[PB07] 園の仲間遊びにおける感情語の使用
4歳クラス児はいつどのように遊戯的にネガティブ感情語に言及するか
Keywords:ネガティブ感情語、幼児、遊戯性
問題と目的
幼児期初期から就学前にかけての,社会的文脈での子供の感情語のプラグマティックな使用は,感情コンピテンスや他者理解の発達にも絡む重要な検討課題といえる(Lewis &Saarni,1985;Dunn & Brophy,2005,等)。園生活の遊びを通じた親しい仲間関係のやりとりの中で,幼児は感情語をどのように用いてやりとりを行っていくのであろうか。特に,ネガティブ感情語については,必ずしも葛藤状況のみで用いられるわけではなく,遊戯的に用いられる場合もある。本研究では,3歳クラス児に関する検討(岩田,2019,発心大会)に引き続き,4歳クラス児を対象とし,彼らが園の仲間遊びにおいて,いつどのようにネガティブ感情語に言及するかという点について検討を行う。
方 法
研究協力者:研究協力者:首都圏の大学附属幼稚園に通う,4歳クラス児
観察内容:朝の自由遊び時間(約2時間)において,概ね1か月に2回の割合で,室内及び屋外(一部の遊具)での3~5歳児の仲間遊びを対象に定期的な参与観察を行った。本稿では, 201X年以降3年間(3年度)のフィールドノート及びプロトコルデータに基づき,4歳児クラス児の仲間遊びで言及されたネガティブな感情語のうち,笑いを交えた遊戯的な状況でそれらの言及がみられたやりとり事例(43事例)を分析対象とし(一部保育者の介入含む),その言及状況を調べた。また、言及状況の変化を捉えるために前期(4~9月)と後期(10月~3月)に分けて出現時期を示した。
結果と考察
4歳クラス児の仲間遊びでの遊戯的なネガティブ感情語への言及状況としては,【a】仲間や保育者の働きかけに対する仲間間の遊戯的な反応として;男児1「じゃ,一緒に(本を)読もう」男児2「やだー(嫌)!」(笑いながら)と述べる,等,【b】仲間への遊戯的な注意喚起として;男児1「(木のロープにぶるさがることについて)あぶないよー」,男児2「どこがあぶないんだよ!」男児1「あぶないっておれがいってんだろー!」笑いながらふざけた様子でと述べる,等,【c】仲間や保育者の行動を遊戯的に阻止するものとして;隣の女児1が筒を口にあてて,何か叫んだのに対し女児2「うるさーい」とふざけた様子で述べる,等,【d】状況や仲間の言動に対する否定的な判断を遊戯的に伝えるものとして;女児1がおどけたように手にクレヨンを塗って仲間3人に見せる。女児1「かっこわるい,手袋みたい」と笑いながら述べる,等,【e】仲間に遊戯的に行動を促したり,必要性を伝えたりするものとして;「早くロールケーキ作ろうぜ,1週間かかったらだめなんだよー」(笑いながら)と述べる,等,【f】自分の行動(できなかったこと)について反省や自嘲をふまえ遊戯的に伝えるものとして;『赤ちゃん』に『ミルク』を飲ませていないことを怒られた『お父さん』役の男児「ミルク飲んで反省しなさい!」と自分で自分に怒るように,笑いながら述べる,等,【g】遊び設定に関わる否定的な意見を遊戯的に伝えるものとして;女児1「今日はホットケーキなしで」に対し,女児2「だめだめ」とふざけたように答える,等,【h】遊び(ごっこ遊び含む)状況の共有に関わる遊戯的な発言やセリフ(a~g除く);「わーやだー(嫌)」と笑い合いながら,男児2人が砂場で腕立て伏せをする,等,【i】感情経験を振り返り遊戯的に伝えるものとして;もめている仲間を諭したあと,「他の子(当事者たち)に(自分が)怒っちゃうくらい,(当事者たちの様子が)恐かった」と笑いながら述べる,等であった。
総じて,4歳クラス期では,3歳クラス期に続き,〈【a】遊戯的反応〉が,時期を通じネガ感情が遊戯的に語られやすい文脈であること(Figure 1),また,4歳クラス期から出現した,〈【f】反省・自嘲的〉,〈【i】感情経験の振り返り〉を含む,自己の多様なネガ感情に関わる言及が同時期の仲間との関わりの遊戯性をより高めるものとして用いられるようになってくる可能性が窺われた。
付 記
科学研究費(基盤研究(C),課題番号17K04343,研究代表者 岩田美保)の助成を受けた.
