10:00 〜 12:00
[PG23] 学校の学習を日常の実践に繋ぐ学習環境デザイン
対話活動が問題文の吟味に及ぼす影響
キーワード:学習環境デザイン, 対話活動, 学習実践
問題と目的
学校での学習内容を,自らの日常の実践へと関連づけていくことができない学校教育特有の問題が指摘されている(有元,1989;菅井・有元,2016;田島,2006,2008;田島・茂呂,2006;上野,1990)。この問題について,有元と上野は小学校の算数の問題解決課程を観察し,現実にはありえない数値や,計算しても日常では何の意味も持たないような問題でも,算数の学習として行った場合,児童は単に数字だけを計算し,非日常的な数値や意味を持たない計算結果を正答として導いてしまうことを報告した。児童が学校で学習していることと,学校の学習を日常の実践に関連づけることに文化的乖離があることが示され,学校の学習の自己収束性が示唆される。学校での学習に意味的・内容的吟味を取り戻すためには,学校のこのような側面に制限されずに,児童が学習を日常へ拡張的に関連づけていくことができる学習法が検討されることが望ましい。そこで本研究では,学校での児童の問題解決過程に対話活動を取り入れることは学習内容を自らの日常の実践へと関連づけることに影響するのか,という点を実証的に検討する。
方 法
2016年3月,神奈川県内の私立小学校3年生2学級を対話群37名と講義群36名に分類し調査を実施した。学校と日常との関連づけを測るための課題問題として,有元と上野の調査を参考に,かけ算の文章問題10問を採用した。10問のうち,5問は日常の実践へと関連づけが可能な,いわゆる適正な文章問題であり,残りの5問のうち2問は計算したとしても何の意味も持たないような問題,或いは計算の意味を持つ状況を探しにくい問題であった。また,他の2問はありえない条件や前提を持つために日常的な実践的感覚から外れた問題であり,残りの1問は正答を導くための条件が文章問題内に揃っていない問題であった。これら「無意味問題」「非現実的数値問題」「条件不備問題」の日常の実践への関連づけができないと判断される問題が,10問中5問を構成した。これらの文章問題10問は順序不同であり,文章問題10問のうち,問2と問8が「無意味問題」であった。また,問6と問10が「非現実的数値問題」であり,問7が「条件不備問題」であった。
対話群の児童37名へは,離席し自由に対話してもよいことを学級担任が教示し,調査を実施した。机の配置は講義形式であったが,休み時間のように対話と離席に制限がない学習形態とした。講義群の児童36名へは,テスト形式で取り組むように学級担任が教示し,調査を実施した。机の配置は講義形式であり,対話は一切なく課題問題へ取り組む学習形態とした。調査は対象校の20分間の休み時間帯に実施され,同一時間内での解答内容を比較するため,解答の制限時間を設けた。文章問題の数と内容から検討し,15分で解答を打ち切ることにした。
結果と考察
分析では,日常の実践への関連づけができない課題問題について,文章問題の非日常性を指摘して解答ができないと答えていることを,関連づけができているとみなし比較した。その結果,対話群が講義群より日常の実践へ関連づけながら問題解決を図ること,或いは図る傾向があることが確認された(Table 1)。学校での問題解決過程で対話活動を取り入れることは,日常の実践への関連づけに大きな影響があることがわかる。これは対話活動によって生じた他者とのインタラクションが,児童の学習に質的な変容をもたらし,学習がより拡張的に行われたものと捉えられる。
学校での学習内容を,自らの日常の実践へと関連づけていくことができない学校教育特有の問題が指摘されている(有元,1989;菅井・有元,2016;田島,2006,2008;田島・茂呂,2006;上野,1990)。この問題について,有元と上野は小学校の算数の問題解決課程を観察し,現実にはありえない数値や,計算しても日常では何の意味も持たないような問題でも,算数の学習として行った場合,児童は単に数字だけを計算し,非日常的な数値や意味を持たない計算結果を正答として導いてしまうことを報告した。児童が学校で学習していることと,学校の学習を日常の実践に関連づけることに文化的乖離があることが示され,学校の学習の自己収束性が示唆される。学校での学習に意味的・内容的吟味を取り戻すためには,学校のこのような側面に制限されずに,児童が学習を日常へ拡張的に関連づけていくことができる学習法が検討されることが望ましい。そこで本研究では,学校での児童の問題解決過程に対話活動を取り入れることは学習内容を自らの日常の実践へと関連づけることに影響するのか,という点を実証的に検討する。
方 法
2016年3月,神奈川県内の私立小学校3年生2学級を対話群37名と講義群36名に分類し調査を実施した。学校と日常との関連づけを測るための課題問題として,有元と上野の調査を参考に,かけ算の文章問題10問を採用した。10問のうち,5問は日常の実践へと関連づけが可能な,いわゆる適正な文章問題であり,残りの5問のうち2問は計算したとしても何の意味も持たないような問題,或いは計算の意味を持つ状況を探しにくい問題であった。また,他の2問はありえない条件や前提を持つために日常的な実践的感覚から外れた問題であり,残りの1問は正答を導くための条件が文章問題内に揃っていない問題であった。これら「無意味問題」「非現実的数値問題」「条件不備問題」の日常の実践への関連づけができないと判断される問題が,10問中5問を構成した。これらの文章問題10問は順序不同であり,文章問題10問のうち,問2と問8が「無意味問題」であった。また,問6と問10が「非現実的数値問題」であり,問7が「条件不備問題」であった。
対話群の児童37名へは,離席し自由に対話してもよいことを学級担任が教示し,調査を実施した。机の配置は講義形式であったが,休み時間のように対話と離席に制限がない学習形態とした。講義群の児童36名へは,テスト形式で取り組むように学級担任が教示し,調査を実施した。机の配置は講義形式であり,対話は一切なく課題問題へ取り組む学習形態とした。調査は対象校の20分間の休み時間帯に実施され,同一時間内での解答内容を比較するため,解答の制限時間を設けた。文章問題の数と内容から検討し,15分で解答を打ち切ることにした。
結果と考察
分析では,日常の実践への関連づけができない課題問題について,文章問題の非日常性を指摘して解答ができないと答えていることを,関連づけができているとみなし比較した。その結果,対話群が講義群より日常の実践へ関連づけながら問題解決を図ること,或いは図る傾向があることが確認された(Table 1)。学校での問題解決過程で対話活動を取り入れることは,日常の実践への関連づけに大きな影響があることがわかる。これは対話活動によって生じた他者とのインタラクションが,児童の学習に質的な変容をもたらし,学習がより拡張的に行われたものと捉えられる。