日本教育心理学会第61回総会

準備委員長あいさつ・ご案内

準備委員長あいさつ
 
教育心理学を「自主創造」する
―日本教育心理学会第61回総会によせて―

第61回総会準備委員会(日本大学)
委員長  岡 隆
 

 昨年の第60回総会は,人でいえば還暦の年,新たな誕生でした。その節目となる総会が慶應義塾大学で開催され,福澤諭吉の理念に基づきながら「教育を実学(サイヤンス)する」という統一テーマのもと,会員の一人一人が日ごろの研究や実践を根本から見直すよい機会となりました。今年は第61回,人でいえば1歳になります。赤ちゃんも1歳ともなると,だれに命じられたわけでも,だれに教えられたわけでもないのに,自分でいろんなことをし,いろんなことができるようになります。
 日本大学の教学の理念は「自主創造」という言葉に集約されています。日本大学は明治22(1889)年に創立された日本法律学校を前身とし,松下村塾出身の初代司法大臣の山田顕義を学祖としています。学祖は,時の司法大臣として,日本の社会事情と世界の趨勢を考慮して「日本人としての主体性の認識と広く世界的視野に立った人材の育成」を教育の目標としました。この目標は,現在の学則のなかにも「日本精神にもとづき,道統をたつとび,憲章にしたがい,自主創造の気風をやしない,文化の進展をはかり,世界の平和と人類の福祉とに寄与することを目的とする」と謳われています。
 自主創造とは,自ら学び,自ら考え,自ら道をひらくこととされていますが,昨年,日本大学は,自らがこの理念をないがしろにしたとしか思えないような不祥事で世間をお騒がせしました。自主創造の気風をやしなうどころか,権威や命令への絶対の服従を強い,仲間内の伝統やしきたりへの追従と付和雷同をよしとする,そういう気風はなかったのか。今,現場の教職員の多くは,あらためて自主創造の理念に立ち返ることの大切さをかみしめるとともに,一人ひとりが自らの日常の大学生活や教育実践を通してこの理念の実現に資するよう努力することを誓っています。
  ひるがえって,日本の教育心理学に目を向けると,第60回の還暦総会を祝ったように,教育心理学も,ひとつの学問ディシプリンとして,十分に確立し成熟し,高度化,複雑化,組織化しているように思われます。それは発展がもたらす必然として歓迎すべきことかもしれませんが,そのなかにあっての懸念は,現場の研究者や実践者一人ひとりが,いわば権威として確立された概念や方法や組織に圧倒されて,自ら考えることを放棄し,「よくわからないけれども,そうやるものだ,そうやっておけば,とりあえずまちがいはない」といった,ルーチン化されたお作法主義,伝統主義,教条主義に陥っていないかということです。このような気風は,パワハラ,アカハラの温床ともなりえます。日本大学の不祥事を日本教育心理学会に投影しているにすぎないとのお叱りも覚悟ですが,実際に学会のさまざまな場面で漏れ聞くところでもあります。
 日本教育心理学会総会も還暦を迎え,すでに1歳。第61回総会は,自ら学び,自ら考え,自ら道をひらくしかなかった草創期に思いをいたし,いまいちど自らの足元を見つめ直し,そこから新たに生まれてくるものを育んでいくための契機,機会としていただければ幸いです。「自主創造」を統一テーマのように装っていますが,要は,自分で好きにやりましょう,ということです。総会準備委員会の企画も,その趣旨にそって,各委員の自主創造に委ねましたので,統一感がありません。ご理解くだされば幸いです。
 会員のみなさまには,第61回総会が開催される日本大学文理学部キャンパスにふるってご参集いただけますことを,心より願っております。

 

 

第61回(2019年)総会のご案内

会員の皆様へ,「第61回(2019年)総会のご案内」をお送りしました。以下よりダウンロードもできます。
第61回(2019年)総会のご案内 (PDF:877KB)