[PC39] チームワーク能力トレーニングによる基礎的・応用的スキルの変化
キーワード:チームワーク、ソーシャルスキル、ソーシャルスキル・トレーニング
問題と目的
チームワーク能力は,チームワークを実行するための個人の能力である(相川他,2012)。相川他(2012)では,Dickinson & McIntyre(1997)にならい,チームワーク能力を基礎的スキルであるコミュニケーション能力が応用的スキルである他の4つの能力に影響を与えることを想定したモデルが構成されている。このモデルに基づけば,コミュニケーション能力のトレーニングによって,他の応用的スキルにも変化がみられる可能性がある。本研究では,基礎的スキルであるコミュニケーション能力,応用的スキルであるチーム志向能力,バックアップ能力のトレーニングを実施し,通常の事前事後の測定に加え,コミュニケーション能力のトレーニングが終了した時点での測定も実施し,トレーニングによってどのように各スキルが変化していくのかをより詳細に検討する。
方 法
研究参加者 実施群:心理学関連の演習科目を履修した女子大学生25名。非実施群:心理学関連の講義科目を履修した女子大学生120名(分析対象34名)。トレーニング内容 NPO法人教育テスト研究センター(CRET)によって開発されたチームワーク能力トレーニングのプログラムを使用した。このプログラムは,相川他(2012)のチームワーク能力尺度に基づいて作成されており,チームワーク能力を構成するコミュニケーション能力,チーム志向能力,バックアップ能力,モニタリング能力,リーダーシップ能力の5つの能力を学ぶ20セッションで構成されている。本研究では,2018年4月から7月にかけて,コミュニケーション能力,チーム志向能力,バックアップ能力の12セッションを実施群に対して実施した。これらの手続きは渡部(2018)と同様である。調査手続き トレーニング実施前(Time 1;2018年4月),コミュニケーション能力のトレーニング実施後(Time 2;6月),すべてのトレーニング実施後(Time 3;7月)の3回の調査を実施した。調査内容は,チームワーク能力尺度(相川他, 2012)の72項目6件法であった。他にも測定された項目があったが,本研究では分析対象としないため記述を省略する。
結果と考察
チームワーク能力の下位尺度得点についてTime 1からTime 2,Time 1からTime 3の変化量を求めた(Table 1)。下位尺度得点の変化量について,実施状況と測定時期を要因とする分散分析を行った結果,チームワーク能力のうち,チーム志向能力とバックアップ能力において実施条件と測定時期の交互作用が有意であり,実施群でTime 1からTime 2よりTime 1からTime 3の変化量が大きかった(いずれの能力についてもp<.01)。したがって,基礎的スキルであるコミュニケーション能力のトレーニングが終了した時点では,いずれのスキルにも変化がみられず,基礎的スキルと応用的スキルのトレーニングが両方終了してから,2つの応用的スキルが向上したことになる。コミュニケーション能力の向上は,Time 1からTime 2でもTime 1からTime 3でも示されなかった。コミュニケーション能力のトレーニングの機能について,さらなる検討が求められる。
チームワーク能力は,チームワークを実行するための個人の能力である(相川他,2012)。相川他(2012)では,Dickinson & McIntyre(1997)にならい,チームワーク能力を基礎的スキルであるコミュニケーション能力が応用的スキルである他の4つの能力に影響を与えることを想定したモデルが構成されている。このモデルに基づけば,コミュニケーション能力のトレーニングによって,他の応用的スキルにも変化がみられる可能性がある。本研究では,基礎的スキルであるコミュニケーション能力,応用的スキルであるチーム志向能力,バックアップ能力のトレーニングを実施し,通常の事前事後の測定に加え,コミュニケーション能力のトレーニングが終了した時点での測定も実施し,トレーニングによってどのように各スキルが変化していくのかをより詳細に検討する。
方 法
研究参加者 実施群:心理学関連の演習科目を履修した女子大学生25名。非実施群:心理学関連の講義科目を履修した女子大学生120名(分析対象34名)。トレーニング内容 NPO法人教育テスト研究センター(CRET)によって開発されたチームワーク能力トレーニングのプログラムを使用した。このプログラムは,相川他(2012)のチームワーク能力尺度に基づいて作成されており,チームワーク能力を構成するコミュニケーション能力,チーム志向能力,バックアップ能力,モニタリング能力,リーダーシップ能力の5つの能力を学ぶ20セッションで構成されている。本研究では,2018年4月から7月にかけて,コミュニケーション能力,チーム志向能力,バックアップ能力の12セッションを実施群に対して実施した。これらの手続きは渡部(2018)と同様である。調査手続き トレーニング実施前(Time 1;2018年4月),コミュニケーション能力のトレーニング実施後(Time 2;6月),すべてのトレーニング実施後(Time 3;7月)の3回の調査を実施した。調査内容は,チームワーク能力尺度(相川他, 2012)の72項目6件法であった。他にも測定された項目があったが,本研究では分析対象としないため記述を省略する。
結果と考察
チームワーク能力の下位尺度得点についてTime 1からTime 2,Time 1からTime 3の変化量を求めた(Table 1)。下位尺度得点の変化量について,実施状況と測定時期を要因とする分散分析を行った結果,チームワーク能力のうち,チーム志向能力とバックアップ能力において実施条件と測定時期の交互作用が有意であり,実施群でTime 1からTime 2よりTime 1からTime 3の変化量が大きかった(いずれの能力についてもp<.01)。したがって,基礎的スキルであるコミュニケーション能力のトレーニングが終了した時点では,いずれのスキルにも変化がみられず,基礎的スキルと応用的スキルのトレーニングが両方終了してから,2つの応用的スキルが向上したことになる。コミュニケーション能力の向上は,Time 1からTime 2でもTime 1からTime 3でも示されなかった。コミュニケーション能力のトレーニングの機能について,さらなる検討が求められる。