日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-67)

2019年9月15日(日) 13:30 〜 15:30 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:30~14:30
偶数番号14:30~15:30

[PE65] 登校規範意識はストレスの源になるのか

欠席志向性が高い中学生を対象に

Hou Yuejiang1, 原田勇希2 (1.北海道大学, 2.高知大学・日本学術振興会)

キーワード:登校規範意識、欠席、ストレス

問  題
 侯・原田(2019)は項目反応理論に基づいて登校に対する忌避感情から苦痛感情までを測定範囲とする欠席志向性尺度を開発している。本尺度への回答をクラスタ分析した結果,抽出された欠席志向性の“深刻群”は,他群よりも有意に欠席日数が多いことから,苦痛感情を持つ子どもは実際に学校を欠席する傾向があると考察されている。
 一方で,「学校にいる時間がつらすぎてどうしても帰りたくなってしなう」などの項目に肯定的な回答をする深刻群であっても,欠席日数が不登校と称される水準ではなく,登校しようと努力している様子が伺われた。こうした状態において「学校に行くべきだ」という規範意識は深刻な精神的葛藤を起こすと危惧されている(本間,2000)。また,欠席志向性が高い子どもが無理をして登校することは,深刻なストレス源であると推測される。
 本研究は登校に対する苦痛感情が強い子どもを対象とし,登校規範意識と欠席行動がストレス反応に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。
方  法
調査協力者 公立中学校1校の1―3年生(n =347)のうち,クラスタ分析で抽出された欠席志向性深刻群(n=87)(侯・原田,2019)を用いた。
調査内容 (1)ストレス反応 「抑うつ・不安感情」因子(以下,うつ不安)の3項目を利用した(岡安・嶋田・坂野,1992)。 (2)登校規範意識 本間(2000)を参考した(項目例「病気やけが以外で学校を休むことはよくないことだ」)。 (3)欠席日数 生徒の了承と学校長の許可を得た上で取得した(全日課数32日)。
結果と考察
 各変数の基本統計量と男女別の相関係数をTable 1に示した。性別によって変数間の相関係数が異なる可能性が考えられたため,以下の分析では性別を統制変数とし,交互作用を検討する。
 欠席日数より欠席なし群(0日)と欠席あり群(1日以上)に分け,うつ不安を目的変数とする階層的重回帰分析を行った。投入変数と分析結果をTable 2に示した(標準化偏回帰係数)。
 二次の交互作用が検出されたため,単純交互作用を検討した。女子において欠席の有無と規範意識の交互作用が見られ,欠席なし群では規範意識がうつ不安を高める効果が認められた。
 結論として,規範意識は登校願望を抑制する効果を持つ(本間,2000)一方で,苦痛感情が強いにも関わらず欠席行動を取らない女子にとって,規範意識はストレス反応を高める効果があることから,心身の健康に対するリスクがあるといえる。