に想起することを求めた。
 他方この研究においては,実際の講義の内容とその順序の,想起順位や事後テスト得点との関連については,研究は行わなかった。
 皆川(2015)はこの点を考慮して,「記憶からの検索は本来ランダムであるが,教育作用はそれを体制化するものである」,という仮説を立て,実験を行った。「中央に中心となる概念を書き,どの方向にでも自由に思い出した概念を書きだす」ことを求めた。思い出した順に番号を記入させた。
実   験
実験日時:2015年7月 参加者:X県内Q大学Z学部第2学年学生 21名。場所:Q大学内教室。手続き・方法 A4の紙を配布してそれまでに学習した『発達心理学』に関連する概念を,想起順序とともに記述させた。必要に応じてリンクラベルやクロスリンクを書かせた。時間:50分。事後テスト次週50分20問。1問5点。平均点78.6点。
結   果
事後テスト得点から考えると,得点85点の学生は,ほぼすべての単元・小単元の内容に関して想起している。内容想起量28。他方,100点の学生は,リンクラベルやクロスリンクのラベルを除くと13ほどである。また40点の学生は6である。

考   察
100点の学生は,確かに想起語数は少ないように見えるが,リンクラベルおよびクロスリンクに関しては他の学生たちよりも多い(クロスリンク:100点6,85点4;リンクラベルおよびクロスリンクラベル:100点7,80点0)。また,皆川(2000)が論じたように,所与の概念からの直結は,中間概念の理解不足を意味することが多い。(直結:100点8,85点12)。とりわけリンクラベル,クロスリンクの説明は100点の学生のほうにのみ見られる。85点の学生は概念のまとまりは理解していると判断されるが,説明が少なすぎる。(本研究は,学会等に発表することは事前に実験参加者の了解を得ている。また一部は2016年度岡山心理学会にて発表済みである)