日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-65)

2019年9月16日(月) 13:00 〜 15:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:00~14:00
偶数番号14:00~15:00

[PH35] ボランティア団体員のリーダーシップの認知と満足感,コミットメントの関連の検討

遠藤勇汰1, 河村茂雄2 (1.早稲田大学大学院, 2.早稲田大学)

キーワード:ボランティア、リーダーシップ

問題と目的
 近年,我が国では福祉,環境保護,国際協力,災害・復興支援,スポーツや学術など多くの分野でボランティア活動が実施されており(総務省,2017),今後もボランティア活動が果たす役割が期待されている(三谷,2016)。ボランティア活動を行うのは個人で行う人よりも団体で行う人の方が多い(全国ボランティア・市民活動センター, 2015)。ボランティア団体の運営者には,成員の自主性を保障することと成員を団体内にとどめるための取り組みを両立させる必要性があることが指摘されている(田尾,1999)ことから,ボランティア団体の運営が容易ではないと考えられる。そこで,ボランティア活動が継続していくために団体を持続させたいと考えている団体の運営者にとっては,成員の満足感や団体へのコミットメントを向上させるリーダーシップについて検討することは有意義であると考えられる。しかし,我が国においてボランティア団体を対象としたリーダーシップの影響を実証的に明らかにする研究は著者の知る限り行われていない。そこで,本研究ではボランティア団体の成員のリーダーシップの認知と満足感,コミットメントとの関連を検討する。
方  法
調査時期と調査対象 2018年7月下旬から9月上旬にボランティア団体に所属している大学生・大学院生202名に質問紙調査を実施した。うち,有効回答者は167名(男性59名,女性108名)であった。
調査内容 PM評定尺度(三隅・関・篠原,1974),日本語版VSI(Volunteer Satisfaction Index)(吉田・徳田,2012),サークル・コミットメント尺度(橋本・唐沢・磯崎,2010)
倫理的配慮 回答者が特定されないこと,回答は任意であること,回答中に気分が悪くなった場合には回答を中断できることの説明を行った。
結  果
 因子得点を算出し,リーダーシップの認知が満足感,コミットメントに直接影響を与えるパスと満足感がコミットメントに影響を与えるパスを仮定したモデルを想定し,共分散構造分析を行った。5%水準で有意とならないパスがなくなるまでモデルの修正を繰り返した。結果と適合度をFigure1に示す。モデルの適合度は良いと判断した。
考  察
 M機能の認知が満足感やコミットメントに正の影響を与えることが明らかになった。一方で,P機能の認知はコミットメントに対し正の影響を与えている自己有用感に負の影響を与えることが明らかになった。これらのことから,ボランティア団体においては団体の目標達成志向の管理的なリーダーシップよりも,団体内の人間関係に気を配り,成員とコミュニケーションをとり,成員を認めるリーダーシップの方が成員の積極的なコミットメントを促すことが示唆された。