日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PF(01-81)

ポスター発表 PF(01-81)

2017年10月8日(日) 16:00 〜 18:00 白鳥ホールB (4号館1階)

16:00 〜 18:00

[PF31] 幼児期の絵本の事前提示が関連する遊びに与える影響

5歳児の絵本とダンボール遊び

辰巳友唯1, 鈴木由美2 (1.聖徳大学, 2.聖徳大学)

キーワード:絵本, 遊び, ダンボール

問題と目的
 今日,絵本の読み聞かせは家庭においても保育の現場においても日常的に行われており,子どもの発達における絵本の読み聞かせの重要性はこれまでも多く報告されている(大元・青柳,2012)。髙橋・首藤(2007)は,絵本を通して,一人ひとりの幼児がさまざまなことを感じたり,考えたりし,想像力を広げたり,知識をもったりすると述べている。これらの先行研究から,子どもたちは遊びを通して,見たり,感じたり,考えたりしたことを自分の経験や知識として学んでいることが考えられる。遊びの中でも,北島(1993)は,ダンボールを遊び素材として「遊びの展開の仕方が個人の興味にそってどうにでも遊べるものであり,また,細工や発見次第で遊び道具としても,子ども同士の関わりの点でも,いろんな形態の遊びへと展開できるような遊び素材」であると説明している。
絵本と行事を結びつけた先行研究はあるが,幼児が多くの時間を過ごしている日常の園生活の中での仲間同士の遊びについて,観察されている研究は見当たらない。本研究では,絵本の事前提示(読み聞かせ)を「遊びの前に絵本を読み聞かせること」と定義する。目的としては,3歳児を対象にダンボールを題材にした絵本の読み聞かせの有無が関連する遊びに与える影響について明らかにしてみたい。

方   法
調査対象 公立保育所の幼児,5歳児42名(男子19名,女子23名)
実施時期 20XX年6月
手続き 子どもたちを2群にわけ,1群は絵本の読み聞かせ群と命名し,保育者および筆者が読み聞かせを行った後,ダンボールを含み自由に遊ぶこととした。読み聞かせの方法は,一通り読んだ後,絵本内容の振り返りを1度だけ行った。2群は絵本の読み聞かせなし群と命名し,絵本の読み聞かせはせず,ダンボールを含み自由に遊ぶこととした。
絵本 『ダンボールくん』絵・文ジェローム・リュイエ,訳しまだ かんぞう・小峰書店

結果・考察
 読み聞かせ群と読み聞かせなし群の遊びの種類について,Figure1に示した。
 読み聞かせ群では,用意されている物を確認し,どのようにして作るかを考えて行動していた。おりがみとクレパスだけでは自分のイメージしている物が作れないとわかると,自分の判断でハサミやのり,テープなどを用意していた。ダンボールに絵を描いている子どもが多くみられた。読み聞かせなし群では,何人かが座っておりがみで遊び始めると,様子を見ていた子どもたちもおりがみやダンボールで遊び始めた。一人の子どもがテープでダンボールを箱にし始めると,全員がテープを手に取り,ダンボールに貼っていた。
 読み聞かせ群は,絵本の読み聞かせをすることにより,子どものダンボールへの興味をかきたて,ダンボール遊びのイメージが広がったことが明らかになった。読み聞かせなし群では,ダンボールの遊び方がわからず,友だちの様子を見て真似ている子どもが多く,自発的な発想や行動は少なかった。これらのことから,絵本の読み聞かせと遊びに繋がりがあることが考えられる。今後,絵本を繰り返し読み聞かせることが幼児期の遊びに与える影響について明らかにしていきたい。