[PE03] 保育者による子どもの発達に応じた保育内容の工夫
適性処遇交互作用の観点から
キーワード:認知発達、適性処遇交互作用、協同性
目 的
昨年の報告では,実習生による幼児教育における適性処遇交互作用のエピソードを分析した。子どもの発達や性格,事前の経験等によって保育者が保育の仕方を変えていること,年長児になると子どもの協同性に依拠した保育を展開する傾向が見いだされた。今回の報告では,適性の中でも特に重要と考えられる発達に焦点を絞り,現場の保育者によるエピソードを分析した。仮説は次のとおりである。1.保育者は年齢によって保育内容を変えるだけでなく同年齢のクラス内での発達差を考慮して保育を構成しているが,その意識の配分は年齢によって異なり,年長児ほどクラス内の発達差に注目し対応する傾向があるだろう。2.保育者が保育のどのような場面で発達差を意識するかについては,多様な場面であり,データとしては分散した状態で出てくると考えられる。3.意識される発達の側面としては,認知・思考や社会性の発達が多くを占めるであろう。4.発達差への対応も子どもの年齢によって異なり,年長児クラスでは,子ども同士の相互作用による対応,つまり協同性を踏まえた対応が多いであろう。これは昨年のデータからも伺えるところである。
方 法
2018年度阪神間のS市の保育士キャリアアップ講座の「幼児の発達に応じた保育内容」を担当した際に,研修後,受講者に依頼し,事前課題で書いてきたエピソードでも,新たなエピソードでも良いので,1つあるいは2つのエピソードを記述してもらったものを分析した。時間は次の研修までの休憩時間を使い,任意で無記名での提出を依頼した。受講者196名中173人の提出で,88.3%であった。その中には対象の子どもの年齢が記載していないもの,エピソードの具体性に欠に欠けるため,分析不能なものもあり,最終的な3歳から5歳のデータの分析対象エピソード数は,147であった。分類の仕方については,結果及び考察あるいは図の中に記載している。
結果及び考察
1.年齢比較とクラス内比較については,どの年齢においても有意な差はなく,年齢比較の方が5割~6割であった。しかし,年齢混合クラスにおいては年齢比較を強く意識しながら保育をしていることが示された。2.発達を考慮した保育場面については,Figure1に示した通りであり,期待したほど自由遊び場面でのエピソードは得られず,5歳児では劇遊びや運動会等の行事の前後の保育エピソードが一番多かった。3.意識された発達の側面については,全体では,認知面が44.4%,微細運動(鋏の使用など)が25.4%であった。どの年齢でも認知が一番多かったが,次に多いものは異なり,5歳児クラスでは社会性の発達が挙げられていた(17.8%)。4.年齢による発達に応じた対応の違いについては,Figure 2に示している。特に,3歳児では多くの初めての経験に自主的に取り組めるような環境構成を重視し,5歳児クラスでは,同年齢の子どもとの相互交渉によって,言い換えると協同性の発揮の中で,子どもの発達の個人差に対応していることが示された。しかし,そうした仕組みを計画的に保育に組み込む保育者の専門性こそが重要であり,そのノウハウを適性処遇交互作用の枠組みで,理論的考察を踏まえながら,まとめていきたいと考える。
昨年の報告では,実習生による幼児教育における適性処遇交互作用のエピソードを分析した。子どもの発達や性格,事前の経験等によって保育者が保育の仕方を変えていること,年長児になると子どもの協同性に依拠した保育を展開する傾向が見いだされた。今回の報告では,適性の中でも特に重要と考えられる発達に焦点を絞り,現場の保育者によるエピソードを分析した。仮説は次のとおりである。1.保育者は年齢によって保育内容を変えるだけでなく同年齢のクラス内での発達差を考慮して保育を構成しているが,その意識の配分は年齢によって異なり,年長児ほどクラス内の発達差に注目し対応する傾向があるだろう。2.保育者が保育のどのような場面で発達差を意識するかについては,多様な場面であり,データとしては分散した状態で出てくると考えられる。3.意識される発達の側面としては,認知・思考や社会性の発達が多くを占めるであろう。4.発達差への対応も子どもの年齢によって異なり,年長児クラスでは,子ども同士の相互作用による対応,つまり協同性を踏まえた対応が多いであろう。これは昨年のデータからも伺えるところである。
方 法
2018年度阪神間のS市の保育士キャリアアップ講座の「幼児の発達に応じた保育内容」を担当した際に,研修後,受講者に依頼し,事前課題で書いてきたエピソードでも,新たなエピソードでも良いので,1つあるいは2つのエピソードを記述してもらったものを分析した。時間は次の研修までの休憩時間を使い,任意で無記名での提出を依頼した。受講者196名中173人の提出で,88.3%であった。その中には対象の子どもの年齢が記載していないもの,エピソードの具体性に欠に欠けるため,分析不能なものもあり,最終的な3歳から5歳のデータの分析対象エピソード数は,147であった。分類の仕方については,結果及び考察あるいは図の中に記載している。
結果及び考察
1.年齢比較とクラス内比較については,どの年齢においても有意な差はなく,年齢比較の方が5割~6割であった。しかし,年齢混合クラスにおいては年齢比較を強く意識しながら保育をしていることが示された。2.発達を考慮した保育場面については,Figure1に示した通りであり,期待したほど自由遊び場面でのエピソードは得られず,5歳児では劇遊びや運動会等の行事の前後の保育エピソードが一番多かった。3.意識された発達の側面については,全体では,認知面が44.4%,微細運動(鋏の使用など)が25.4%であった。どの年齢でも認知が一番多かったが,次に多いものは異なり,5歳児クラスでは社会性の発達が挙げられていた(17.8%)。4.年齢による発達に応じた対応の違いについては,Figure 2に示している。特に,3歳児では多くの初めての経験に自主的に取り組めるような環境構成を重視し,5歳児クラスでは,同年齢の子どもとの相互交渉によって,言い換えると協同性の発揮の中で,子どもの発達の個人差に対応していることが示された。しかし,そうした仕組みを計画的に保育に組み込む保育者の専門性こそが重要であり,そのノウハウを適性処遇交互作用の枠組みで,理論的考察を踏まえながら,まとめていきたいと考える。