10:00 〜 12:00
[PG29] 児童の自主性を生かした安全教育の効果(2)
ハザードへの気づきに与える影響
キーワード:学校安全, 安全教育, ハザード
問 題
学校での安全教育は,児童生徒等の危険の制御,自律的な安全行動の促進,および他者や社会の安全への貢献等を目標としている。これらを踏まえ,著者らは児童が自ら考え,行動することを目標とした安全教育プログラム「ひなどり」を開発・実施し,その教育効果を確認している(岡ら, 2015)。しかし, 「ひなどり」によって児童の危険への気づきが具体的にどのように変化したのかは明確でなかった。そこで本研究では,再度「ひなどり」を実施し,校区の危険の認識に対して質問紙調査を行うことで,教育によって具体的にどのような危険を見つけられるようになったかを検討した。
方 法
対象者と実施期間
大阪府内の公立A小学校5年生56名を対象に2016年9月上旬から10月下旬までの総合学習7コマ(45分/1コマ)と放課後や休み時間を利用した。
「ひなどり」の流れ
1コマ目;クラスの保健係と著者から児童の怪我の実態と対処法を説明した。2コマ目;担任が校区内の危険箇所を児童に指摘させ,そこでの行動目標をクラスで話し合った。3-4コマ目;班に分かれ校区を大人とともに探索し,危険箇所の確認と新たな危険箇所の指摘をさせ,現場を撮影した。5-6コマ目;撮影した写真等をもとに,そこでの具体的な行動目標を明示したポスターや動画を作成させた。7コマ目;班ごとに作品を学年児童全員の前で説明させ,行動目標を宣言させた。
教育効果の評価と手続き
「ひなどり」実施前に「校区の危険箇所」と「そこを危険だと思う理由」について自由記述を求めた(pre)。7コマ目が終了してから約4週間後に再度同一項目に回答を求めた(post)。なお,本研究では「ひなどり」を実施しない統制群として,2015年7月中旬と9月中旬に,A小学校と隣接した校区の公立B小学校5年生101人に同一内容の質問紙調査を行った際のデータを使用した。
結果と考察
児童の「校区の危険箇所」の指摘件数について,統制群は一人平均1.78件から1.29件へと減少したが,教育群は2.14件から3.66件へと増加した。
回答内容について,複数の理由を一度に記述している場合は単一の回答に分割した(例;「車がたくさん通ってぶつかる」は「車がたくさん通る」「ぶつかる」)。その後,著者がKJ法により,行政や事業者等の安全対策が行き届いていないものを「1.道路・設備不備によるハザード」,交通事故に発展する可能性があるものを「2.交通関係のハザード」,ルールの不遵守を指摘するものを「3.心理面のハザード」,遊びでの危険を「4.日常の遊びでのハザード」,漠然と「ぶつかる」といった回答を「5.衝突」,暗い等を「6.防犯・その他」に分類した。
自由記述の分類の結果(Table 1),統制群は全分類で記述件数が減少したが,教育群においては1,2,3,6で件数が増加し,全体の件数が増加した。特に「3.心理面のハザード」が3.3倍の高い増加率となった。また,「5.衝突」の減少から,漠然としていたハザードの認識がより具体的になったことが示唆された。以上のことから,本教育で児童の種々のハザードへの意識が高まり,教育の有効性が示されたとともに,「3.心理面のハザード」の増加から,他者の不安全な規則違反に対する意識の芽生えを促すことが示唆された。
引用文献
岡ら (2015) 児童の自主性を生かした安全教育の効果 -校外版「ひなどり」の実践- 平成27年度日本人間工学会関西支部大会講演論文集,121-122.
学校での安全教育は,児童生徒等の危険の制御,自律的な安全行動の促進,および他者や社会の安全への貢献等を目標としている。これらを踏まえ,著者らは児童が自ら考え,行動することを目標とした安全教育プログラム「ひなどり」を開発・実施し,その教育効果を確認している(岡ら, 2015)。しかし, 「ひなどり」によって児童の危険への気づきが具体的にどのように変化したのかは明確でなかった。そこで本研究では,再度「ひなどり」を実施し,校区の危険の認識に対して質問紙調査を行うことで,教育によって具体的にどのような危険を見つけられるようになったかを検討した。
方 法
対象者と実施期間
大阪府内の公立A小学校5年生56名を対象に2016年9月上旬から10月下旬までの総合学習7コマ(45分/1コマ)と放課後や休み時間を利用した。
「ひなどり」の流れ
1コマ目;クラスの保健係と著者から児童の怪我の実態と対処法を説明した。2コマ目;担任が校区内の危険箇所を児童に指摘させ,そこでの行動目標をクラスで話し合った。3-4コマ目;班に分かれ校区を大人とともに探索し,危険箇所の確認と新たな危険箇所の指摘をさせ,現場を撮影した。5-6コマ目;撮影した写真等をもとに,そこでの具体的な行動目標を明示したポスターや動画を作成させた。7コマ目;班ごとに作品を学年児童全員の前で説明させ,行動目標を宣言させた。
教育効果の評価と手続き
「ひなどり」実施前に「校区の危険箇所」と「そこを危険だと思う理由」について自由記述を求めた(pre)。7コマ目が終了してから約4週間後に再度同一項目に回答を求めた(post)。なお,本研究では「ひなどり」を実施しない統制群として,2015年7月中旬と9月中旬に,A小学校と隣接した校区の公立B小学校5年生101人に同一内容の質問紙調査を行った際のデータを使用した。
結果と考察
児童の「校区の危険箇所」の指摘件数について,統制群は一人平均1.78件から1.29件へと減少したが,教育群は2.14件から3.66件へと増加した。
回答内容について,複数の理由を一度に記述している場合は単一の回答に分割した(例;「車がたくさん通ってぶつかる」は「車がたくさん通る」「ぶつかる」)。その後,著者がKJ法により,行政や事業者等の安全対策が行き届いていないものを「1.道路・設備不備によるハザード」,交通事故に発展する可能性があるものを「2.交通関係のハザード」,ルールの不遵守を指摘するものを「3.心理面のハザード」,遊びでの危険を「4.日常の遊びでのハザード」,漠然と「ぶつかる」といった回答を「5.衝突」,暗い等を「6.防犯・その他」に分類した。
自由記述の分類の結果(Table 1),統制群は全分類で記述件数が減少したが,教育群においては1,2,3,6で件数が増加し,全体の件数が増加した。特に「3.心理面のハザード」が3.3倍の高い増加率となった。また,「5.衝突」の減少から,漠然としていたハザードの認識がより具体的になったことが示唆された。以上のことから,本教育で児童の種々のハザードへの意識が高まり,教育の有効性が示されたとともに,「3.心理面のハザード」の増加から,他者の不安全な規則違反に対する意識の芽生えを促すことが示唆された。
引用文献
岡ら (2015) 児童の自主性を生かした安全教育の効果 -校外版「ひなどり」の実践- 平成27年度日本人間工学会関西支部大会講演論文集,121-122.