日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

2017年10月7日(土) 15:30 〜 17:30 白鳥ホールB (4号館1階)

15:30 〜 17:30

[PC37] 初年度大学生の学業生活に対する親和性

クラスタリングによる学習スタイルの差異との関係性

鈴木賢男 (金沢学院短期大学)

キーワード:授業満足度, 学習スタイル, 大学生

目   的
 鈴木(教心発表2016)では,4月に事前調査された学習動機(下位6尺度),学習方略(下位4尺度),学習観(主体性,自律性,継続性)の尺度得点を変数として投入して,階層的クラスタ分析を行った結果,対象者を,①情緒型学習者,②思考型学習者,③受身型学習者,④意志型学習者の4つの学習スタイルに分類した。その後,8月に事後調査された授業実感,授業満足度,学業生活への親和性の各尺度を観測変数とするパス解析を行い,全体に適合するモデルを,学習スタイル別に当てはめてみたところ,満足授業率(満足した授業数/受講数)の学習親和へのパスと,授業満足率(主観的確率)の学校親和へのパスが「意志型学習者」でのみ有意であった。
 本研究は,この学習スタイルのクラスタが安定して得られるものかどうかを,対象者を新たにして確認し,クラスタ別の学業生活への親和性の差違と授業満足度との相関関係を検討した。
方   法
 前半(2017年4月):学習動機と学習方略に関しては,市川(2001)による尺度を用い,学習観については「学ぶことを通して人として完成される」などの25項目に対して5件法(賛成-反対)で回答を得た。後半(同年8月):受講した科目数と,その中で満足できた科目数を回答してもらい,また,別途「大学での全般的な授業満足度は主観的に何%ですか」という教示で主観的な満足率の回答を得た。また,30項目で半期の授業における実感について,「知識や技能をもっと伸ばしたい」などの15項目で,学業生活における親和性について,7件法(全くそう思う-全くそうは思わない)で回答を得た。調査対象者:人文社会・教育系2学部の122名(男性39名,女性83名)の大学1年生。平均年令は18.2才(SD=0.55)。
結   果
 学習動機(下位6尺度),学習方略(下位4尺度),学習観(主体性,自律性,継続性)の尺度得点を変数として投入して,Ward法による階層的クラスタ分析を行った結果,デンドログラムの枝の長さから,4つに分類することが妥当であると判断した。各尺度得点の比較から,昨年とほぼ同様に,内容分離動機が一様に高い①情緒型学習者(41名),一様に低い②思考型学習者(22名),学習観が比較的ネガティブな③受身型学習者(12名),ポジティブな④意志型学習者(37名)との特徴を見出すことができた。また,クラスタのカテゴリを目的編集として,正準班別分析を行ったところ,ステップワイズ法により投入された変数は,学習動機である「自尊志向」「報酬志向」と,学習観である「主体性」「自律性」「継続性」の5つとなった。このモデル式による判別の結果,元のカテゴリとの一致率が,85.7%となった。
 学業生活への親和性における項目に対しては,学校を好きになる等の「学校親和」,学力を伸ばしたい等の「学習親和」,知ること自体が楽しい等の「学問親和(見聞親和より改名)」と意味づけられる因子を得て(累積寄与率61.6%),尺度得点を算出した(3尺度のα係数は.83~.91)。学習スタイルを要因とする1要因4水準の分散分析を行って,平均値に差があるかを調べたところ,学校親和においては,「受身型」が4.39(SD=1.49),「意志型」が5.73(1.16),学習親和においては,「受身型」が5.53(0.98),「意志型」が6.51(0.54),学問親和においては,「受身型」が4.30(1.12),「意志型」が5.57(1.10)となり,5%水準で有意な差が認められた。
 授業満足率との学業生活への親和性の関連について,ピアソンの積率相関係数を求めたところ,「思考型」(r=.44)と「情緒型」(r=.32)に5%水準で有意な正の相関が認められた。
考   察
 クラスタによる学習スタイルにおいて,半期後の学業生活への親和性に差違が生じていたことが示唆され,「受身型」の学校親和の低さと,「意志型」の学問親和の高さが顕著となった。「思考型」と「情緒型」では,授業満足率が上がると学校親和の程度が上がることが窺われた。