[PG14] 心理学は理系か文系か(2)
理系学生を対象とした学問イメージ調査
キーワード:学問イメージ尺度、理系・文系、心理学教育
公認心理師などの国家資格の制定に伴い,今後,心理学の学習者層はさらに幅広く多くなることが見込まれる。そこで本研究では,理系学生を対象とした心理学教育の参考とするため,文系学生を対象としている林(2013)の学問イメージ尺度を用いて,理系学生における心理学の学問イメージ測定を試みた。
方 法
調査参加者 H教育大学の理系専攻に所属する103名であった。平均年齢は20.47歳(SD 1.07)で男性68名,女性32名,性別無回答3名であった。
調査用紙 林(2013)の学問イメージ尺度を用いた。
学問イメージについて,「文系度」「とっつきやすさ」「痛快さ」「上品さ」「先進性」の5因子で構成され,24形容語対が含まれていた。
「以下に印刷されている形容語対を見て,「数学(または文学,心理学)」のイメージにふさわしいと思われる数字に○をつけてください。」という設問と,上述の24対の形容語を7段階評定の数直線で示し,1学問につきA4用紙1枚に印刷した。形容語対の提示順ならびに左右位置,学問の提示順に関するカウンターバランスに配慮して,質問紙は9種類用意した。
手続き 70名の調査参加者については,情報科学系の基礎講義の最中に,集団で調査を実施した。残りの約30名は個別に,数学や物理,化学など理系ゼミや研究室に所属している学生たちに協力を求めた。いずれも回答所用時間は約10分であった。
結 果
Figure 1には,理系学生が数学,文学,心理学に抱く学問イメージの平均下位尺度得点を示した。文系度に関して,数学,文学,心理学に関する参加者内一要因分散分析を行ったところ,統計的に有意な差が得られた(F(2,204)=215.38, p<.01)。LSD法による下位検定の結果,文系度は文学がもっとも高く,次いで心理学,最後に数学であった(MSe=.73, p<.05)。以下,同様の分析を行ったところ,とっつきやすさについて,統計的に有意な差が得られ(F(2,204)=6.43, p<.01),数学がもっとも高かった(MSe=.19, p<.05)。痛快さに関しては,統計的に有意な差は得られなかった(F(2,204)=1.29, ns)。上品さに関しては統計的に有意な差が得られ(F(2,204)=4.02, p<.05),数学がもっとも低かった(MSe=.31, p<.05)。先進性に関しても統計的に有意な差が得られ(F(2,204)=64.24, p<.01),数学と心理学が同程度で文学より高かった(MSe=.48, p<.05)。
考 察
本研究の結果,理系学生においても,文系学生同様(林, 2013),心理学は数学同様の先進性を持ち,文系度としては,文系と理系の中間的イメージであることが示された。ただし,文系学生には数学はとっつきにくく上品なイメージであったが(林, 2013),理系学生にはとっつきやすくさほど上品ではないイメージであり,心理学教育の際のアプローチ方法は文系学生と理系学生とで異なる切り口を用意したほうが適切である可能性が示唆された。理系学生には質的分析よりも量的統計を駆使した心理学教育のアプローチがなじみやすい可能性が高そうである。
主要引用文献
林美都子(2013) 心理学は文系か理系か:SD法を用いた学問イメージ調査による検討 人文論究 82, 23-35.
方 法
調査参加者 H教育大学の理系専攻に所属する103名であった。平均年齢は20.47歳(SD 1.07)で男性68名,女性32名,性別無回答3名であった。
調査用紙 林(2013)の学問イメージ尺度を用いた。
学問イメージについて,「文系度」「とっつきやすさ」「痛快さ」「上品さ」「先進性」の5因子で構成され,24形容語対が含まれていた。
「以下に印刷されている形容語対を見て,「数学(または文学,心理学)」のイメージにふさわしいと思われる数字に○をつけてください。」という設問と,上述の24対の形容語を7段階評定の数直線で示し,1学問につきA4用紙1枚に印刷した。形容語対の提示順ならびに左右位置,学問の提示順に関するカウンターバランスに配慮して,質問紙は9種類用意した。
手続き 70名の調査参加者については,情報科学系の基礎講義の最中に,集団で調査を実施した。残りの約30名は個別に,数学や物理,化学など理系ゼミや研究室に所属している学生たちに協力を求めた。いずれも回答所用時間は約10分であった。
結 果
Figure 1には,理系学生が数学,文学,心理学に抱く学問イメージの平均下位尺度得点を示した。文系度に関して,数学,文学,心理学に関する参加者内一要因分散分析を行ったところ,統計的に有意な差が得られた(F(2,204)=215.38, p<.01)。LSD法による下位検定の結果,文系度は文学がもっとも高く,次いで心理学,最後に数学であった(MSe=.73, p<.05)。以下,同様の分析を行ったところ,とっつきやすさについて,統計的に有意な差が得られ(F(2,204)=6.43, p<.01),数学がもっとも高かった(MSe=.19, p<.05)。痛快さに関しては,統計的に有意な差は得られなかった(F(2,204)=1.29, ns)。上品さに関しては統計的に有意な差が得られ(F(2,204)=4.02, p<.05),数学がもっとも低かった(MSe=.31, p<.05)。先進性に関しても統計的に有意な差が得られ(F(2,204)=64.24, p<.01),数学と心理学が同程度で文学より高かった(MSe=.48, p<.05)。
考 察
本研究の結果,理系学生においても,文系学生同様(林, 2013),心理学は数学同様の先進性を持ち,文系度としては,文系と理系の中間的イメージであることが示された。ただし,文系学生には数学はとっつきにくく上品なイメージであったが(林, 2013),理系学生にはとっつきやすくさほど上品ではないイメージであり,心理学教育の際のアプローチ方法は文系学生と理系学生とで異なる切り口を用意したほうが適切である可能性が示唆された。理系学生には質的分析よりも量的統計を駆使した心理学教育のアプローチがなじみやすい可能性が高そうである。
主要引用文献
林美都子(2013) 心理学は文系か理系か:SD法を用いた学問イメージ調査による検討 人文論究 82, 23-35.