日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PG(01-81)

ポスター発表 PG(01-81)

2017年10月9日(月) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PG74] 長期休業前後の児童の登校回避感情に学校適応感が与える影響

嶋田未菜美1, 島義弘2, 大坪治彦3 (1.鹿児島大学大学院, 2.鹿児島大学, 3.鹿児島大学)

キーワード:登校回避感情, 学校適応感, 長期休業

問題と目的
 文部科学省(2015)の児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査によると,学年が上がるごとに不登校の児童数は増加している。しかし,「学校に行きたくない。」と思うことは,多くの人が経験していることであり,珍しいことではない。本人の状況次第で,不登校になる可能性は,誰もがもっているといえる。この「学校に行きたくない」という感情について,森田(1991)は,「登校回避感情」とよんでいる。文部科学省(2014)の不登校に関する実態調査で,不登校のきっかけとなる時期についての調査が行われた結果,7月~9月の間に不登校となった人が全体の28.4%を占めた。このことから,長期休業明けである9月に,学校生活が再開するにあたり,友人関係,心身状態などによる学校への回避感情が高まりやすいことが推測される。
 そこで,本研究では長期休業前における児童の学校適応感が,長期休業明けの児童の登校回避感情にどのような影響を与えているのかを検討する。
方   法
調査対象:A県内の小学生427名(4年生155名,5年生151名,6年生121名)。回答については,学級担任に文書で,口頭による指示をお願いした。
調査期日:X年7月と9月の2回,調査を実施した。
学校適応感:鹿児島県総合教育センター(2014)が作成した質問紙である「学校楽しぃーと」を使用した。友達との関係,教師との関係,学習意欲,自己肯定感,心身の状態,学級集団における適応感の6つの観点から,児童の学校適応感を調査した。4件法で回答を求めた。
登校回避感情尺度:渡辺・小石(2000)の作成した中学生を対象とした登校回避感情尺度を参考に,「学校を休みたいと思う」など,3項目の質問を作成した。4件法で回答を求めた。記述統計はTable1に示した。
結果及び考察
 長期休業前後の登校回避感情尺度得点を比較するため,t検定を行った。その結果,長期休業後よりも長期休業前の方が児童の登校回避感情は高くなった (t(427)=3.71,p<.001)(Table2)。
 学校適応感が登校回避感情に及ぼす影響を調べるため,登校回避感情尺度得点差を目的変数,学校適応感得点を説明変数とした重回帰分析を行った(Table3)。その結果,友達との関係が良好でないほど(β=-.149,p<.01),教師との関係が良好でないほど(β=-.160,p<.01),自己肯定感が低いほど(β=.150,p<.01),登校回避感情は高まるという結果であった。反対に,学習意欲が高いほど(β=.314,p<.001),心身の状態が良好であるほど(β=.133,p<.05),登校回避感情は高まるという結果が得られた。
 これらの結果から,長期休業が始まる前に,友達や教師との関係が良好でない児童や,自己肯定感が低い児童は,長期休業明けの登校回避感情が高いという結果が得られた。また,長期休業前の学習意欲が高い児童や心身が健康な児童の場合は,長期休業明けの登校回避感情が高いという結果が得られた。