[PC34] ビッグヒストリーによる俯瞰力向上のための学習プロセスの検討
宇宙史,地球史,生命史,人類史の学びを通して
キーワード:ビッグヒストリー、俯瞰力、学習プロセス
はじめに
近年,ビッグヒストリーという新しい学問分野が注目を浴びている。ビッグヒストリーは,『宇宙創成のビッグバンから現在までの歴史』を学ぶという壮大なものであり,豪マッコーリー大学のデヴィッド・クリスチャンが1989年から開始したものである。日本では,東北大学,桜美林大学で実際の授業シラバスが公開されている。
本研究は,女子短大生に対してビッグヒストリーを学ばせ,俯瞰力向上を目的とした授業を展開する。そして,学習前と学習後の俯瞰力を学生自身に自己評価させ,授業の有効性を確認する。さらに,学習後の俯瞰力が向上した場合,どのような学習プロセスが俯瞰力を向上させたのか,具体的に検討する。
方 法
本学におけるビッグヒストリーに関する授業は,短大共通教育の「モダン・サイエンス」という科目により実施された。履修者は57名である。俯瞰力の調査は,第1回と第15回の終了後,研究同意を得た上で,学内LMSにより自己評価方式で行った。俯瞰力の質問項目は,津々木ら(2015)の先行研究を参考に,以下5つ(A~E)の質問を新しく作成して使用した。
A.普段から物事や課題の全体を見渡して考える傾向があると思う。B.一見関連がないように思えることでも共通点を発見することが得意だと思う。C.最初に学ぶテーマや課題を全体的に見ることを心がけている。D.自分の立場に関係なく,客観的に一歩引いた所から全体像を確認できる方だと思う。E.物事を広い視野でみることが好きだと思う。
回答方法は,「全く当てはまらない~とてもよく当てはまる」までの6件法とした。
次に俯瞰力を向上させるための学習プロセスとして,毎時授業後にビッグヒストリーに関する知識の穴埋め問題を数問出題し,さらに授業内容に関する振り返りを自由記述形式で促した。提出方法は,学内LMSを活用し,第15回終了後に自由記述の文字数を合計して,総振り返り文字数(Ref字数)とした。また,授業終了後アンケートにおいて,到達目標に対する理解度などを5件法で回答させた。
分析結果
履修者57名の内,全データが揃っている55名を分析対象とした。俯瞰力のクロンバックのα係数は,学習前0.73,学習後0.79と信頼性に問題はなかった。
初めに授業の有効性を確認するため,学習前と学習後の俯瞰力の平均値について「対応ありt検定」を行った結果,有意に向上していた(t(54)=7.64, p<.001)。次に「どのような学習プロセスが俯瞰力を向上させたのか」を具体的に検討するため,共分散構造分析を行った。Figure 1にその「学習プロセス」を示す。学習後の俯瞰力に対する学習プロセスの影響度について,標準化総合効果係数により記述すると(科学知識,理解度,Ref字数,欠席数)=(.54, .33, .16, -.17)となった。学習プロセスとして,授業後の「振り返り活動」が,科学知識を増加させ,理解度の向上に伴って俯瞰力を向上させていることが示された。
近年,ビッグヒストリーという新しい学問分野が注目を浴びている。ビッグヒストリーは,『宇宙創成のビッグバンから現在までの歴史』を学ぶという壮大なものであり,豪マッコーリー大学のデヴィッド・クリスチャンが1989年から開始したものである。日本では,東北大学,桜美林大学で実際の授業シラバスが公開されている。
本研究は,女子短大生に対してビッグヒストリーを学ばせ,俯瞰力向上を目的とした授業を展開する。そして,学習前と学習後の俯瞰力を学生自身に自己評価させ,授業の有効性を確認する。さらに,学習後の俯瞰力が向上した場合,どのような学習プロセスが俯瞰力を向上させたのか,具体的に検討する。
方 法
本学におけるビッグヒストリーに関する授業は,短大共通教育の「モダン・サイエンス」という科目により実施された。履修者は57名である。俯瞰力の調査は,第1回と第15回の終了後,研究同意を得た上で,学内LMSにより自己評価方式で行った。俯瞰力の質問項目は,津々木ら(2015)の先行研究を参考に,以下5つ(A~E)の質問を新しく作成して使用した。
A.普段から物事や課題の全体を見渡して考える傾向があると思う。B.一見関連がないように思えることでも共通点を発見することが得意だと思う。C.最初に学ぶテーマや課題を全体的に見ることを心がけている。D.自分の立場に関係なく,客観的に一歩引いた所から全体像を確認できる方だと思う。E.物事を広い視野でみることが好きだと思う。
回答方法は,「全く当てはまらない~とてもよく当てはまる」までの6件法とした。
次に俯瞰力を向上させるための学習プロセスとして,毎時授業後にビッグヒストリーに関する知識の穴埋め問題を数問出題し,さらに授業内容に関する振り返りを自由記述形式で促した。提出方法は,学内LMSを活用し,第15回終了後に自由記述の文字数を合計して,総振り返り文字数(Ref字数)とした。また,授業終了後アンケートにおいて,到達目標に対する理解度などを5件法で回答させた。
分析結果
履修者57名の内,全データが揃っている55名を分析対象とした。俯瞰力のクロンバックのα係数は,学習前0.73,学習後0.79と信頼性に問題はなかった。
初めに授業の有効性を確認するため,学習前と学習後の俯瞰力の平均値について「対応ありt検定」を行った結果,有意に向上していた(t(54)=7.64, p<.001)。次に「どのような学習プロセスが俯瞰力を向上させたのか」を具体的に検討するため,共分散構造分析を行った。Figure 1にその「学習プロセス」を示す。学習後の俯瞰力に対する学習プロセスの影響度について,標準化総合効果係数により記述すると(科学知識,理解度,Ref字数,欠席数)=(.54, .33, .16, -.17)となった。学習プロセスとして,授業後の「振り返り活動」が,科学知識を増加させ,理解度の向上に伴って俯瞰力を向上させていることが示された。