10:00 〜 12:00
[PG51] 児童会活動の一環として行った学校規模のソーシャルスキル教育と適応感
学校規模でのQUの活用について
キーワード:児童会活動, ソーシャルスキル教育, 適応感
目 的
ソーシャルスキルの不足は,一部の子どもの問題ではなく,広く一般の子どもの問題であるとの考えから伊佐(2010)は全校児童72人の公立小学校で学級規模のSSEを実施し「向社会的スキル」「社交性スキル」が有意に向上し,学級満足度尺度の被侵害得点が有意に低く承認得点は有意に向上した。しかし,学校週五日制や総合科の導入等により対人関係育成のプログラムを教育課程の中に位置付けたり授業時間の中に組み入れたりすることはかなり難しい(小野寺・河村,2003)。本研究では特別に授業の時間を設定せずに児童会活動の一環として学校規模のSSEを実施しどのような影響を与えるかを検討するものである。
方 法
対象児童 A県B小学校,1~6年生の児童(245名:男子118名,女子127名)を対象とした。調査時期は2014年10月27日~31日(Time1)に全学級で学級満足度尺度(河村,1997)と小学生用スキル尺度(河村,2001)を行い,実施後の2015年1月19日~23日(Time2)に同様に調査を行った。児童会の児童が出演したソーシャルスキルを理解させるためのビデオを作成し放送をすることで「言語的教示」と「モデリング」を全校一斉に行い,続いて,「リハーサル」と「ふり返り」を各学級担任が学級で行った。「リハーサル」と「ふり返り」ついては,ふり返りカードや低・中・高学年用の授業用資料を配布し,学級担任に使用するよう呼びかけた。SSEの取り組みについて児童の感想の発表を撮影しそれを全校放送した。
結 果
全校児童のTime1・2の学級満足度尺度の比較をした結果,被侵害得点が有意に低くなり承認得点は有意に向上した(Table1)。また,4~6年生の児童のTime1・2の4~6年用スキル尺度の比較をした結果,「配慮スキル」と「かかわりのスキル」がともに有意に向上していた。(Table2)
考 察
4~6年生の児童のスキルが有意に向上し,全校児童の被侵害得点が有意に低く承認得点は有意に向上した。このことから,児童会活動の一環として行った学校規模のSSEを実施することで,全校児童の学校適応感を高めたと思われる。また言語能力が高いほどモデリング効果が促進されるという結果(Rosenthal&Zimmerman,1978)から学年が上がるにつれて言語能力が高まると考えると本研究で1~3年生ではスキル尺度の得点に変化がみられなかったが4~6年生の児童のスキルが有意に向上したことを支持していると思われる。
引用文献
Rosenthal,T.L.&Zimmerman,B.J.(1978).Social learning and cognition.New York:Academic Press.
小野寺正巳・河村茂雄(2003).学校における対人関係能力育成プログラム研究の動向―学級単位の取り組みを中心に― カウンセリング研究,36,272-281.
伊佐貢一(2010).学校規模のソーシャルスキル教育実践モデルの構築 上越教育大学学校教育実践研究センター 教育実践研究第20集記念誌 教育実践研究へのいざない,30-39.
ソーシャルスキルの不足は,一部の子どもの問題ではなく,広く一般の子どもの問題であるとの考えから伊佐(2010)は全校児童72人の公立小学校で学級規模のSSEを実施し「向社会的スキル」「社交性スキル」が有意に向上し,学級満足度尺度の被侵害得点が有意に低く承認得点は有意に向上した。しかし,学校週五日制や総合科の導入等により対人関係育成のプログラムを教育課程の中に位置付けたり授業時間の中に組み入れたりすることはかなり難しい(小野寺・河村,2003)。本研究では特別に授業の時間を設定せずに児童会活動の一環として学校規模のSSEを実施しどのような影響を与えるかを検討するものである。
方 法
対象児童 A県B小学校,1~6年生の児童(245名:男子118名,女子127名)を対象とした。調査時期は2014年10月27日~31日(Time1)に全学級で学級満足度尺度(河村,1997)と小学生用スキル尺度(河村,2001)を行い,実施後の2015年1月19日~23日(Time2)に同様に調査を行った。児童会の児童が出演したソーシャルスキルを理解させるためのビデオを作成し放送をすることで「言語的教示」と「モデリング」を全校一斉に行い,続いて,「リハーサル」と「ふり返り」を各学級担任が学級で行った。「リハーサル」と「ふり返り」ついては,ふり返りカードや低・中・高学年用の授業用資料を配布し,学級担任に使用するよう呼びかけた。SSEの取り組みについて児童の感想の発表を撮影しそれを全校放送した。
結 果
全校児童のTime1・2の学級満足度尺度の比較をした結果,被侵害得点が有意に低くなり承認得点は有意に向上した(Table1)。また,4~6年生の児童のTime1・2の4~6年用スキル尺度の比較をした結果,「配慮スキル」と「かかわりのスキル」がともに有意に向上していた。(Table2)
考 察
4~6年生の児童のスキルが有意に向上し,全校児童の被侵害得点が有意に低く承認得点は有意に向上した。このことから,児童会活動の一環として行った学校規模のSSEを実施することで,全校児童の学校適応感を高めたと思われる。また言語能力が高いほどモデリング効果が促進されるという結果(Rosenthal&Zimmerman,1978)から学年が上がるにつれて言語能力が高まると考えると本研究で1~3年生ではスキル尺度の得点に変化がみられなかったが4~6年生の児童のスキルが有意に向上したことを支持していると思われる。
引用文献
Rosenthal,T.L.&Zimmerman,B.J.(1978).Social learning and cognition.New York:Academic Press.
小野寺正巳・河村茂雄(2003).学校における対人関係能力育成プログラム研究の動向―学級単位の取り組みを中心に― カウンセリング研究,36,272-281.
伊佐貢一(2010).学校規模のソーシャルスキル教育実践モデルの構築 上越教育大学学校教育実践研究センター 教育実践研究第20集記念誌 教育実践研究へのいざない,30-39.