13:00 〜 15:00
[PB59] 心理教育プログラム実施者の実施前後での心理的適応および効力感の変化
発達障害児を対象とするCBTプログラムPEACEの放課後等デイサービスでの実践に関して
キーワード:心理教育, 認知行動療法, 放課後等デイサービス
問 題
発達障害をもつ子どもの多くが不安症状を示し,それに対して認知行動療法(CBT)による支援の効果が確認されている(Sze & Wood, 2007)。筆者らは発達障害をもつ子どもが気持ちとうまくつき合っていくことを支援するため,放課後等デイサービス(放デイ)や特別支援学級で実施できるCBTに基づくプログラムPEACE(Yamane, Matsumoto, & Ishimoto, 2016)を開発し,放デイや特別支援学級における教職員による実施の効果を検証してきた。本プログラムは効果の般化のため,ホームワークの設定や内容を保護者に伝える通信の配布も行っているが,さらに,プログラムを実施した教職員が効力感をもち,プログラム実施時間外においてもプログラムに関連した支援を行っていくことが重要であると考えられる。また効力感が高まることで,教職員の心理的適応の向上につながることも期待される。本研究ではプログラムを実施した放デイにおける職員の心理的適応および効力感の変化を検証する。
方 法
1.調査対象者:プログラム実施の協力を得た17の放デイ事業所でプログラム実施に関わる職員に回答を依頼した。回答を得た実施前92名,実施後66名のうち,前後のデータがそろう63名を分析対象とした。職員はプログラム実施前にプログラム実施に関わる研修を受講した。研修の内容は,発達障害の基本的知識,認知行動療法の基本的知識,プログラムの内容で構成され,4~7時間で行った。2.測定時期:回答時期は実施前2週間以内,実施後10日以内であった。3.測定変数:(1)WHO-5精神的健康状態表(WHO,1998)―5項目[6件法](2)子どもの気持ちに対処することに対する効力感を測定する項目―プログラムに関連する内容の6項目を作成した(Table2)[5件法]。
結 果
WHO-5は合計値を,効力感項目は平均値を尺度得点とし,実施前後の得点を比較した。なお,効力感項目6項目の内的整合性を示すα係数は.86であり,平均値を指標として用いることに問題ないと判断した。その結果WHO-5については,実施前後で有意な差はみられなかった。一方,効力感項目については有意な差がみられた(Table1)。さらに,効力感項目の一項目ごとの得点についても,実施前後で比較した。すべての項目で得点の上昇が示されているものの,有意な差がみられたのは半数の項目であった(Table2)。
考 察
プログラムの実施を通して効力感が高まり,結果的に心理的適応の向上につながることを予想したが,心理的適応の向上はみられなかった。今回指標として用いたWHO-5は生活全般における心理的適応を測定するものであるため,仕事上で一部の子どもに対して実施したプログラムの影響はみられなかったと考えられる。他方,効力感項目については平均値および項目ごとの分析における半数の項目において有意な上昇がみられた。PEACEプログラムは子どもの気持ちのうち特に不安や怒りについて扱うものであるが,不安の扱いについては効力感の上昇がみられず,今後の改善が必要である。また,プログラム内ではリラクセーションや言葉の使用,場の離脱による気持ちの切り替えや認知再構成法を扱っているが,いずれも子ども自身が用いて気持ちを切り替えていくこととして扱っている。このことが,職員が子どもの気持ちを切り替えることの効力感が上昇しなかったことと関連するとも考えられる。今後は,これらの結果をもとにプログラムや研修の改善を図るとともに,職員の効力感や心理的適応の変化と子どもの変化との関連について検討していくことが課題である。
発達障害をもつ子どもの多くが不安症状を示し,それに対して認知行動療法(CBT)による支援の効果が確認されている(Sze & Wood, 2007)。筆者らは発達障害をもつ子どもが気持ちとうまくつき合っていくことを支援するため,放課後等デイサービス(放デイ)や特別支援学級で実施できるCBTに基づくプログラムPEACE(Yamane, Matsumoto, & Ishimoto, 2016)を開発し,放デイや特別支援学級における教職員による実施の効果を検証してきた。本プログラムは効果の般化のため,ホームワークの設定や内容を保護者に伝える通信の配布も行っているが,さらに,プログラムを実施した教職員が効力感をもち,プログラム実施時間外においてもプログラムに関連した支援を行っていくことが重要であると考えられる。また効力感が高まることで,教職員の心理的適応の向上につながることも期待される。本研究ではプログラムを実施した放デイにおける職員の心理的適応および効力感の変化を検証する。
方 法
1.調査対象者:プログラム実施の協力を得た17の放デイ事業所でプログラム実施に関わる職員に回答を依頼した。回答を得た実施前92名,実施後66名のうち,前後のデータがそろう63名を分析対象とした。職員はプログラム実施前にプログラム実施に関わる研修を受講した。研修の内容は,発達障害の基本的知識,認知行動療法の基本的知識,プログラムの内容で構成され,4~7時間で行った。2.測定時期:回答時期は実施前2週間以内,実施後10日以内であった。3.測定変数:(1)WHO-5精神的健康状態表(WHO,1998)―5項目[6件法](2)子どもの気持ちに対処することに対する効力感を測定する項目―プログラムに関連する内容の6項目を作成した(Table2)[5件法]。
結 果
WHO-5は合計値を,効力感項目は平均値を尺度得点とし,実施前後の得点を比較した。なお,効力感項目6項目の内的整合性を示すα係数は.86であり,平均値を指標として用いることに問題ないと判断した。その結果WHO-5については,実施前後で有意な差はみられなかった。一方,効力感項目については有意な差がみられた(Table1)。さらに,効力感項目の一項目ごとの得点についても,実施前後で比較した。すべての項目で得点の上昇が示されているものの,有意な差がみられたのは半数の項目であった(Table2)。
考 察
プログラムの実施を通して効力感が高まり,結果的に心理的適応の向上につながることを予想したが,心理的適応の向上はみられなかった。今回指標として用いたWHO-5は生活全般における心理的適応を測定するものであるため,仕事上で一部の子どもに対して実施したプログラムの影響はみられなかったと考えられる。他方,効力感項目については平均値および項目ごとの分析における半数の項目において有意な上昇がみられた。PEACEプログラムは子どもの気持ちのうち特に不安や怒りについて扱うものであるが,不安の扱いについては効力感の上昇がみられず,今後の改善が必要である。また,プログラム内ではリラクセーションや言葉の使用,場の離脱による気持ちの切り替えや認知再構成法を扱っているが,いずれも子ども自身が用いて気持ちを切り替えていくこととして扱っている。このことが,職員が子どもの気持ちを切り替えることの効力感が上昇しなかったことと関連するとも考えられる。今後は,これらの結果をもとにプログラムや研修の改善を図るとともに,職員の効力感や心理的適応の変化と子どもの変化との関連について検討していくことが課題である。