日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-59)

2019年9月16日(月) 10:00 〜 12:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PG11] 体制化された知識からの検索過程における「とび」の問題

制限連想課題を用いて

皆川順1, 伴浩美2 (1.浦和大学, 2.長岡技術科学大学大学院)

キーワード:記憶検索、概念地図法、連想課題

 記憶検索において主観的体制化の現象が広く知られている。学校における種々の教科はそれぞれの単元ごとに個々の内容が深く関連しあっているが,そのような対象からの検索は単元あるいは関連する領域ごとにまとまって想起されるであろうことが予想できる。本研究においては大学の「発達心理学」単元を用いて,想起過程がどのような経過をたどるかについて具体的に検討したものである。
 さて,心理学においても概念は単元内容ごとにまとまって構成されている。そのため,この大学教科においても制限連想検査を実施すると,想起内容は基本的に単元ごとにまとまって出てくる,と考えられる。
ところが実際に制限連想実験を行う時,必ずしもそのようにならないことがある。筆者は一連の実験において,教科の種類を変えつつ実験を行ったが,音声データではかなりわかりにくい面もあった。
 そこで連想内容を記述させる方法を用いた。この時,連想された順に番号を付けさせ,またどこから連想したかという連想の基準語を明確化させるため,想起の基となる概念と線で結ばせた。
 今回の問題は,連想が同時に教えた関連のある概念群(例えば,記憶方略,記銘,保持,想起など)と結びつかず,全く異なった概念と結びついて想起される場合,いかなる現象が存在するかを,事後テスト問題の内容に即して検討したものである。
実験年月 2015年9月
実験参加者 X県内私立大学K学部学生 18名(ただし,そのうち8名は,指示を守らなかったり連想語彙数が合計9個以下であったので,これらの学生のデータを省いて,男子2名,女子9名データを用いた)。K学部学生にとっては選択教科
Table 1は各変数間の相関係数である。またTable 2は,同類概念以外の概念に結びつい
た語を「とび」と命名し,その数2以上・未満の場合の得点の比較である。
 U検定の結果,いずれも有意差が見出されなかった。そこで,小テストの問題を意味問題(答えを記述する)と関連問題(関連を書く)とに分けて検定したところ,U検定において関連問題においてのみ有意差が見出された(正規化検定E(U)=15,Z=2.30,p<.05)。即ち,関連を書く問題においては,「とび」が小さい方がより優れることが見出された。
考  察
 筆者いわゆる「とび」が生じる原因は,知識の体制化不足と考えられるから,意味問題において「とび」の差が検出されず関連問題において検出されたのは妥当な結果と考えられる。
参考文献
皆川順・伴浩美 導入的概念地図法による概念想起について―概念地図法との比較― 2017日本教育心理学会第59回総会発表論文