日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-67)

2019年9月15日(日) 13:30 〜 15:30 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:30~14:30
偶数番号14:30~15:30

[PE37] 大学生の友人関係における消極的関係維持(10)

大学および友人関係への適応と消極的関係維持動機との関係

高木邦子1, 安藤史高2 (1.静岡文化芸術大学, 2.岐阜聖徳学園大学)

キーワード:友人関係の消極的維持、大学適応、友人関係適応

問題・目的
 大学生が友人関係で深刻な葛藤を経験した際に,物理的距離は維持したまま気持ちの面で距離を置くことを高木・安藤(2008)は「消極的関係維持」と呼んでいる。安藤・高木(2010)では,この消極的関係維持を取る動機を「孤立評価不安」「葛藤回避志向」「群れ志向」「対人関係規範」の4因子から測定する尺度を提案している。
 一方,高木・安藤(2010)では回想法を用い,友人との葛藤後の対処を「維持」,「消極的維持」「回避」と分類したうえで,選択した対処と友人の人数,友人関係満足感,ソーシャル・サポートといった友人関係適応指標との関係を検討した。結果,女子学生で「消極的維持」を取る者が「維持」の対処を取る者よりも仲の良い友人を多く報告した。この結果から,関係の消極的維持の対処を取る女子学生は既に適応的な友人関係を形成しており,深刻な葛藤があった相手と「接近」するよりも,心理的距離を置いた「消極的維持」をすることに抵抗が少ないものと推測される。
 ただし高木・安藤(2010)では,友人関係適応と消極的関係維持動機との関係を直接検討したわけではない。そこで本発表では,安藤・高木(2010)で示した対人関係維持動機の各下位尺度と,大学や大学の友人関係への適応との関係を検討する。
方  法
実施方法
 東海地方の大学生127名(男性55名,女性70名,不明1名)を対象に質問紙調査を実施した。授業内で研究目的を説明した後,質問紙を配布しその場で回答を求め回収した。
調査項目 
a.対人関係維持動機尺度(41項目)
 安藤・高木(2010)による対人関係維持動機尺度について,「あてはまらない(1)」~「あてはまる(5)」の5件法により評定を得た。
b.大学適応感尺度(9項目)
 古市(1991)による「学校ぎらい感情測定尺度」を参考に作成した。「まったくあてはまらない(1)」~「よくあてはまる(5)」の5件法により評定を得た。高得点ほど大学に適応していると見なす。
c.大学の友人関係適応感尺度(6項目)
 出口(2005)による大学生活への適応を測定する尺度から「対人関係に対する適応感」項目について,「まったく思わない(1)」~「とてもそう思う(5)」の5件法による評定を得た。高得点ほど大学の友人関係に適応していると見なす。
結果・考察
 対人関係維持動機尺度については安藤・高木(2019)にならい下位尺度得点を算出した。また,大学への適応感得点,大学の友人関係への適応感得点をそれぞれ算出した。なお,性差を検討したところ,消極的関係維持動機の「共行動志向」(t(122)=3.20,p <.01),大学適応感(t(122)=2.05,p <.05),友人関係適応感(t(123)=3.78,p <.001)は女性の方が有意に高得点であったため,分析は男女別に行った。
 対人関係維持動機尺度,大学適応感,友人関係適応感の相関をTable 1に示す。男子学生では,友人関係適応と対人関係維持動機の「葛藤回避志向」との間に弱い負の,「共行動志向」との間に弱い正の相関が示された。また女子学生では,友人関係適応と対人関係維持動機の「孤立評価不安」との間に弱い負の相関が示された。
 この結果は,友人関係適応感と消極的関係維持動機との関係には性差があり,対人関係の消極的維持が友人関係への不適応とかかわる動機による場合と,適応とかかわる動機による場合あることを示唆している。友人関係における消極的関係維持が効果的な対処といえるのか否か,その効果から意義を整理する必要がある。