日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

2017年10月7日(土) 15:30 〜 17:30 白鳥ホールB (4号館1階)

15:30 〜 17:30

[PC41] 英単語に対する難度感について(2)

語の心理的長さ

浅井淳1, 小西章典#2, 石川有香#3, 松岡真由子4 (1.大同大学, 2.大同大学, 3.名古屋工業大学, 4.京都大学大学院)

キーワード:英語, 認知, 単語長

目   的
 現在の学習者が英単語にどのような難しさを感じているかについて理解を進めようとしている。これまでに,意味の抽象性,学習や生活で未経験の意味内容,そして語の長さなどが難度感に関与していることが示唆されている。今回は英単語の長さと難度判断との関わりに関して検討した。
調 査 方 法
対象・集計
 2つの大学の1年生513名が参加した。教科書中で難しかったとA群367名による回答のあった単語は異なり数で664語であった。これを難語と呼び,名詞9語を選んだ。難語ではない名詞3語を足した計12語について,知っている語かどうか2件法,知っていれば意味の和訳記述,そして長さの感じ方を5件法でB群146名に尋ねた。
調査結果・分析
語彙特性
 構造と意味に関して指標化した難語の語彙特性をTable 1に示す。回答数が多いほど難度が高いとした。最下段の回答数0は比較用に難語ではない104語を教科書から無作為抽出した易語の場合である。回答数16以上で特に難しいと感じられる語は,音節数で見て構造的に長く,意味が少なくて他の語に置き換えにくく,出現頻度が低い語であった。
語長の感じ方
 A群による難語回答数すなわち難度感は全体としては構造的語長とは有意な相関が無かった。しかし,語長は辞書9種の語義情報を基にした意味の幅(語義数),深さ(上級者向けと初級者向け辞書の語義数差による指標),密度(類義語数による指標)とは相関があり,潜在因子であったため,長いと感じるかどうかについてB群を英語習熟度で上位(U)47,中位(M)48,下位層(L)51名の3層に分け,さらに既知感の有無別に分けて,回答者6グループの判断値平均をFigure 1に示す。
 難語に対しても易語に対しても,既知感があると長さを短く感じる傾向であった。習熟度が高いほど,短い語を短く,長い語を長く感じる傾向であった。そして,意味を正しく記述できた場合,長短の差がさらにやや大きくなる結果であった。また,意味を知っていても能動的な使用経験が少ないと短い語であっても難しく感じ,使用経験が多いと長い語でも難しく感じないと推測された。
考   察
 今回の調査範囲では,対象にした語が少ないが,習熟度が高く,意味も知っていれば,語の長さを気にしなくなるというよりも,長短の差を大きく判断する結果であり,語の構造的情報をより明瞭に区別して認識するものと推察される。
 今後さらなる調査検討により,難度認知はじめ学習心理特性に関する知見の拡大が期待される。