[PG38] 大学生の自立性と生き方志向との関連について
中日国際比較
キーワード:大学生、自立性、生き方志向
問題と目的
自分の現在の状態をどのように捉えているか,またどの程度自立しているかということと,自分の将来についてどのような生き方をしたいと考えているかは,これから社会人となっていく大学生にとっては重要な問題である。神谷(1997)は,青年期における心理社会的発達の中心的課題としての自立概念が変化してきていることを指摘している。また,経済的発展により,若者の生活が豊かになり,自分が求める生活スタイルを求める「生き方志向」を追求しようという欲求が高まりを見せてきたとも言われている(三川,2002)。この「生き方志向」は「ありのままの自分を受け入れる」自己受容(沢崎,1984)とも関連があると考えられる。
本研究は,大学生の自立性という側面に着目し,自己受容が生き方志向にどのような関係があるのかについて検討することを目的として行われた。
方 法
研究対象は日本の在学の大学生であった。今回の調査は質問紙を利用して,質問項目を作成した。そして,授業中に配布して,その場で記入してもらい,回収できた数は55(男性30,女性25),平均年齢は20歳であった。質問紙は,以下の3つの尺度によって構成された。自立性尺度(42項目)は高坂・戸田(2006)を参考にして,新たな質問項目を作成した。生き方志向尺度(50項目)は三川(2002)を参考にして,新たな質問項目を作成した。自己受容尺度(18項目)は,櫻井(2013)のものを使用した。
結 果
自立性尺度の因子分析(主因子法,バリマックス法)を行ったところ,因子負荷量が低い24項目を削除して,3因子が抽出された。第一因子を「価値判断・実行」(α=.850),第二因子を「親への依存」(α=.794),第三因子を「自己統制・客観」(α=.786)と命名した。
生き方志向尺度の因子分析(主因子法,バリマックス法)を行ったところ,因子負荷量が低い28項目を削除して,5因子が抽出された。第一因子を「学習観」(α=.874),第二因子を「ライフスタイル」(α=.823),第三因子を「結婚観」(α=.820),第四因子を「就職観」(α=.775),第五因子を「他者援助」(α=.699)と命名した。
自己受容尺度の因子分析(主因子法,バリマックス法)を行ったところ,2因子が抽出された。第一因子を「全体としての自己の受容」(α=.883),第二因子を「望ましい自己の受容」(α=.844)と命名した。
自立性尺度と生き方志向尺度の下位因子間の相関を求めると,「価値判断・実行」と「就職観」(r=-.521,p<.01)との間には弱い負の相関が認められた。「親への依存」と「結婚観」(r=.376,p<.01)との間には正の相関が認められた。
考 察
分析の結果,日本の大学生の「価値判断・実行」が高いほど,「就職観」(就職する意識)が低いという結果が得られたが,これは,古市裕一の研究結果とは相反するものとなった。「親への依存」が高いほど「結婚観」(結婚を望む意識)が高いという結果が得られたが,これは,竹原・三砂(2006)の研究結果とは相反するものとなった。この点につぃて,生き方の多様性がますます尊重されるようになってきた今日,結婚,就職などのあり方も大きく変化してきているため,ここで今一度,結婚,就職というものの意味から問い直すことも意味のあることであろう。
今回の調査をもとにして,質問項目をさらに厳選したうえで新たに作成し調査対象を増やして日本と中国の大学生の国際比較研究を行いたい。
自分の現在の状態をどのように捉えているか,またどの程度自立しているかということと,自分の将来についてどのような生き方をしたいと考えているかは,これから社会人となっていく大学生にとっては重要な問題である。神谷(1997)は,青年期における心理社会的発達の中心的課題としての自立概念が変化してきていることを指摘している。また,経済的発展により,若者の生活が豊かになり,自分が求める生活スタイルを求める「生き方志向」を追求しようという欲求が高まりを見せてきたとも言われている(三川,2002)。この「生き方志向」は「ありのままの自分を受け入れる」自己受容(沢崎,1984)とも関連があると考えられる。
本研究は,大学生の自立性という側面に着目し,自己受容が生き方志向にどのような関係があるのかについて検討することを目的として行われた。
方 法
研究対象は日本の在学の大学生であった。今回の調査は質問紙を利用して,質問項目を作成した。そして,授業中に配布して,その場で記入してもらい,回収できた数は55(男性30,女性25),平均年齢は20歳であった。質問紙は,以下の3つの尺度によって構成された。自立性尺度(42項目)は高坂・戸田(2006)を参考にして,新たな質問項目を作成した。生き方志向尺度(50項目)は三川(2002)を参考にして,新たな質問項目を作成した。自己受容尺度(18項目)は,櫻井(2013)のものを使用した。
結 果
自立性尺度の因子分析(主因子法,バリマックス法)を行ったところ,因子負荷量が低い24項目を削除して,3因子が抽出された。第一因子を「価値判断・実行」(α=.850),第二因子を「親への依存」(α=.794),第三因子を「自己統制・客観」(α=.786)と命名した。
生き方志向尺度の因子分析(主因子法,バリマックス法)を行ったところ,因子負荷量が低い28項目を削除して,5因子が抽出された。第一因子を「学習観」(α=.874),第二因子を「ライフスタイル」(α=.823),第三因子を「結婚観」(α=.820),第四因子を「就職観」(α=.775),第五因子を「他者援助」(α=.699)と命名した。
自己受容尺度の因子分析(主因子法,バリマックス法)を行ったところ,2因子が抽出された。第一因子を「全体としての自己の受容」(α=.883),第二因子を「望ましい自己の受容」(α=.844)と命名した。
自立性尺度と生き方志向尺度の下位因子間の相関を求めると,「価値判断・実行」と「就職観」(r=-.521,p<.01)との間には弱い負の相関が認められた。「親への依存」と「結婚観」(r=.376,p<.01)との間には正の相関が認められた。
考 察
分析の結果,日本の大学生の「価値判断・実行」が高いほど,「就職観」(就職する意識)が低いという結果が得られたが,これは,古市裕一の研究結果とは相反するものとなった。「親への依存」が高いほど「結婚観」(結婚を望む意識)が高いという結果が得られたが,これは,竹原・三砂(2006)の研究結果とは相反するものとなった。この点につぃて,生き方の多様性がますます尊重されるようになってきた今日,結婚,就職などのあり方も大きく変化してきているため,ここで今一度,結婚,就職というものの意味から問い直すことも意味のあることであろう。
今回の調査をもとにして,質問項目をさらに厳選したうえで新たに作成し調査対象を増やして日本と中国の大学生の国際比較研究を行いたい。