[PG01] 幼児期の情動発達と行動特徴との関連に関する研究(1)
情動の年齢別特徴
キーワード:情動発達、行動特徴、幼児
問題と目的
本研究は,幼児期から児童期における情動発達のアセスメント・スケールを開発することを目的とした研究の一部である。児童期の情動発達の特徴,典型発達児と「気になる」子どもの違いなどについては本郷他(2017,2018)で述べた。そこで,本報告では,幼児期の情動発達に関する調査の結果に基づき,幼児の情動発達の年齢的特徴を明らかにすることを目的とした。
方 法
1.調査対象: 保育所,認定こども園の担任に,クラスに在籍しているすべての子ども(障害児保育の対象児は除く)について評定を求めた。本報告では,回収された16園1068名(4歳児352名,5歳児381名,6歳児335名;男児526名,女児542名)のデータを分析した。
2.調査時期:2019年1月~2月。
3.調査内容:(1) 情動発達:「喜んでいることを表情で表現する」<表情による表現>,「悲しんでいることを言葉で表現する」<言葉による表現>,「怒っている気持ちを抑える」<抑制>,「自分ができることに誇りをもっている」<誇り・恥>,「友だちの悲しい気持ちがわかる」<理解>,「友だちのうれしい気持ちを自分のことに」<共感>,「ちょっとしたことで驚く」<過敏さ>などの情動に関する7領域20項目について,「全くない」(1)~「よくある」(5)の5段階で評定しもらった。
(2) 行動特性:「自分が行った行動を認めようとせず,言い訳をする」(<対人的トラブル>),「他のことが気になって,保育者の話を最後まで聞けない」(<落ち着きのなさ>)などの「気になる」行動17項目について,「全くない」(1)~「よくある」(5)の5段階で評定してもらった。
結果と考察
1.情動発達得点:情動の領域ごとに,子どもの年齢の一元配置の分散分析を行った。その結果,Table1に示すようにすべての領域において,年齢間に5%水準で統計的有意差が認められた。とりわけ年齢間の差が大きかった領域として,<表現(表情)><表現(言葉)><過敏さ>では4歳児の得点が高く,<抑制><恥・誇り>では5,6歳児の得点が高かった。
2.項目別の特徴:情動発達に関する項目20項目中13項目で統計的有意差が認められた。とりわけ,<表現(表情)>の「怒っていることを表情で表現する」「悲しんでいることを表情で表現する」において5,6歳児に比べ4歳児の得点が高くなっていた。また,<抑制>の「怒っている気持ちを抑える」「悲しい気持ちを抑える」は4歳児に比べ5,6歳児で得点が高くなっていた。さらに<誇り・恥>のうち,「自分ができることに誇りをもっている」は4歳児に比べ5,6歳児で得点が高くなっていた。
以上の結果から,感情の表現は4歳児をピークに次第に減少すること,むしろ年齢が上がると感情の抑制が発達することが示唆された。しかし,抑制は6歳になっても十分には発達していないことが考えられた。
付 記
なお,本研究は科学研究費補助金基盤研究(B)「幼児期・児童期の情動発達アセスメント・スケールの開発と保育・教育への応用」(研究代表:本郷一夫)の助成を受けて行われた。
本研究は,幼児期から児童期における情動発達のアセスメント・スケールを開発することを目的とした研究の一部である。児童期の情動発達の特徴,典型発達児と「気になる」子どもの違いなどについては本郷他(2017,2018)で述べた。そこで,本報告では,幼児期の情動発達に関する調査の結果に基づき,幼児の情動発達の年齢的特徴を明らかにすることを目的とした。
方 法
1.調査対象: 保育所,認定こども園の担任に,クラスに在籍しているすべての子ども(障害児保育の対象児は除く)について評定を求めた。本報告では,回収された16園1068名(4歳児352名,5歳児381名,6歳児335名;男児526名,女児542名)のデータを分析した。
2.調査時期:2019年1月~2月。
3.調査内容:(1) 情動発達:「喜んでいることを表情で表現する」<表情による表現>,「悲しんでいることを言葉で表現する」<言葉による表現>,「怒っている気持ちを抑える」<抑制>,「自分ができることに誇りをもっている」<誇り・恥>,「友だちの悲しい気持ちがわかる」<理解>,「友だちのうれしい気持ちを自分のことに」<共感>,「ちょっとしたことで驚く」<過敏さ>などの情動に関する7領域20項目について,「全くない」(1)~「よくある」(5)の5段階で評定しもらった。
(2) 行動特性:「自分が行った行動を認めようとせず,言い訳をする」(<対人的トラブル>),「他のことが気になって,保育者の話を最後まで聞けない」(<落ち着きのなさ>)などの「気になる」行動17項目について,「全くない」(1)~「よくある」(5)の5段階で評定してもらった。
結果と考察
1.情動発達得点:情動の領域ごとに,子どもの年齢の一元配置の分散分析を行った。その結果,Table1に示すようにすべての領域において,年齢間に5%水準で統計的有意差が認められた。とりわけ年齢間の差が大きかった領域として,<表現(表情)><表現(言葉)><過敏さ>では4歳児の得点が高く,<抑制><恥・誇り>では5,6歳児の得点が高かった。
2.項目別の特徴:情動発達に関する項目20項目中13項目で統計的有意差が認められた。とりわけ,<表現(表情)>の「怒っていることを表情で表現する」「悲しんでいることを表情で表現する」において5,6歳児に比べ4歳児の得点が高くなっていた。また,<抑制>の「怒っている気持ちを抑える」「悲しい気持ちを抑える」は4歳児に比べ5,6歳児で得点が高くなっていた。さらに<誇り・恥>のうち,「自分ができることに誇りをもっている」は4歳児に比べ5,6歳児で得点が高くなっていた。
以上の結果から,感情の表現は4歳児をピークに次第に減少すること,むしろ年齢が上がると感情の抑制が発達することが示唆された。しかし,抑制は6歳になっても十分には発達していないことが考えられた。
付 記
なお,本研究は科学研究費補助金基盤研究(B)「幼児期・児童期の情動発達アセスメント・スケールの開発と保育・教育への応用」(研究代表:本郷一夫)の助成を受けて行われた。