幼児期初期から就学前にかけての,社会的文脈での子供の感情語のプラグマティックな使用は,感情コンピテンスや他者理解の発達にも絡む重要な検討課題といえる(Lewis &Saarni,1985;Dunn & Brophy,2005,等)。園生活の遊びを通じた親しい仲間関係のやりとりの中で,幼児は感情語をどのように用いてやりとりを行っていくのであろうか。特に,ネガティブ感情語については,必ずしも葛藤状況のみで用いられるわけではなく,遊戯的に用いられる場合もある。本研究では,3歳クラス児に関する検討(岩田,2019,発心大会)に引き続き,4歳クラス児を対象とし,彼らが園の仲間遊びにおいて,いつどのようにネガティブ感情語に言及するかという点について検討を行う。
方 法
研究協力者:研究協力者:首都圏の大学附属幼稚園に通う,4歳クラス児
観察内容:朝の自由遊び時間(約2時間)において,概ね1か月に2回の割合で,室内及び屋外(一部の遊具)での3~5歳児の仲間遊びを対象に定期的な参与観察を行った。本稿では, 201X年以降3年間(3年度)のフィールドノート及びプロトコルデータに基づき,4歳児クラス児の仲間遊びで言及されたネガティブな感情語のうち,笑いを交えた遊戯的な状況でそれらの言及がみられたやりとり事例(43事例)を分析対象とし(一部保育者の介入含む),その言及状況を調べた。また、言及状況の変化を捉えるために前期(4~9月)と後期(10月~3月)に分けて出現時期を示した。
結果と考察
4歳クラス児の仲間遊びでの遊戯的なネガティブ感情語への言及状況としては,【a】仲間や保育者の働きかけに対する仲間間の遊戯的な反応として;男児1「じゃ,一緒に(本を)読もう」男児2「やだー(嫌)!」(笑いながら)と述べる,等,【b】仲間への遊戯的な注意喚起として;男児1「(木のロープにぶるさがることについて)あぶないよー」,男児2「どこがあぶないんだよ!」男児1「あぶないっておれがいってんだろー!」笑いながらふざけた様子でと述べる,等,【c】仲間や保育者の行動を遊戯的に阻止するものとして;隣の女児1が筒を口にあてて,何か叫んだのに対し女児2「うるさーい」とふざけた様子で述べる,等,【d】状況や仲間の言動に対する否定的な判断を遊戯的に伝えるものとして;女児1がおどけたように手にクレヨンを塗って仲間3人に見せる。女児1「かっこわるい,手袋みたい」と笑いながら述べる,等,【e】仲間に遊戯的に行動を促したり,必要性を伝えたりするものとして;「早くロールケーキ作ろうぜ,1週間かかったらだめなんだよー」(笑いながら)と述べる,等,【f】自分の行動(できなかったこと)について反省や自嘲をふまえ遊戯的に伝えるものとして;『赤ちゃん』に『ミルク』を飲ませていないことを怒られた『お父さん』役の男児「ミルク飲んで反省しなさい!」と自分で自分に怒るように,笑いながら述べる,等,【g】遊び設定に関わる否定的な意見を遊戯的に伝えるものとして;女児1「今日はホットケーキなしで」に対し,女児2「だめだめ」とふざけたように答える,等,【h】遊び(ごっこ遊び含む)状況の共有に関わる遊戯的な発言やセリフ(a~g除く);「わーやだー(嫌)」と笑い合いながら,男児2人が砂場で腕立て伏せをする,等,【i】感情経験を振り返り遊戯的に伝えるものとして;もめている仲間を諭したあと,「他の子(当事者たち)に(自分が)怒っちゃうくらい,(当事者たちの様子が)恐かった」と笑いながら述べる,等であった。
総じて,4歳クラス期では,3歳クラス期に続き,〈【a】遊戯的反応〉が,時期を通じネガ感情が遊戯的に語られやすい文脈であること(Figure 1),また,4歳クラス期から出現した,〈【f】反省・自嘲的〉,〈【i】感情経験の振り返り〉を含む,自己の多様なネガ感情に関わる言及が同時期の仲間との関わりの遊戯性をより高めるものとして用いられるようになってくる可能性が窺われた。
付 記
科学研究費(基盤研究(C),課題番号17K04343,研究代表者 岩田美保)の助成を受けた.