16:00 〜 18:00
[PF36] 学士課程学生によるライティング・ピア・チュータリングの効果
縦断的調査に基づく検討
キーワード:学習支援, ライティング, 批判的思考
問題と目的
学習者の自律性やジェネリックスキルの育成を目的とした教育改革の取り組みにおいて,アクティブラーニングの導入,実質化が重要な課題となっている。それら手法のひとつとして注目されているのが,学生による学生への教示,学生同士の教え合いといったピア・チュータリングの要素を取り入れた授業,活動である。
ライティング支援にピア・チュータリングを取り入れた取り組みは既に多く行われているが,その効果について実証的な検討が加えられることは稀である。そこで本研究では,共愛学園前橋国際大学において行われているレポート作成支援に関するピア・チュータリング活動の効果を検証することを目的とし,チュータリングを受けた1年生,受けていない1年生,ならびにチューターを対象とした縦断的な質問紙調査を実施した。質問紙では,文章執筆に関する自己効力感および批判的思考態度を尋ね,1年生に対してはさらにレポート執筆に関する知識の習得感についても尋ねた。各指標における事前事後の変化から,チューターとチューティーの成長について検討した。
方 法
ライティング支援のチューター16名(4年生8名,4年生7名,2年生1名)および1年生270名を対象として,2016年5月に事前調査を2017年1月に事後調査を実施した。両調査に参加しチューター13名,1年生116名を分析対象とした。1年生は,ライティング支援受講回数によって,非受講者(59名),1回受講者(46名),複数回受講者(11名)の3群に分けた。
チューターを対象とした質問紙と1年生を対象とした質問紙の共通項目として,文章産出困難感尺度(岸・梶井・飯島, 2012),批判的思考態度尺度(平林・楠見, 2004)を用いた。1年生の質問紙には,レポート執筆に関する知識の習得度を尋ねるレポート知識尺度を新たに作成し,追加した。
結果と考察
対象者ごとに,事後調査の各尺度得点から事前調査の各尺度得点を減じた差得点を計算し,変化の指標とした(Table 1)。
チューター調査について,各尺度の差得点を従属変数とし,差得点が0であるとする仮説に対する1サンプルのt検定を実施した結果,文章化得点および文章化の下位尺度アイディア得点のみ0を有意に上回る傾向があった(ps < .10)。
1年生調査について,受講履歴(非受講,1回受講,複数回受講)を独立変数,事前調査の尺度得点を共変量,事前事後の差得点を従属変数とした共分散分析を尺度ごとに実施した。結果,レポート知識得点,批判的思考態度得点,批判的思考態度の下位尺度である論理的思考への自覚得点,客観性得点において受講履歴の効果が有意であった(ps< .05)。事後検定の結果,レポート知識得点,批判的思考態度得点,客観性得点において,複数回受講者の差得点が非受講者の差得点を有意に上回っていた(ps < .05)。論理的思考への自覚得点においては,複数回受講者の差得点が,1回受講者の差得点よりも有意に高かった(p < .05)。
これらの結果から,学士課程学生によるライティング支援活動が,チューターにおいては文章化に対する自己効力感を,チューティーにおいてはレポートに関する知識ならびに批判的思考態度の向上に結びついていることが示唆された。
学習者の自律性やジェネリックスキルの育成を目的とした教育改革の取り組みにおいて,アクティブラーニングの導入,実質化が重要な課題となっている。それら手法のひとつとして注目されているのが,学生による学生への教示,学生同士の教え合いといったピア・チュータリングの要素を取り入れた授業,活動である。
ライティング支援にピア・チュータリングを取り入れた取り組みは既に多く行われているが,その効果について実証的な検討が加えられることは稀である。そこで本研究では,共愛学園前橋国際大学において行われているレポート作成支援に関するピア・チュータリング活動の効果を検証することを目的とし,チュータリングを受けた1年生,受けていない1年生,ならびにチューターを対象とした縦断的な質問紙調査を実施した。質問紙では,文章執筆に関する自己効力感および批判的思考態度を尋ね,1年生に対してはさらにレポート執筆に関する知識の習得感についても尋ねた。各指標における事前事後の変化から,チューターとチューティーの成長について検討した。
方 法
ライティング支援のチューター16名(4年生8名,4年生7名,2年生1名)および1年生270名を対象として,2016年5月に事前調査を2017年1月に事後調査を実施した。両調査に参加しチューター13名,1年生116名を分析対象とした。1年生は,ライティング支援受講回数によって,非受講者(59名),1回受講者(46名),複数回受講者(11名)の3群に分けた。
チューターを対象とした質問紙と1年生を対象とした質問紙の共通項目として,文章産出困難感尺度(岸・梶井・飯島, 2012),批判的思考態度尺度(平林・楠見, 2004)を用いた。1年生の質問紙には,レポート執筆に関する知識の習得度を尋ねるレポート知識尺度を新たに作成し,追加した。
結果と考察
対象者ごとに,事後調査の各尺度得点から事前調査の各尺度得点を減じた差得点を計算し,変化の指標とした(Table 1)。
チューター調査について,各尺度の差得点を従属変数とし,差得点が0であるとする仮説に対する1サンプルのt検定を実施した結果,文章化得点および文章化の下位尺度アイディア得点のみ0を有意に上回る傾向があった(ps < .10)。
1年生調査について,受講履歴(非受講,1回受講,複数回受講)を独立変数,事前調査の尺度得点を共変量,事前事後の差得点を従属変数とした共分散分析を尺度ごとに実施した。結果,レポート知識得点,批判的思考態度得点,批判的思考態度の下位尺度である論理的思考への自覚得点,客観性得点において受講履歴の効果が有意であった(ps< .05)。事後検定の結果,レポート知識得点,批判的思考態度得点,客観性得点において,複数回受講者の差得点が非受講者の差得点を有意に上回っていた(ps < .05)。論理的思考への自覚得点においては,複数回受講者の差得点が,1回受講者の差得点よりも有意に高かった(p < .05)。
これらの結果から,学士課程学生によるライティング支援活動が,チューターにおいては文章化に対する自己効力感を,チューティーにおいてはレポートに関する知識ならびに批判的思考態度の向上に結びついていることが示唆された。